Idol Story

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1:Rika:2023/05/13(土) 17:15

【あらすじ】
 ︎︎今や国民的アイドルグループである“Devils”を生み出した中型事務所、ラピスプロモーションが五年ぶりに新人ガールズグループをデビューさせる。
 ︎︎そのグループの名前は“Story”。デビュー当時からクールなコンセプトを貫くDevilsと差をつけるために、おとぎ話のような可愛らしい世界観をテーマとしたグループである。
 ︎︎これは、そんなStoryがアイドルならでは苦難を経験し、成長していく物語。

2:Rika:2023/05/13(土) 17:20

1.デマ事件

 ︎︎使用中の紙が貼られた練習室の扉。しかし中からはステップの音が聞こえるわけでもなく、曲がかかっているわけでもなく、不思議なくらいにしんとしている。

 ︎︎この時Storyはちょっとしたトラブルに見舞われていた。

「まだ全員揃わないの?」

 ︎︎沈黙の中、苛立ちの含んだ声を上げるのは工藤竜奈(くどう りゅな)。ぱっちりとしたつり目を更につり上がらせて、あぐらをかいた足をもどかしそうに震わせている。

 ︎︎Storyのメンバーは六人だが、この場にいるのは五人。竜奈の言う通り、メンバーが全員揃っていないのだからレッスンを始めることは出来ない上、実はこの日が初めて全員揃って振り付けを合わせる時だった。

 ︎︎ここで遅れてくるのが付き合いの長い友人とかならであれば多少は許せるが、未だ姿を見せていない立花菫(たちばな すみれ)はラピスプロモーションで練習してきた期間がわずか三ヶ月であり、二年、三年、ある一人に至っては六年、と長く練習してきた他のメンバー達にとっては、顔も知らない存在。

「……あの子、正直厄介そうだよね」

 ︎︎ 猫のような目を伏せて、若宮ジン(わかみや じん)がため息混じりに呟く。彼女がすみれのことを厄介そうと言うのは今回の遅刻の件についてもそうだが、それとはまた別に悪い噂も流れていた。

「ね。いじめ疑惑はちょっと勘弁してほしいよね」

 ︎︎ジンに賛同の声を上げた竜奈は、苦虫を噛み潰したような表情をしていてこの件を心底面倒に思っているようだった。
 ︎︎世間では、数日前に拡散力のとても高いSNSサイトである「ココロノコエ」にて投稿された菫に関する情報が話題だ。本文は以下の通り。

3:Rika:2023/05/13(土) 17:24

「ラピスプロモーションの新人ガールズグループでデビューすることが決まっている立花菫は性格が悪い。小学生、中学生の時に陰湿な仲間外れや物隠しを繰り返していて、小中と同級生だった私も被害に遭った。ターゲットはランダムだった。このままあの人がデビューしてしまったら、曲を聞く度に当時のトラウマを思い出して苦しくなりそう」

 ︎︎デビューメンバーの顔と名前が公開されていない状況に加え、よくある卒アルの提示などもなく、具体的な証拠が不十分だった。信ぴょう性が高いものではないが、まだ菫側の声明が出ていない事もあり、現在の世論は微妙な所だ。

 ︎︎菫に対するもどかしさや苛立ちであまり良くない空気が流れていたところに、グループのリーダーを任された青海希衣(あおみ けい)の冷静な意見が飛んでくる。

「デマもありえるから決めつけない方が良いよ。私たちの顔が公開された段階でいじめ疑惑が出たなら怪しいけど、このタイミングならほぼ確実に事務所の練習生の仕業だと思う。あの子短い練習期間でデビュー決まってるから、嫉妬とかあるでしょ」

 ︎︎この状況では希衣の意見がもっともだ。
 ︎︎しかし、それがデマかもしれないとも考えない過激派が、「そんなメンバーをデビューさせるなんて」と事務所に文句を言って騒ぎ立てたり、先輩であるDevilsのSNS公式アカウントを荒らしたり、Storyのアンチ宣言をする人物まで現れたりと、無関係な立場への被害もそれなりに大きい。竜奈やジンが苦言を呈すのも仕方がないと言える。

「私の考えもケイ寄りかな」

「私も。もしデマだったらかわいそう……」

 ︎︎希衣の意見に同意し、菫を庇うような態度を見せる瀬田しいな(さた しいな)と日南桜(ひなみ さくら)。ズバズバと自分の意見を言うメンバーが多いStoryの中では穏やかな方で、グループの良心的存在な二人は、真偽の分からない噂を流され、グループ内はおろか事務所での立場も悪くした菫のことを気の毒に思っていた。

4:Rika 修正:「瀬田」は「さた」じゃなくて「せた」です:2023/05/13(土) 17:25

「まぁ確かに、デマの可能性も考えなくちゃいけないけど、せめてレッスンには」

―――バタン!

 ︎︎竜奈の声を遮るように、勢いよく開かれた扉の音が響く。ああようやく来たのか、と振り返るメンバー達だったが、入り口に立ち尽くす菫の只事ではない様子を見て目を疑った。

 ︎︎菫の格好はレッスンをするのに適したジャージや体操着などではなく、私服と思われる丈の短いワンピース。靴も到底運動には適さないサンダルだったが、上下共にどこかで転んだかのような土埃の汚れがついていて、衣服の隙間からは大きな痣が複数のぞき、更に決定的なのが目元。ひどく泣いたのか、真っ赤に腫れてしまっている。

「……何があったの?」

 ︎︎この場で唯一冷静さを保っていた希衣は、状況を素早く把握するために率直な言い方で、そして威圧的になり過ぎないように普段より柔らかな声の調子を使って菫に尋ねた。
 ︎︎菫はこの状況をどう話すべきかと暫く言いあぐねていたが、意を決して口を開く。

「実は……荷物を盗まれたか、隠されたかみたいで」


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