僕は彼女と、2回目の「はじめまして」をした。
_あ、日野さん
_話しかけてみようかな
_昨日委員会で話したし、もっと話したい
「日野さん!」
「…?」
首を傾げ、日野さんは丸い目で僕を見る。
「日野さん?あ、ほら委員会一緒の」
「ごめんなさい。覚えていません。」
あまりにも早口で、あまりにもはっきりと言い切って、僕は何も言えなかった。
「あ、いや…違うんです。覚えてないっていうのは…」
次はもごもごとしている。今は困惑する時間ができた。
やがてメモ帳を取り出し、あぁ!と何かを思い出したようににこにこと笑う。
「これです!これで_これなので…覚えてないんです…」
そこには大きく「前向性健忘」と書かれていた。
日野さんはゆっくりと語り出した。
_私、記憶がリセットされているんです。
いつから?
ずっと前から。
ある出来事があってからの記憶がまるでないんです。
それが前向性健忘。
ある出来事?
…それは秘密。
親友の恵美にも言ってないんだから。
親友なのかもわかんないけど、よく一緒に行動してるから親友なのかもね。
…とにかく覚えてない。
だから、ごめん。