「ふわぁ、よく寝た。今何時だろう?」
私がそう言って目を開くと、そこは
――――豪邸になっていた。
「混乱する主人公、そこへ現れたのは白馬に乗った王子様!そしてこう言うの『麗しき姫君。あなたは選ばれた人なのです。』そしてそこから2人の冒険ファンタジーが始まるの!
っていう物語を考えたのだけれど、どう思う?」
至って真剣な顔でかなりアホなことを聞いてくるお嬢様。
そもそも今は勉強の時間である。お嬢様はいい加減集中力が足りないとつくづく思う。
俺はこの思いをそのまま伝えることにした。
「お嬢様、はっきり言ってアホかと。しかもそこは豪邸なのでしょう?なぜ王子は白馬に乗ってくるのですか?女性の部屋に断りもなく入ってくるなど、全くもって」
「ああもう分かったわ!ちょっと言ってみただけじゃない。」
頬を膨らませて見せるお嬢様。
「お嬢様、口ではなく手を動かして下さい。」
>>2の1_5行目はかなりいいと思う
期待値高い
「もう、担任の先生みたいなこと言わなくてもいいじゃない。」
俺は、胸に氷を当てられたような感覚に陥った。
まさかお嬢様は気づいて・・・?いやでもまさかそんなことはない、はずだ。
さっきの物語もいつもの妄想にすぎなくて、あの一言にもたいした意味はないはずだ。そうに決まってる。
俺はこの馬鹿げた考えを振り払う。
私が気づいていないとでも思っているのかしら。
ずっと、ヒントは出しているのに。
実は私がさっき言った話、あながち間違ってはいないのだ。
この世界は私の故郷ではない。
いわゆる異世界召喚に遭ったのだ。
朝起きると全く知らない場所にいて、戸惑っているところに執事がやってきて記憶を消された。代わりに架空の人格が植え付けられた。
いつ思い出したかというと、夕食に私の大好物、ロールキャベツが出たときだ。
“これじゃない"そう思ったのだ。
そこからは一瞬だった。
最初は疑いもした。
決定打となったのは執事の言葉だった。
執事が誰かと話しているのを聞いてしまったのだ。
『はい、彼女のことは順調です。このまま行けば、そちらに出向くのもそう遠くないかと。』
執事は私をどこかに出向かせる気なのだ。それは恐らく危険なこと。
“私”はそのために召喚されたのだ。