友達が居ない。
親に見捨てられている。
そんな少女が、異世界に転生した物語。
―――寝起きが悪い。
ピピピピ、と鳴るスマホのアラームを止め、ぼんやりといつもの事を考える。
寝起きが悪いのは日常茶飯事なので、気にする事は無い。
何故だろう、と気に留めたが、食事に遅れてしまうので考えるのを止めて食堂へと急いだ。
「何だこのメニューは!!」
「すっすみません!今すぐ新しい料理を――」
「もういい!会社に遅れてしまう!」
今日は一段と荒れているようだった。
料理担当のメイドさんは、柏木さんと青山さんだったはずだ。
激怒するお父様を前に、何度も頭を下げている。
「…で、南は何をしているんだ!早く飯を食べて学校に行け!」
急に、私にお父様の刃の先が向いた。
「はい…すみませんでした」
こういう時に大人しくしなければ、余計に怒られてしまう。
だから、大人しくしてよう?
私の本能がそう言ってばかりで、口を利かなかった。