スレタイ適当、笑。
えーと、ここは私が様々なジャンルの小説を書くところになりますね、
公式cpだったり、伽羅の独白だったり、夢だったり…。
まあ、暇つぶし程度に寄ってくれたならと思います。
・ 荒らしや、迷惑行為はお断りです。
・ 感想は大募集しております!
・ 更新は亀さんです、笑。
それでは、よろしくお願いしますね!
君の愛が欲しい 【 緋色の欠片 / 真弘×珠紀 】
「先輩、あの――」
「お、おう、珠紀。悪いな、ちょっと今から用事が……ってことで、じゃーな!」
ひらりと手を挙げて、颯爽と去っていくその後ろ姿を見て、私は密かに握りこぶしを作った。
――鬼斬丸が壊れて、1ヶ月ほどたった。あの頃のことが嘘のように季封村には平和が訪れている……んだけど、最近真弘先輩の態度がよそよそしくなったと思うのは私だけだろうか?
近づけば逃げる、話しかければ逃げる。もちろん、あっちから近づいて来るなんてもっての他。
(私たち、恋人じゃなかったっけ……?)
私たちが互いの思いを通わせたのは、ほかの人とは違う特殊な状況の中。氏ぬか、生きるか、そんな命の駆け引きがある戦いの中で、私たちは好きだといい、そしてキスをした。はっきりとはわからないけど、先輩は私のことを「俺の女」と言ってくれたことから、つまり、そういう関係だと思っていいはずなんだけど……。
(……やっぱり、私の思い違いなのかな)
吊り橋効果、というものがある。不安や恐怖を強く感じている時に出会った人に対し、恋愛感情を持ちやすくなることらしい。もし、そうなのだとしたら――。
一度溢れ出した不安は止まらなかった。でも、やっぱり先輩が浮かべてくれたあの表情はきっと嘘には見えなかったから、私はそんなくだらない考えを振り切るようにして頭を振る。
(そうやって簡単にネガティブなるのが私の悪いところ! 不安なら聞いてみればいいじゃない)
ぱちん、と勢いよく頬を叩いて、さてどうやって先輩を捕まえようかと、いつの間にか止まっていた足を動かして、廊下を進んでいった。
「はぁ、はぁ……漸く捕まえましたよ先輩……」
始まりは、そう、放課後になって逃げられる前に先輩の教室に行ったところからだ。私の姿を見つけた先輩はすぐさま、前のドアを通って廊下を走っていく。
それを見て、ほうけているような私ではなく、そのまま先輩を捕まえるべくこうやって暫く鬼ごっこもどきのようなものをしていたのだけれど、先輩が、一口がひとつしかない部屋に逃げ込んだのが運の尽き、漸く捕まえたのだ。
念のためにと、その腕を掴む。久しぶりに全力で走って、体力を消耗しきり胸で呼吸している私とは反対に、真弘先輩は、少し生きが上がっているものの私よりかはまだ余裕そうだ。もし、先輩がここに逃げ込まなければ――と想像し、ぞくりと未だ続いていたかもしれない鬼ごっこに恐怖を覚え、それを頭の隅に追いやった。
「さあ、先輩。今度こそ観念してください……!」
「な、なんだよ、俺が何かしたっていうのかよ!!」
わけのわからずに、ぎゃーぎゃーと叫ぶ真弘先輩に、私の今まで我慢していたものが切れてしまったのだろうか、ぷち、と何かが切れた音と同時に私の口は動いていた。
「何か……? ええしましたとも。なんで最近私を避けるんですか? 話しかけても、近づいても……」
「それは……」
「先輩、……私は、先輩の恋人、ですよね?」
その彷徨う視線に不安になる。先程まで強気だった口調が一気に弱々しくなってしまう。
ふと、お昼頃に浮かべた嫌な思考が脳裏をかすめる。ああ、もう、なんでこんな時に思い出しちゃうんだろう。
「なのになんで避けるんですか?……私のこと嫌いになっちゃったんですか? あの戦いの中の出来事は、全部、嘘なんですか……?」
改めてその言葉を口にすると、もう、我慢ならなかった。溜まっていたものが溢れるように双眼から熱いものが頬を流れていく。
先輩が、ぎょ、と表情を固くさせるのも、お構いなしに、私は涙を拭うことも忘れて、先輩を見つめる。
「ねぇ、先輩……っ、避けられるのが一番辛いよ……。嫌いなら嫌いって言われたほうがマシ……」
訳も分からず、振り回されて何度も期待して苦しむよりも、フラれてしまったほうがマシのように思えてくる。
私、何を言ってるんだろう。ふと思い返して、気持ちを落ち着かせるために一旦ここは出直そうと、一言謝罪を入れたあと、すぐさま踵を返して駆けていこうとした。しかし、伸びてきた手が私の腕を掴み、それはかなわない。
「待てよ。……言いたいことだけ言いやがって、俺の話も聞け」
そのまま腕を引っ張られて、バランスの崩した私は真弘先輩の腕の中。目の前に、紺色が広がった。
先輩に抱きしめられるがまま、私は胸の中でじっとしていた。そうしてどれぐらいの時間が過ぎただろうか、先輩がぽつり、と語り始めた。
「なぁ、珠紀、俺はな。……お前が思っている以上にお前のことを好いてる」
「先輩……」
「だからこそ、不安になったんだ」
「え?」
一瞬だけ緩みかけた気がまた引き締まる。それってどういうこと?、続きを促すように胸から顔を上げて真弘先輩を見つめた。先輩は、私を少し切なげに見つめ返してくる。ねぇ、どうしてそんなに悲しげなの。胸がひどく締め付けられた。
「お前は、すごいお人好しだ。この戦いの中でいやってほど思い知らされた。……だから、つい思っちまったんだ。お前が、俺のことを好きだと言ってくれたのは、俺を生かすためだったんじゃねぇかって」
先輩の言葉に思わず呆然とする。先輩、ずっとそう思ってたの?
「そ、そんなわけないじゃないですか……!! 私は、本当に先輩のことが……」
「まあ待て。落ち着けよ」
思わずカッとなって、先輩に迫る。けれど、先輩は動じるどころか少し困ったような笑みを浮かべて、私の頭を撫でる。それはまるで、私の気持ちを落ち着かせるようなものですごく優しいものだった。
ずるい。いつもは子供っぽいくせに、時々大人びたような言動を取る先輩が、すごくずるい。でも、そう不満に思いながらも、結局はそれに甘えてしまっているんだ。いつも、私は。
「もし、そうだったなら俺はお前から距離を置いたほうがいいと思ったんだ。お前のおかげで、俺は生きている。もし、お前が使命感とかで俺と付き合ってるなら、俺が開放しなきゃいけないって思ってた」
優しく私の頭を撫でながら、先輩は言葉を続ける。漸く、先輩が私から逃げていた理由がわかった。結局は、私のためだったんだね。本当に、どこまで行っても先輩は優しい。優しすぎるから、不安になる。
「先輩、それは全部、先輩が思っていたことでしょう? 本当にそうだとは限らないよ」
「珠紀……」
「私は、先輩が好きだよ。玉依姫とか守護者とか……そんなの全部なしにして好き。もしも、この宿命がなくて私たちが普通の人間だったとしても、私は先輩を好きになる」
それは紛れもない自信からくるものだった。きっと、生まれ変わっても私は何度も先輩を好きになる。私は、守護者じゃない、優しくて、時々子供っぽくて、でもかっこいい先輩を好きになったんだから。だから、ね?と、先輩を見つめると、私を見つめる双眼が一瞬驚いたように大きくなり、そして、優しげに細められた。
「ほんと、お前ってさー……」
「なんですか?」
「……いや、なんでもねー」
ぽんぽん、と軽く私の頭を撫でて、先輩は私から離れる。無くなっていく熱が寂しくて、私は先輩が完全に離れる前にぎゅ、と抱きついた。
お、おい、珠紀!?、と焦る先輩の声を聞きながら、ぎゅうぎゅう、とその体をさらに強く抱きしめる。
「先輩」
「あん、どうした」
「好きって、言ってくれませんか?」
先輩の胸から顔を上げて、真っ直ぐに見つめて告げる。先輩は、きょとんとしたあと、しょうがねぇな、と言いたげな顔をしていたけれどその顔は嬉しげに笑っている。
先輩は、また私の体を抱き抱える。今度は、私も背中に手を回す。とくん、とくんといつもよりも早い胸の音が心地いい。
「珠紀、好きだ。……愛してる」
「私も好きです、先輩」
お互いを見つめて、どちらかじゃなく同時に顔を寄せる。そして、私たちは3度目のキスをした。密かに目を開けて、近くに有る先輩の顔を眺めて、あぁ、幸せだなと実感し、私は再び目を閉じた――。
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今私の中で、真弘先輩ブームが起きている。やばいかもしれない。愛ではちきれてしまいそうだ、()