スレタイ適当、笑。
えーと、ここは私が様々なジャンルの小説を書くところになりますね、
公式cpだったり、伽羅の独白だったり、夢だったり…。
まあ、暇つぶし程度に寄ってくれたならと思います。
・ 荒らしや、迷惑行為はお断りです。
・ 感想は大募集しております!
・ 更新は亀さんです、笑。
それでは、よろしくお願いしますね!
――珠紀は屋上で続く階段をゆっくりと登っていた。
今は放課後。ほとんどの生徒が部活に励んでいる時間だ。だが、珠紀は今日この学校へ転校してきたばかりなため、部活はない。かといって、そのまま帰ってしまうのも惜しい気もした。
新しい学校に慣れるためにも、少し構内を歩いてみようという考えのもと、先程まで音楽室やら調理室やらいろんなところを歩き回っていた。そろそろ帰ろうと思った、その時、ふと屋上へ続く階段を見つけたのだ。そして、導かれるようにして珠紀が屋上への階段を上り始めたのだ。
登り続けて、ようやく鉄の扉を見つける。
片手で押してもびくともしない。ならばと両手で押すと、古い扉特有の鈍い音を立てながらその重たい扉は開いた。
その時、一陣の風が珠紀を襲った。さほど強いものではない、しかし急だったためか、咄嗟に珠紀は顔を守るように両腕をかざす。
暫くして、風が腕を打ち付ける感じがしなくなったのを確認し、珠紀は両腕を下ろす。そしていつの間にか、つぶっていた目を開ける。そして、その瞳は直ぐに大きく見開かれた。
珠紀の目の前に人がいたのだ。柵の上に両腕をおいて、そして顔をグラウンドの方へ向けている。
向けられた背中に、珠紀の胸はざわついた。動機が荒い。そして、心がひどく締め付けられた。
(何、これ……)
珠紀は、訳がわからなかった。ここに来たのは初めてで、そして目の前の人を見たのも初めてだ。しかし、その後ろ姿が懐かしいと感じる。
口が勝手に開いて、言葉を発する。しかし、ひどい乾きのせいか声が出ない。もう一度、と声を発し用としたとき、その人は振り返った。
「――っ」
男にしては、その瞳は大きい。そのせいか、中性的なイメージをわかせる。体もやはり小柄だ。何より印象的なのは、深い緑色のその瞳。夕暮れでその瞳は少し光っており、まるで宝石のように見える。
その少年は、少しばかり目を見開いた。今の今まで、珠紀の存在に気づいていなかったようだ。しかし、そうしていたのも少しの間。じっとしたままの珠紀を不思議に思ったのか、眉間にシワを寄せる。
「おい、何そこにつったってんだよ」
声変わり前の、やや高めの音。――ふと、頬に温かいものが伝った。
少年は、珠紀にぎょ、とした目を向けた。そして、慌てるように珠紀の方に駆け寄ってきた。背は珠紀と同じくらい、目線の位置はやや同じだ。男の子にしては低いな、と珠紀は呆然と思っていた。
珠紀の目の前にやってきた少年は、今度は心配げに眉を下げる。
「なんで、泣いてんだ?」
「え……?」
指摘され、珠紀は漸く気づいた。己が泣いているということに。「あれ」と、珠紀は頬に手を寄せると確かに温かいものが手に触れる。間違いなく己の涙だった。
ゴミでも入ったのだろうか。慌てて拭うが、それは一向に止まらない。
――悲しい、懐かしい。嬉しい。愛しい。いろんな感情が珠紀の心の中で駆け巡る。この人に会ってから、おかしくなった自分に戸惑い、溢れ出てくる涙に戸惑っていれば、手を引かれた。
「あ……」
目の前に学校の制服のブレザーが広がった。後頭部を押し付けられている感触がする。今、珠紀は少年に抱きしめられていた。
驚きで涙が止まる。小柄だと思っていたが、意外に硬いその胸に男の子なのだと実感して、珠紀は恥ずかしさに見舞われた。初めてあった人に、と慌てて胸を押して離れようとするもいつの間にか背中に回されたその腕がそれを許さない。
「ここには俺とお前しかいねーし。なんか、辛いことでもあったんだろ? 胸かしてやるから、存分に泣け」
どうやら、少年は、辛いことがあったから屋上へやってきて泣いているのだと勘違いしているらしい。でも、都合が良かった。彼を見て、涙が出てきたとは到底言えない、失礼すぎる。そこは、話を合わせることにした。
暖かい腕に包まれているうちにまた涙が浮かんできて、慌てて顔を胸に押し付ける。泣き止むまではここを動くことができない、なら素直に好意に甘えることにした。
(優しいな……)
見知らぬ自分にここまで気遣ってくれる優しさが嬉しいと思った。そうしたら、また涙がどんどん溢れてくる。涙腺が切れてしまったのだろうかと疑うほど。
でも、先ほどの悲しみではない。珠紀の胸は嬉しさ、幸せで満たされていた。理由はわからない。でもそのふわふわとした、感情に身を任すように目を閉じた。
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中編予定、
真弘×珠紀の転生の話。原作は、真弘ルートの悲恋後。