裏側☆ダーリン

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1:風莉藍:2022/06/30(木) 19:07


ストーリー☆
庶民ながら私立冬星学院に通う夏城赤奈は、生徒会長の冬星蒼を助けるために初代学長の像を壊してしまう。
像の弁償に必要な2000万を補填する為、腹黒生徒会長に"雑用係兼専属SP"としてコキを使われる羽目に……

キャラクター☆

夏城赤奈(なつじょう せきな) 雑用係兼専属SP
空手が得意で怪力がヤバい節約女子。
バイトを掛け持ちしており、料理や接客の経験は豊富。

冬星蒼(ふゆほし そう) 生徒会
冬星財閥の息子にして勉学・スポーツ万能な爽やか王子。
実態は口が悪く短気な男。

秋堀勇黄(あきほり ゆうき) 副生徒会長
蒼の幼馴染で有力議員の息子。
IQ500を誇る頭脳を持ち、生徒会の参謀役で蒼の右腕。
お調子者で熱血漢だが空気の読めない言動をする。

秋掘洸黄(あきほり こうき) 会計
勇黄の双子の弟。
兄と比べて卑屈な陰キャになっているが、そこそこハイスペック。
赤奈の扱いの酷さに同情し、優しくする唯一の良心。

垂春桃音(しだれはる ももね) 書記
有名ブランド・MOMOの社長を父に、スーパーモデルの母を持つ美人。
人気読者モデルを務め、親しみやすい性格だが自分より下と見た人間には冷たい。

2:風莉藍:2022/06/30(木) 19:09



私立冬星学院東京校。

数々の有名企業社長のご子息や政治家のご令嬢が通われる、漫画かよってツッコミたくなるくらいの金持ち学院だ。
そんな夢みたいな学校の上澄みの上澄み、生徒会。
これまた漫画みたいだけど顔良し頭良しスポーツ良しのスーパーエリートが君臨している。

え?私はお嬢様なのかって?
残念だけど私こと夏城赤奈は超ド庶民で、生徒会に勝てるのは握力くらいしかない。
じゃあなんでこんな超金持ち高校にいるのかというと、それは語れば長くなるので後ほど。

「あーあ、私も大企業とまではいかなくても普通の青春したかった〜」

うちは庶民の中でも貧乏寄りで、弟の学費を貯めるために放課後はバイトをかけもちしている。
登校前にランニングがてら新聞配達、昼休みはこっそり造花の内職、放課後はファミレスのウェイトレス、休みの日は空手教室のバイト。
スポ根漫画みたいにインターハイ目指して一致団結!とか友達と帰り道で買い食いとかカラオケとかしてみたかった……まぁ金持ち校じゃどの道ムリか……。

「はー……今日もバイトか……」

なんてブルーな気分で渡り廊下を歩いているときだった。

「きゃ〜っ、冬星様危ない!」
「へっ?」

女子生徒の悲鳴に目を向けると、男子生徒の頭上に大きな影がぐらついていた。
補修中だった初代学長のガラス像が落ちかけている。

「わっ、わっ、そこの人、危ない!」

――ガシャーン。

思わずとっさに体が反応して、男子生徒の前へと飛び出でる。
反射的に落ちてくる銅像を殴り飛ばし、危なかった男子生徒を突き飛ばし、私はその場にすっ転んだ。

「ったぁ〜……あわぁぁぁぁ!」

幸い転んだのは芝生の上でガラス片も刺さらなかったけど、ガラス像は見事に粉々。
ただのガラスではなく、高級水晶を使った学院の宝である像だ。
水晶玉のようにつるつるだったハゲ頭も見事にひび割れてしまっている。

「大丈夫? 怪我はない?」

意気消沈して芝生に突っ伏している私に手を差し伸べたのは――。

「せ、生徒会長……!」


冬星の天使、奇跡の王子、神の傑作。
とてつもない二つ名を総なめする生徒会長、冬星蒼。
冬星学院理事長の息子にして勉学・スポーツ万能、華道や茶道もこなす超絶爽やかイケメンエリート!

「危ないところだったよ、ありがとう。一応手当をしたいから保健室に行こうか。歩ける?」
「いえ、結構ですっ!見ての通り擦り傷のひとつもありませんから!」
「うちの大事な生徒に何かあったら申し訳がないよ、念の為に行こう」
「ひぇぇ〜」

半ば強引に手を引かれ、保健室へと連れていかれる。
周りの女の子のまなざしが怖いよ………。

3:風莉藍:2022/06/30(木) 19:43



「……で? 像を壊した責任、どうしてくれんだよ」
「……はい?」

人気のない校舎裏、鋭い目付きの会長。
構図は完全にカツアゲだ。

「だから、像を壊した責任。あの像いくらすると思ってんの?」
「はぁぁぁぁ!? いやいやいや、あれは不可抗力ですって! あのままだったら会長ケガしてましたよ!?」
「あれくらい手で受け止めて元に戻せたのにお前が余計なことしたから面倒なことになった」
「はぁ〜〜〜〜〜?」
「ガラス片で怪我人出たら責任とれんの? 有名企業の息子とかいるんだぞ? 学校の評判ガタ落ちさせる気かよ。ほんと考え無しの能無しだな。マジ最悪」

はぁーっと深いため息をつき、舌打ちをする会長。
爽やか王子の面影はなく、あるのはただの口が悪く態度のでかい男。

「来週までに4000万。小切手でも現金でもいいから早く持ってこい」
「いやいやいやいやいやいやゐや」

なんかもう一周まわって面白くなってしまい、私は笑いながら手を横に振った。

「無理に決まってるじゃないですか〜そんな大金」
「……大金 」
「4000万は大金ですから、庶民にとっては」
「……庶民」

そう言うと会長は小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「はっ、まともな判断力もない上に金もない。終わってんな」

軽蔑したような言い方に、思わず手に拳を握る。
だめだ、こんなお坊ちゃん殴ったらお母さんに迷惑が――。

お母さん……? まずい、この4000万弁償しなきゃいけないの?
そんなことになったらお母さんが、弟が、家が――。

「ゔっ……うぅぅ……お母さん……ごめんなさい、ごめんなさい……」
「たかが4000万で泣くことな……お前怪我! 傷ないっつったじゃねーか!」

手のひらで顔を覆うと、いつの間にか開いていた手の甲の傷口に気がついた会長が、目を見開いている。

「クソッ、手間かけさせやがって! 保健室に……」
「うるさい、それどころじゃないっ! 4000万分なんでもするし返せるまで働くから、お願いします……! お母さんには連絡しないで! また働きすぎて倒れちゃう……っ」

"あの男"と離婚してから、お母さんは女手一つで私たちを育ててくれている。
収入を稼ぐために夜勤を何連続も入れていて、前に一度倒れそうになるまで仕事をしていたからすごく恐怖心を抱いている。
4000万の弁償代を払って下さいなんて知られたら今度こそショックで倒れてしまう。

「……まぁ、あの補修業者にも少なからず……というか責任はかなりある。そこも加味して半額の2000万の弁償で済むよう理事長に掛け合ってやる」
「半額! そいつはお得だな!……ってそうじゃないよ〜! 2000万でも即支払いは無理! お願いします来週と言わずに20……否10年待ってください! それか臓器を売るとかマグロ漁船に乗るとか……」

マグロ漁船……生きて帰ってこられないとか噂はあるけど手っ取り早く稼ぐなら乗るしかねぇか……?
腎臓ひとつくらいならまぁどうにかなるでしょ!

と色々考えあぐねていると、

「はー……もう馬鹿馬鹿しくて怒る気にもなれねぇ」

会長は吐き捨てるように怒鳴ると、こちらを見据えて言った。

「丁度いい、俺のSPが育児休暇をとった。生徒会も一人抜けて人手不足だ。その間に生徒会の雑用係兼俺の専属SPとして3年間働け、馬車馬のように」
「!」

うわ、どうしよう神様みたいに見える……。
いやいや、元はと言えばこいつを助けたからこうなったし補修業者の監督不行届だし私なんも悪いことしてなくない?!騙されるな!
でも会長も4000万を2000万に値切って理事長と掛け合ってくれる(?)ように説得してくれるみたいだし割と良い奴??
いやいや騙されるな!
良い奴?
騙されるな!
良い奴?
騙され――うわぁぁぁぁもう!!!!

「う……うおおぉぉぉ! ありがとうございます! そんなんでいいんですか? 時給換算すると3500円オーバーの超高額案件になりますが!?」
「金の計算はっや…………ほんとうるせぇなこいつ……」

4:風莉藍:2022/06/30(木) 20:35


――翌日。

「……というわけで、新しく生徒会に"なんでも係"として夏城赤奈さんを迎えることになりました。学院での困り事があったら彼女になんでも相談してくださいね」

月に一度の生徒会主催全校集会。
爽やかな笑みでマイクを握る会長こと冬星に震えが止まらない。

教会か?とツッコミたくなるような無駄に広い講堂に立たされ、私は全校生徒の前に晒されている。
表向きはなんでも係、実態は雑用兼SP。

「えーっ! 羨ましい!」
「あの生徒会に入れるなんて……何が秀でている方なのかしら?」
「親が有力な財閥とか?」

すみません、何も秀でてないし"親"はすごく立派で患者に優しいけど普通の看護師なんです。

「そういえば夏城赤奈って、入学時の寄付金ランキング入ってたよな」
「夏城とか聞いたことない名前だけど、財力あるんだ?」
「いやーでもバイト掛け持ちしてるって噂だし……」
「どういうこと???」

ふと耳が拾った噂に、自然と歯の奥をギリッと噛んでいた。
"あの男"の話はもう思い出したくなかった。



私の父親は――。


「それでは夏城さん、みなさんに一言意気込みを」
「えっ、あ……!」

横を向くと、爽やか王子スマイルで威圧をかける会長。
やばい完全に意識トんでた……。


意気込みとか聞いてないんですけど!?
お前はただ間抜け面晒して突っ立ってろって言いましたよね?!

うわ全校生徒に見られてるし何か言わなきゃ……!

「はじめまして、1年C組の夏城赤奈です! 皆さんの困り事をお助けしたいと思って生徒会に入りました!(ウソ) 先生も生徒の皆さんもお気軽にご相談ください!(ウソ) ドーンと赤奈にお任せあれ〜!」

……ってあれ?
なんかシーンとしてるような……?

「ふふふ、とても熱心な方なのねぇ」
「つーか悩みなんて全部執事が解決してくれるのに、必要ある?」
「あんなに叫んで……品のない」

お、思ってた反応と違う……。
もっとこう、うぉぉぉ生徒会メンバー爆誕!頑張れー!とかそういうの期待してた……。

「あ、まぁ……そういうことなんで……」

若干尻すぼみになりながら、とぼとぼと舞台袖へ向かう。




なんかもう駄目そうかも〜〜〜学園生活〜〜。


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