スレタイ適当、笑。
えーと、ここは私が様々なジャンルの小説を書くところになりますね、
公式cpだったり、伽羅の独白だったり、夢だったり…。
まあ、暇つぶし程度に寄ってくれたならと思います。
・ 荒らしや、迷惑行為はお断りです。
・ 感想は大募集しております!
・ 更新は亀さんです、笑。
それでは、よろしくお願いしますね!
貴方に会いたくてたまらない ( 前編 )【 緋色の欠片 / 拓珠 】
「お願い……お母さん。私、あの村で生きていきたいの、大切な人のとなりで生きていきたいの……」
向かい側には、日々しい顔つきをした自分の母親が自分と同じように正座している。さっきから何度も訴えているが、母からは何も返ってこない。それがさらに不安を掻き立てた。
「お母さん!」
「……珠紀。今日はこれぐらいにしときましょう」
「でも……!」
「私は、あそこへ――あんな村へ貴方を行かせることはできません」
これから先何度も言われても、この意志は曲げない。そう言っているかのように母親はきっぱりと言い切れば、部屋を出ていった。
部屋の中が沈黙に包まれる。聞こえるのは時計が針を刻む音だけ。
「……拓磨」
珠紀はぽつり、と愛しい彼の名前を呟いた。
鬼斬丸を壊し、祖母の葬式終え、季封村から家へ帰ってきてから約2週間。珠紀は未だ、村で生きる許可を得られないでいた。
母親の気持ちも確かに分かる。季封村では何度も死にそうになった。更には身内に殺されかけたりもした。鬼斬丸がなくなったとは言え、まだ堕ちてしまったカミサマはいる。きっとそれは、玉依姫の力を持つ自分を狙ってくるに違いない。危険なのは変わらなかった。
(だけど――)
自分は出会ってしまったのだ。あの場所で、この世界で一番愛しいと思える人と。
確かに村は危険だ。自分だって何度逃げ出したいと思ったか。それでも、いつも傍には彼がいた。自分を支えてくれて、引っ張ってくれて、そして守ってくれたあの人が。
村を出る前に約束したこと、“時雨が終わるまでには戻って来い”それは、もう叶いそうにない。けれど、絶対に戻ってみせるから――。
「だから、待っててね……拓磨」
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後編に続きます!
貴方に会いたくてたまらない ( 後編 )【 緋色の欠片 / 拓珠 】
突然、廊下から電話のコール音が聞こえた。こんな夜にかけてくる人物はただ一人だけ。珠紀はばっ、と立ち上がる。長時間正座をしていたせいか足がしびれるも最早気にもとめない。
廊下に出て、突き当たりにある電話を受話器を取った。そして、少し震え気味の声で言葉を発した。
「……もしもし?」
『あ、えーと……鬼崎です。珠紀……さんはいますか?』
何度も電話で会話をしてきたというのに、変わらずに緊張した声が受話器の向こうから聞こえた。それがなんだかおかしくて、思わず笑いをこぼす。
すると、「おい!」と聞こえてきた笑いに腹を立てたのか乱暴な声が聞こえる。
「ごめん、拓磨。だって、何度も電話してるのに拓磨ってば言葉が片言なんだもん」
『悪かったな。……誰だって緊張するさ。好きな奴に電話をかけるなんて』
真っ直ぐに好きと伝えられたわけではないのに、頬が熱くなるのを感じる。多分、無意識なんだろうが遠まわしに自分を好きだと告げる相手をいつもずるいと思う。
『珠紀? どうかしたか?』
「あ、……ううん、なんでもないの」
『それで……どうだ? 今月中には帰れそうか?』
「無理かな……お母さんのあの調子じゃあ」
『そうか……』
それっきり無言になる。ふと、先程の母との会話を思い出す。母親はとても頑固だ――それが、珠紀にも継がれたのだろう――説得するのはとても難しい。本当に彼のもとへ帰れるのだろうか。もし、このまま帰れなかったらと思ってすー、と背筋が冷えたのを感じた。
不意に、拓磨が「珠紀」と名前を呼んだ。
「何? 拓磨」
少し声が震えていたかもしれない。それに彼は気づいていたのか気づいてないのかはわからないが、何も言わずに言葉を続ける。
『正直に言うけどな、俺は、お前をそこから拐ってしまいたいと思ってる』
「たく、ま……」
『でも、お人好しで馬鹿なお前なことだからな。絶対に嫌がるに決まってる――だから、俺は待つよ。お前をこの村で。……まあ、待つのは性分じゃないけどな』
なんて温かい言葉なのだろうか。次々と涙が目から溢れ出てくる。何か言いたいのに言葉が出てこない。彼が愛しすぎて、何も言えない。
『珠紀……? 泣いてるのか?』
啜り泣く声が聞こえてしまったのだろうか。でも、できるだけ声を抑えたはずなのだが。何も得ずに黙っていればふ、と笑う声が聞こえた。
『言ったろ? お前のことは離れてても分かるって』
「う、ん……」
やっと言葉を発する。そうだった、彼は自分のことに関してならばなんでもわかってしまうんだ。ならば、さっき自分が考えていたこともきっと見通されていたのだ。だから、彼は自分を励まそうとあんなことを言ったのだ。
「拓磨……会いたいよ」
『……俺もだ』
蔵の中に監禁されていた時とは違う。ちゃんと、声を聞くことはできるのに。名前を呼ぶことができるのに、なぜこんなにも寂しいのだろう。
「……私、頑張るから。絶対にお母さんを説得して、村に戻るよ」
涙を手で拭き取って、そう告げる。寂しい、ならば会いに行けばいいのだ。母親を説得して、あの村へ帰ればいいのだ。
『……お前はそうでなくちゃな。くよくよしてるのは似合わない』
優しい声が聞こえる。……いや、声だけじゃなくてちゃんと顔も見たい。彼に触れたい。
愛しい気持ちを抑えるように胸に手を置く。
「待っててね、拓磨」
『ああ、待ってる』
――もし、あの村に戻って彼に出会ったらまず一番にこう告げるのだ、ただいまと。そして次は――好き、大好きだと溜め込んできた相手への気持ちを告げようと珠紀は心に決める。
2人が再開するまで、あと、もう少し――。
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またもや、緋色の拓磨×珠紀です。このcpは緋色の中で二番目に好きです。一番目はもちろん、真弘×珠紀です、笑。
離れている間、二人はどんな事を想っていたのかそんなことを妄s…想像しつつ書かせていただきました!
今回は長く書きすぎました…まあ、これが私の拓珠へと愛です!←