「シュガーリア、永遠のおねがいです。あなたはたたかいに行かないでください……。あなたもいっしょに悪い人たちをやっつけないと私達亜人は人間さんたちと暮らせないことは小さな頃から知っています。でも、あなたを失いたくないんです……聖剣なんか持たないでください。ワガママで……ごめんなさいっ」
突然だが僕は今、四六時中観光客でワイワイガヤガヤ賑わう秋葉原にしては人の少なそうな通りで、勇気を出して輝く聖剣を抜き襲いかかってきた騎士を斬りつけようとしている。
可愛らしい声が必死に制止するが。
その声の主こそシュガーリアさんだ。
おっと、シュガーリアさんについてちょっと説明がいるね……。
シュガーリアさんは訳あって知り合ったうさ耳亜人種族(本物)の女の子だ。白いふわふわの兎の耳に守ってあげたくなるお姫様のような顔立ちはピンクのドレスとよく似合っている。
彼女によれば人間が今暮らしている世界は偽物で、宇宙や惑星といった科学的に観測できる世界構造は本当は実在しないらしい。
そして人間を偽物の世界に悪意を持って閉じ込めた敵はなんと"騎士"を送り込み悪巧みをしているのだ……!
そんな騎士共をコテンパンにやっつける使命をもった戦士こそシュガーリアさんだ。
シュガーリアさんの姿は見てると思わず赤くなってしまうし、シュガーリアさんの実力はたくさんの敵を倒せるくらい高い。
そして優しい。涙声で僕を失いたくないって叫んでくれてる。
だから、決めた。
シュガーリアさんと同じ戦場に立つ覚悟を。
「シュガーリアさん、あなたを心配させるお詫びです。絶対に死にませんから……あなたのことを守らせてください。」
僕はシュガーリアさんの制止を振切ると聖剣を抜いた!
襲い来る敵は装甲ごと切り裂かれ倒れた。
そんな僕を涙目で見つめるシュガーリアさんにはこう言っておこう
「シュガーリアさん、僕はね、この「地球」が本物の僕たち人間の暮らす世界じゃないって知ることができた"あなたに出会えた日"をこれまで生きてきた十九年間で一番幸せな日だったなって感じているんだ。だから僕からお願いがあります。あなたの笑顔をあなたとの毎日を僕に守らせてほしい。たまには僕の我儘(わがまま)も聞いてくれますか?」
僕は吐き気がするくらい温かな日差しに「なんですかあなたは。みんな気持ちいいって言ってるけど僕みたいな憂鬱な人にとってはあなたの気持ちよさは害悪でしかありません」と心の中で文句を言うと、本屋さんの自動ドアを通り、忍者のような足取りで、少年漫画のコーナーに向かう。
別に万引きをしたいからこんなことをしているんじゃない。
むしろしたくない。ただ単に本を買う現場を見られたくないのだ。小学5年生ながらも戦争や虐待、野蛮な暴力が支配しているようなこのご時世に物語まで幼稚で暴力的になっているという現実に僕は心底呆れている。
どうしてみんな女の子の様にメルヘンでキラキラした世界を求めないんだ。こんな本を買うところなんか誰にも見られたくないっ!僕はそんな思いを胸に秘めながらもあくまで自然に店員さんに1000円札を差し出すと600円と少しのお釣りと少年漫画という名の呪われた書物を手に入れた。
どうせ、この本がなければ僕はいないのと同じなのだから
久しぶりにあげよう
4:雪りんご◆:2020/04/23(木) 22:34 >>2
何を隠そう……僕はいじめられているのだ