「天使の館」って知ってる?
不思議なルートでしか行き着くことのできない奇妙な場所。
そこには天使がいて・・・
願いを叶えてくてるんだって。
正直、コーヒーは苦手だ。
苦味や辛味に弱い幼少期に無理矢理飲ませられたことがある。
眉間にしわを寄せ苦しむ姿を見て両親は笑っていた。
けれど、わざわざ淹れてもらったコーヒーだ。飲まないわけにはいかない。
真っ白なカップを手に取り、真っ黒いコーヒーを口に流し込んだ。
途端、強烈な眠気が襲いかかり_
「そーいえばコーヒーって眠れなくなるらしいですよー!うちのと真逆ですねー!」
少女が眠りに落ちるとローザが話しかけてきた。
「まあうちのコーヒーは味だけだしな。そんなことより…」
少女の幼顔を引き立たせている小さな唇から煙が出てきた。
特別な魔術を使ったコーヒーには飲んだ者の記憶を煙として具現化する力がある。
白かった煙はだんだんとドス黒い色に変化していく。飲んだ者の心の闇と連動しているのだ。
煙の中に見えたものは…病院内で涙を流す15歳の少女とタバコをふかし怒られている20歳の青年。
少女の胸には小さな赤子が抱かれている。
危うく「ヴァニラ」と名付けられかけたが、少女の母親が怒り「凪」という名前を付けた。
煙が増えていく。
17歳になった少女に熱湯をかけられ絶叫する2歳になった凪。
皮膚が赤く染まりだしたところで少女は熱湯をかけるのをやめ、冷水を凪の体にかけだした。
最後に優しく頭を撫で、少女は凪を布団に入れ、眠りにつくのを確認し家を出た。
その間、帰ってきた22歳の青年に“触られていた”。
青年にも少女にも隠し事があった。
自分の娘に欲求があること。身体を売ってお金を儲けていること。
そんな隠し事を持つ夫婦と子が、ひとつ屋根の下で3人が生活していた。
煙が増えていく。
生傷が絶えない7歳の凪を見た担任の教師が凪に傷について聞いてきた。
幼稚園にも保育園にも通わなかったため、大人にそういった声をかけられるのは初めてだった。
だからこそ、自分が受けているものを虐待と認知していなかった。
凪は発展途上な言語能力で両親から受ける暴力を説明した。
両親に会いにいくなり児童相談所に行くなりするのが理想の対応だが、担任は聞いただけだった。
理由が知りたかっただけなのだろうか。凪はまだ虐待がわからない。
煙が増えていく。
13歳になった凪に再び声がかかる。
担任の教師が凪の傷を心配したのだ。
淡々と暴力を話す凪だが…今度の担任は瞬く間に他の教師に相談し、凪の母親に電話をかけ傷について聞いた。
頭に血がのぼったのだろう。
凪の母親は一方的に電話を切った。
母親の頭にのぼった血は冷静さを打ち消し…怒り、焦り、絶望から本気で凪を殺そうとした。
必死になって逃げた先には大通りから少し外れたところにある喫茶店。
凪は都市伝説を思い出し、藁にもすがる思いで館までたどり着いた。
そこまで見た瞬間、煙がパンと音を立て風船のように弾け飛んだ。
https://i.imgur.com/cNoTx9s.png
「ローザ、この子の家に行って。そしたら“これ”を撒くんだ」
「りょーかいです!」
ネジ巻き人形のようにトテトテと館の外へ行くローザを見送り、コーヒーにかけた魔術を解いた。
https://i.imgur.com/2Rp4ewh.png
はっと目を覚ますと目の前には冷めたコーヒーがあった。
「ん…ぁあ…れ…?眠ってました…?」
残しちゃダメだ。苦く不味く冷たくなったコーヒーを一気に飲み干した。
「ノンカフェインのコーヒーだからね。もう君の世界では夕方ごろだ。帰りなさい。大丈夫だから」
「大丈夫って…」
虐待を受けているというのに帰りたくない。
そんな私の心情を察したのか、男性(?)は優しく微笑む。
「大丈夫だから。」
この一言が奇妙なほど安心した。
天使に囁かれているように甘い毒が私を蝕んでいく。そんな感覚。
安心はするが、ひどくゾッとする。
矛盾しているのはわかる。でも他に形容するものなんてない。
扉が開かれ帰るように促される。
私は寝起きのせいかフラフラと歩きながら外へ出た。
「そこに大きい木があるでしょう。その木に一礼二拍手二礼。そしたら目を瞑って木に触れてください。戻れますから」
「あの…えっと、ありがとうございます…ローザさんにも伝えておいてください」
ぺこりと頭を下げ、一際大きな木に一礼二拍手二礼。目を瞑り木に触れると_
あの喫茶店の路地裏にいた。
>>6
ありがとうございます!!
続きが気になります
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