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1:匿名 hoge:2020/09/25(金) 22:07

内容はない。思い付き駄文。妄想の延長線。補助線。閲覧禁止。乱入禁止。hoge進行。長文が目立たない&迷惑ととられにくいという考えより、小説板にたてています。注意・ご指摘のある場合のみレスを許可します。

2:匿名 hoge:2020/09/25(金) 22:41

彼は、小さく、美しく、儚く、艶やかで、それでいて少年であった。150と6センチ、40少しの身体。小さな顔には猫目の三白眼、長い睫毛、ツンと上向く鼻、桜色の唇、全てが綺麗におさまっていた。元来、癖毛のその髪をストレートにおろし、前髪を切り揃え、後ろは肩程のおかっぱ。素っ気ないその髪型が、細く柔らかい髪にはよく合っている。透き通るように白い肌は日焼けには弱かった。細く長い指は器用だった。いくらか小さいその耳には穴がいくつかあいていた。フランス生まれの彼は幼い頃からピアスをつけていた。完璧でどこか日本人形を思わせる風体に対して、実際彼は拍子抜けするほど明るかった。口を開いて大きく笑うことこそなかったが、小さく満足げな笑みをよく浮かべていた。帰国子女で敬語が苦手だった。それでも可愛がられていたのは、彼がとても純粋で真っ白であるからだろう。若干、皮肉を言うところもあったが、それは彼の頭の回転の良さを表していて、トークがうまかった。只々、先輩のことを尊敬し、兄のように慕うその姿をみると甘やかしたくなってしまう。彼は、人よりいくらか小さく、いくらか身体が弱く、いくらか耳が聴こえづらく、いくらか目が悪かった。しかし、誰よりも美しく輝くその姿はまるで桜のようであった。

3:匿名 hoge:2020/09/25(金) 23:04

誰もその幼い少年に期待していなかった。その姿をみた瞬間、満足だった。また、別の者は顔だけだと思った。また、別の者は話題性で使われた、気の毒にと思った。しかし彼は、裏切った。勝手な憶測を、勝手な上限、勝手な同情を、全て裏切った。それはもう潔く。やはり彼は、桜のようだと思った。音もなく息をすい、次に音が発されたときには会場の空気が変わっていた。否、変わった、などというものではなかった。そこはもう彼の支配する世界であった。流れてくるのは彼の音だけ。耳の悪い彼が、選択したアカペラという手段。あぁ、神はなんて無慈悲なのでしょう。それはその美貌だけでは飽き足らず、美声までをも手にした彼を妬む気持ちからのものなのか……。はたまた、ここまで美しい彼が他の人よりもハンデを背負っていることを惜しむ気持ちからのものなのか……。気持ちいいまでに潔く、全ての人を裏切った彼は、どこか寂しげで哀しげで。夏の桜を思い出す。

4:匿名 hoge:2020/09/26(土) 15:11

遅かった。彼の携帯がなり、彼が出て行ったのは、もう15分も前だった。丁寧な彼のこと。長くなりそうならうまく切り上げるか、はたまた一言遅くなる旨を伝えに戻ってくるはずだ。だがしかし、彼もまだ中学生。久しぶりの家族からの電話だったなら、我を忘れて楽しんでいるのかもしれない。また、同好会のメンバーからでも然り。そこに水をさすのはいかがなものか。そもそも電話がかかってきた時点で彼が、周りに気をつかい、後でかけ直すので大丈夫です、と切ろうとしたのを引き止めたのだった。日本からなら時差もあるためなかなかゆっくり電話をする機会もないだろうから。彼ならば、誰かの姿を目にすると我に返り、電話を切ってしまいかねない。そのうえ謝罪の一言も述べるだろう。そんなことを考えている内に時間は淡々と過ぎていく。打ち入りという名はついているものの、大変わらない食事会も終盤に差し掛かろうとしている。こちら側としては、彼には息抜きもしっかりとしてほしいので、このまま食事会を終えても構わない。しかし、彼は食事会、それも打ち入りの締めに座長が出られなかったとなれば、ひどく自分を責めるだろう。申し訳なく思いながらも、少し様子をみに行くことにした。

5:匿名 hoge:2020/09/26(土) 15:30

せめてもの配慮として、彼と特に仲の良い、兄的存在のりょーたが様子をみに行くことになった。いつもの場より何倍も重いフランスの扉を開ける。恐らく、防音のしっかりとしたこの部屋からそう遠くは離れていないはず。思ったとおり、彼は、扉を出てすぐの廊下にいた。が、その様子はいつもの彼とは違っていた。携帯を耳にあて、誰かと電話をしていることに変わりはない。しかし、先程まで思い描いていた彼の様子とは似ても似つかなかった。壁に身体を預けるようにもたれかかり、今にも崩れ落ちそうだった。項垂れているせいで表情までは分からない。美しく毅然といている彼とはまるで別人のようだった。彼が、弱みをみせたことは今まで一度だってない。また、電話をしているはずなのに彼は一言も声を発さない。おかしい、と気づくまでに時間は必要なかった。それでも、急いで駆け寄ろうとした瞬間―――、間に合わなかった。彼は、崩れ落ちた。立っていることすら出来なくなり、その場で蹲る。が、携帯は耳に押し当てたまま。一言も話さなかった彼から、今は変な呼吸音が聴こえてくる。聞いたことはあった。彼が、昔喘息もちで、身体が弱く、入退院を繰り返していたことを。今、自分は身ひとつだ。何も出来ない。急いで部屋に戻り、声をあげる。「過呼吸だ!!紙袋!!あとちかの鞄は?!」焦っていた。咄嗟に出した指示はめちゃくちゃだった。主語もなければ述語もない。それでも伝わった。適当な紙袋をもったけんけんが急いで廊下に飛び出すのと、かとうが彼の鞄をもって飛び出すのとは、ほぼ同時だった。

6:匿名 hoge:2020/09/26(土) 15:46

「っちか!」その場で未だ蹲る彼の小さな背に手をあて擦る。項垂れていた顔をあげ、うまく息の吸えていない小さな口に紙袋をあてる。が、良くなるどころか呼吸はどんどん荒くなる。ついには、もうすっかり治ったと思われていた喘息のような症状まで出始めた。心配して皆が彼を取り囲む中、握りしめられた携帯に目敏く気づいたのは頭のキレるかとうだった。そっと、もう力の入っていない手から携帯を抜き取り、耳にあてる。流れてくるのは、知っている声ではなかった。彼の母にも兄にも会ったことはあるうえに、よく世話になっている。間違えるはずがない。かといって、面識のない同好会のメンバーかと言われればそうではない気がする。耳から携帯を離し画面をみるとそこには「母さん」の文字。しかし、そこから流れてくるのは男の声。気持ちの悪い反吐が出そうな、そんな声。あの少し抜けているけれど、とても優しい彼の母とは違う。「おい、何してんだ。もうこっちは終わったよ♪帰ってくるのが楽しみだね。きいてるのかな?」何の話をしているのか分からない。だが、遠くから赤ん坊の泣き声が聞こえる気がする。只事ではない。何かが起こっている。皆から少し離れ、携帯の通話録音ボタンをタップする。そして、再び耳にあてる。彼のことは大丈夫。皆がついている。鞄の中には薬も入っているし、医務室の設備は非常に良いはず。だから、流れてくる声に集中した。「あぁ、なんだ。嬉しさのあまり泣いてるの?鬱陶しい奴らが消えて。それともあれかな?責めてるんだ。自分が悪いんだって。そうだよ。ぜーんぶ君が悪い。そうだよね。分かってるでしょ?かしこ〜い君なら。あ、そうだ。一人残しといたよ。可哀想に。君のせいでこの子は一生苦しみながら生きるよ?優しい君は自分も後を追う?それか、この子のことも消して全てなかったことにする?」

7:匿名 hoge:2020/09/26(土) 15:59

胸騒ぎがする。ここはフランス。急いで彼の家の近くの警察署に電話する。彼の携帯からは相変わらず気持ちの悪い声。ミュートにしたためこちらの声は聞こえていないにも関わらず、ひとりで愉しそうに喋っている。少しして電話が繋がった。急いで彼の家に向かうように伝える。詳しいことは分からないし、証拠も何もなかったが、その切羽詰まった声からか直ぐに動いてくれた。彼の携帯からは未だ声が聞こえてくる。「あれれ〜?そんなに嬉しかった?ショックだった?それとももう死んじゃった?そっか〜残念だなぁ♪まだまだこれからだったのにね。可哀想に。全部君のせいだよ。じゃあばいばい。良い夢みてね♪もう少し愉しめると思ったのになぁ、残念残念♪ ブチッ……ツー――ツー――……」ついに電話が切れた。呆然としつつ、彼のもとへ戻る。まだおさまらないらしく。苦しそうな呼吸音を繰り返している。喘息の薬も投与したらしいが、効いていないようだった。仕方がない。あまり動かない方が良いだろうがここでは何も出来ない。海外に行くにあたり、強めの薬をいくつか持ってきて、医務室に置いてあるはずだった。「医務室行くぞ……」小さな彼を抱き上げる。紙袋は意味を成しておらず、彼の鞄だけをりょーたがもって、部長と3人で彼を連れて行く。他の人たちは誰からともなく部屋へ引き返していく。大勢いても何もできず、かえって症状の悪化につながる可能性まであるのだと思ったらしかった。

8:匿名 hoge:2020/09/26(土) 16:14

あまり振動を与えないように急ぐ。先にりょーたが走っていき、医務室の準備は出来ているはず。思ったとおり医務室につく頃にはベッドと薬が用意されていた。薬は酸素マスクのような形で投与するタイプらしい。医務室の先生が手際良くつけてくれる。もう既に意識が朦朧としている彼はされるがままになっている。しばらく、苦しそうな呼吸を繰り返していた彼だったが、少しすると落ち着いてきた様だった。そのまま眠ってしまったらしく、静かな寝息が聴こえる。未だ汗の浮かぶ額を拭いてやり、布団をかける。パニックに陥ったまま寝入ったので、目覚めたときにもパニックを起こす可能性が高いらしい。りょーたがそこに残りふたりは医務室をあとにした。

9:匿名 hoge:2020/09/26(土) 16:23

うまく呼吸が出来ず、パニックに陥ってしまい、体力を激しく消耗したらしい。全く目を覚まさなかった。穏やかに眠る彼の顔をみて、考える。あんなに苦しそうだったのに、その美しい顔には涙の筋がひとつもなかった。汗こそ沢山かいていたものの涙は流していなかった。何があったのか分からない。電話をしていて、たまたま昔の症状がぶり返したのか。海外に来て、長旅で疲れたから、と言われれば可能性はあるかもしれない。しかし、彼は幼い頃からその症状と付き合ってきたはず。これほど悪化するまで助けを呼ばない、対応しないのはおかしくないか。では電話相手に何か言われ、パニックに陥って、過呼吸、喘息を引き起こしたのか。考えにくい。彼は電話が、かかってきたとき自ら切ろうとしたが、そう申すとき、悲し気な顔をしていた気がする。思うに、母や兄弟からだったのではなかろうか。出たい気持ちは山々なのに出て良い状況ではなかったから、切ろうとした。それを知って、皆は電話を切ることをとめたのだと思う。だとしたら理由がない。謎ばかりが浮かんでくる。彼が目覚めたとき、どうすれば良い?彼は何か話してくれるのか?……かとうさんは何も知らないのか?

10:匿名 hoge:2020/09/26(土) 16:39

野生の勘が良いあいつなら疑っているだろうな。かとうはそう思っていた。年齢が近く一番気を遣わなくて良いだろう、と適当な理由をつけてりょーたを残してきた。自分は警察からの連絡があるかもしれないし、情報収集をしなければならない。部屋に残る皆のことは部長に任せて、ニュースを探る。もし何かあったなら……。電話してから30分ほどたった。折り返されるならそろそろ。現場について状況把握が終わるのはもう少しだろう。まだ、ニュースにそれらしきことはあがっていなかった。と、丁度そのタイミングで電話がきた。番号を確認するとやはり、折り返しだ。深呼吸をして、部屋から出る。りょーたからの電話だと思ったのか声をかけてくる人はいなかった。「……はい。」「こちら✕✕警察署の〇〇です。先程通報を受けて伺った家ですが、6人の遺体が発見されました。また、犯人と思われる男ひとり、1歳ほどとみられる子供は無事なようです。現在詳しいことは調査中です。少し事情聴取させて頂きたいのですが✕✕警察署まで来ていただくことは可能ですか?」思わず声をあげそうになったが堪える。言われたことを理解できない。入ってきた言葉は全てただの記号のようにぐるぐると頭の中をまわり続ける。かろうじて質問には応えることができた。「いえ……。今、海外にいまして……。通報するきっかけとなった証拠の音声もあるので聴取には応えたいのですが……。あとその場にいた者が他にも数名いるので……。」「分かりました。では電話による聴取と、証拠が音声データであるのならば送ってくださるようお願いします。詳しいことが分かり次第、お伝えさせていただきます。今から聴取させていただいてもよろしいですか?」「すみません。少しお待ち下さい。10分ほどしましたらかけ直します。データも準備しておきますね。」「分かりました。では準備でき次第よろしくお願いします。」

11:匿名 hoge:2020/09/26(土) 17:02

ニュースにはすぐ流れた。速報です、と繰り返し伝える無機質な声を一度とめ、医務室へと向かう。りょーたを呼び、かわりに部長についてもらう。りょーたはすぐに察してくれたようで黙ってついてきてくれた。誰もいない談話室でさっきのニュースを流す。りょーたは不思議そうな顔をして、画面を見ていたが、流れてくる被害者の情報と、その名前をきいた途端、顔つきがかわり、それでも最後まで静かに見続けた。「お伝えします。東京都✕✕区で刃物と銃をもった男によって、男3人と女3人が死亡、男児1人が重症を負う事件があったようです。詳しくお伝えします。被害にあったのは東京都✕✕区の成瀬さん一家。成瀬太郎さん、妻の成瀬華さんと4人の子供が犠牲となったようです。何者かの通報により、警察が駆けつけた頃には既に殺されており、犯人とみられる男がいた、ということです。現在男の身柄を確保、詳しい状況を調べています。」りょーたは何も言わず、こちらをみる。「……。ちかが発作をおこしたとき、携帯を持ったままだということに気付いた。りょーたやけんたが処置してくれているあいだに携帯をとり、まだ電話が繋がっていることを不思議に思った。画面には『母さん』と記されていたのに聴こえてくるのは知らない男の声で。もう消した、一人だけ残した、お前のせいだ、永遠に繰り返してて……。只事じゃないと思って、録音し始めた。子供の泣き声も聴こえるし、ちかの家の近くの警察署に連絡した。すぐに動いてくれて、調べてくれたらしい……。」りょーたは黙ってきいていた。話し終えると漸く口を開いた。「……じゃ、今から事情聴取か。俺もだよな。早く終わらせよう。」分かっているのか分かっていないのか、いつもと大して変わらなかった。


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