平安らぷんつぇる物語

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1:詠み人知らず:2023/12/05(火) 10:31


髪は女の命なのよ。
今は亡きおばあちゃんの口癖だ。椿油の染み込んだ飴色のつげ櫛で、ひと房ひと房慈しむように梳いてくれた朝。
昔は多少お顔が不細工でもね、髪の毛が綺麗だと良い結婚ができたの、なんて物語を読み聞かせるように言っていた。私はあんまり可愛い方じゃなかったから、その言葉を信じて髪の毛だけは大切にしていた。
おばあちゃんは白髪だったけど月みたいな銀色でツヤツヤしていて、W︎︎枯れW︎︎を感じさせない。私はそれがとても羨ましかった。私もいつか銀色の髪の毛が欲しい、なんて10歳の頃から白髪を望むくらいには見事な神だった。
おばあちゃんの遺髪からは、今もうっすら椿油の香りがしている。

2:詠み人知らず:2023/12/05(火) 15:54

「あーあ、やってらんね〜」
閉店から二時間、終電に駆け込んだアタシはガラガラの車内で一人うなだれた。揺れるつり革を眺めて、容赦なくやって来る明日のことを考える。
表参道の大手サロンに就職して一ヶ月。思い描いていた理想と現実の落差に疲れていた。
アタシはもっとこう……お客様とわいわい談笑しながらヘアセットしたりSNSでカリスマ美容師としてバズっちゃったり、時には芸能人なんか来ちゃったりなんてキラキラした仕事を想像していた。
現実は結構地味なものだ。シャンプーを任せて貰えたら良い方で、掃除や受付なんかの雑用で終わる日がほとんど。下積みが大切なのは分かってるけど、締め作業が終わった後の練習時間の残業代は出ないのはキツすぎる。もうやる気が起きない。
「うわ……ひっど……」
ふと取り出したスマホ画面に、やつれた自分の姿が反射していた。
ラプンツェルを目指していたはずの髪はショートになって、干し草みたいにごわついている。朝の数十分でセットした髪は四方に跳ねていた。
今日もオーナーにみっともない、なんて言われたけど、朝早く夜遅いアタシはロングヘアなんて魔物を相手にする気力はなくて、気が付けば数年かけて腰下まで伸ばしていた髪を肩までばっさり切ってしまっていた。また憧れのラプンツェルから遠くなった。

3:ごじらだ:2023/12/14(木) 03:29

つかみが


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