キセキの世代×ナミ【黒子のバスケ×ONE PIECE】

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1:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/11(日) 18:59 ID:txU

立て直しすみません!!またよろしくお願いします!

やっぱり帝光時代からですね(笑)

朱崎ナミ
二年前の姿(まだFカップやな)
帰宅部だが、キセキの世代と仲良し
黒いセーターを着てる
変なあだ名で呼ぶ(ネーミングセンスはない)

朱崎ナミゾウ
ナミの実兄で、ノジコとは双子
まあ、イメージはググってくださいw
シスコン
モデルをしていて、黄瀬の憧れ

朱崎ノジコ
ナミの実兄で、ナミゾウとは双子
二年前の姿
ある意味一番強い
キセキはみんな弟

63:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/12(月) 22:22 ID:txU

テツのパスを高尾くんがスティールし、試合はどんどん進んで行く。

テツと火神ちゃんの連携も、俊くんや日向さんたちも全部…彼らはとめる。

「真太郎って…あんなところからシュート打てたっけ?」

「いや、あんなところから打ってるのは見たことないっス…」

涼太くんやテツも、中学の頃と比べて強くなった。でもそれは、真太郎も同じ。

どんどん真太郎はシュートを決める。もう真太郎はとめられない。

「まじぃな…いよいよ誠凛、万事尽きたって感じだ」

「いや…どうスかね…」

(そんなもんじゃねぇだろ…まだまだ限界なんか程遠いっスよ
これからだ…あいつの秘められた才能(センス)が開放されるのは…!!)

涼太くんの視線の先には、火神ちゃんがいた。まるでケモノのように目をギラつかせている。

(あの目…)

そこで、第2Qが終わった。

「結局ズルズル離されて前半終了かよー」

「てか終わりだろ。もう帰ろーぜー」

インターバル中、あたしたちの後ろに座っていた人がそんなことを言って帰ってしまった。それに涼太くんはむっとする。

「っも〜…根性見せろよ誠凛〜!!」

笠松先輩がそんな涼太くんをなだめる。

「見せてるよバカ。
あんだけ力の差見せられて、まだギリギリでもテンションつないでんだ。むしろ褒めるぜ」

「……あたし、ちょっと行ってくる!!」

「ちょ、おい、ナミ!」

「確認したいことがあるからー!!」

あたしは誠凛の控え室へ向かった。

ーーーー

「失礼しますッ!!!」

沈黙な空気の中、あたしはその空気を壊すかのように控え室へ入った。

「ナミちゃん!!?」

『なんでっ!?』

みんなが驚く中、あたしはある目的の人物の前へ向かう。

「火神ちゃん、少しいいかしら」

「……?おう」

あたしは火神ちゃんの前へ立つと、見つめた。

ただ、見つめるだけだった。

「…ありがと。もういいわ。」

「は!?いや何を確認したんだよ!!」

「秘密よ。んじゃ、後半もがんばってね!」

あたしがそう言うと、みんなが暗い顔をした。そして、日向さんが口を開く。

「正直、勝てるイメージがねーよ…」

日向さんの言葉に、みんなも小さく頷く。

「…そんな気持ちでいたら、一生勝てるわけないじゃない。無理よ無理」

『グハッ!』

「ってゆーかねぇ、キセキの世代のNo. 1シューターよ?死ぬ気で挑まないと勝てないに決まってるでしょ。バカなの?なに?バカガミ?」

『ゴフッ!!』

「おい!なんでオレを入れんだよ!!みんなもダメージ喰らってんな!!」

火神ちゃんを華麗に無視して、あたしは続ける。リコさんまでダメージ喰らってるなんて、そうとう火神ちゃんってバカなのね…

「最後の最後まで諦めちゃダメよ。でしょ?テツ」

「はい。」

テツの方を見ると、なにかのビデオを見ていた。俊くんがなんのビデオだと聞くと、前半のビデオだとテツは答えた。

「なんか勝算あるのか?」

「え?さあ?」

「は!?」

「“勝ちたい”とは考えます。けど、“勝てるかどうか”とは考えたことないです。」

そう言うテツの背中は、たくましかった。

「ってゆーか、もし100点差で負けていたとしても、残り1秒で隕石が相手ベンチを直撃するかもしれないじゃないですか。
だから試合終了のブザーが鳴るまでは、とにかく自分のできること全てやりたいです。」

「いや落ちねーよ!!」

「え?」

日向さんと一緒に、あたしも突っ込む。

「さすがに隕石は落ちないわよ!!ってゆーかスゴイわね、その発想!!」

「いや…でも、全員腹痛とかは…」

「つられるな!!それもない!」

テツにつられた土田さんに、俊くんが突っ込む。それを見たコガが笑って、その笑顔はみんなに伝染した。

「とにかく最後まで走って…結果は出てから考えりゃいーか!!」

最後は日向さんの言葉でしまった。

「いくぞ!!」

『おお!!』

ーーーー

「ただいまー」

「おせーよ!もう始まんぞ!」

「ごめんごめん!」

さ、第3Qスタートよ!!

64:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/12(月) 22:27 ID:txU

「あれ…?黒子っちベンチスか」

「まぁ…高尾がいる限りしょーがねーだろ。にしても無策っつーか…」

試合が始まる。いきなり真太郎がシュートを打つと、誰もが思った。

でも、火神ちゃんが飛んだ。

防ぐことはできなかった。

「見て…」

火神ちゃん、試合中にどんどん高く飛くなってる…!

そして、ギリギリで真太郎のシュートが入る。こんな真太郎の入り方は、初めて見た。

そういえばおは朝占いで、蟹座(真太郎)は獅子座(火神ちゃん)と相性最悪だったわね。おもしろい試合になりそう…!

ーーーー

「あれ…?」

今一瞬…一瞬だけ、火神ちゃんが真太郎のシュートを防いだような…

でもそんなことがあれば、会場はもっと盛り上がるはず…見間違いってわけでもなさそうだし…

すると、火神ちゃんが真太郎のシュートを防いだ。だけど4番が打ち込む。

「うそでしょ…!」

それよりもあたしは、“二度見た光景”に驚きを隠せなかった。

4番が打ち込むのは見なかったけど、あたしは確かに火神ちゃんが真太郎のシュートを防ぐのを見た。

そして、そのあと火神ちゃんは真太郎のシュートを防いだ。

「なんだったの…今の…」

「?? 火神っちが緑間っちを止めたけど、4番が打ち込んだんスよ」

「分かってるわよ!!」

「ええ!?なんで怒ってんスか!!?」

ーーーー

「“キセキの世代”と渡り合える力。そして、バスケにおいて最も最大な武器の一つ…
あいつの秘められた才能…それはつまり
天賦の跳躍(ジャンプ)力!!」

あたしは今、夢でも見ているのだろうか。

火神ちゃんが、人間では飛べないであろう高さを飛んで真太郎からボールを取った。

「でも…火神ちゃんの様子、変じゃない?」

ずっと1人で走って、取って、また走る。なんでパスしないの?

こんなバスケは、あいつらと一緒じゃない!!

そんな状況が続いて、第3Qが終了した。

65:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/12(月) 22:30 ID:txU

「おっ、黒子っち出てきたっスね」

「火神をいきなりぶん殴った時は、どーなるかと思ったけどな」

始まった第4Q。ちゃんと落ち着いた顔をしている火神ちゃんに、安心の溜息が出る。

テツに殴られたから、頭が冷えたのね。次はちゃんとパスを出している。

(でも、もうさっきのジャンプの回数は限られてる…どうするつもり?リコさん!!)

すると火神ちゃんは、回数が限られているジャンプで真太郎のシュートを防いだ。

「大切なジャンプをここで使うの!?」

「たぶんハッタリのためだ。」

「へ?」

「緑間はムリなシュートは打たない。予想を超える火神のジャンプが“まだあるかも”って思わせたら、少なくともシュートを打つ回数が減ると考えたんだろ。」

なるほどね…さすがリコさん!やることがあっぱれだわ

すると、一度もテツを見失わなかった高尾くんが、テツを見失なった。

そしてテツは、パスを出す。

「あのパスは…!!」

そのパスは、加速した。

そして、テツからパスを受け取った火神ちゃんがシュートを決める。

「やりやがった…アイツ…ついに…」

「うん…!」

ダンクで真太郎をふっ飛ばした。

(しかも…今のパスは中学時代…“キセキの世代”しか獲れなかったパス…!!)

きっと今、あたしと涼太くんの考えは一緒だろう。

「って!じゃなくて、ガス欠寸前で大丈夫なんスかアイツは!」

「確かに!!しかも大切なジャンプを使っちゃったわよ!」

「まあ…今のは無理してダンクする場面でもなかったって見方もあるな。
ってかそもそも、ダンクってあんまイミねーし」

「派手好きなだけスよ!アイツは!」

「いやあんたもでしょーが」

「けどじゃあ、全く必要ないかって言えば、それも違うんだよ。点数は同じでも、やはりバスケの花形プレーだ。それで緑間もふっ飛ばした。」

「……」

「今のダンクはチームに活力を引き出す、点数より遥かに価値のあるファインプレーだ」

「チームに活力を引き出すファインプレー…」

やっぱりスゴイヤツよ、大ちゃん!!

ーーーー

火神ちゃんが抜けたあとも、攻防戦を繰り広げてついに誠凛は2ゴール差まで追い付いた。

「ねえ、涼太くん…あたし、あんたたちの県予選に行かずに東京に帰ったじゃない?」

「……?うん」

「あれさ、大ちゃんに会いに行くのが目的だったのよ。」

「…ってことは青峰っちに会ったんスか!?」

「まーね。」

「なんで!?」

「大ちゃんに警告?注意?分かんないけど…そんな感じよ。」

「どんな警告したんスか?」

「火神大我と黒子テツヤ、そして2人のいる誠凛高校バスケ部は、あんたたちを倒すって。」

「そんなこと言っても、どーせあの人は笑うだけっスよ」

「笑われたわよ。ま、見くびんなって言っといたけど」

66:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/12(月) 22:40 ID:txU

残り2分で誠凛が1ゴール差まで追い付いた。そこで秀徳がT.Oを取る。

「最後のT.Oね…流れは今誠凛だし、いつ追い付かれてもおかしくない」

「秀徳が突き放すか、それとも誠凛が追いすがるか。分かれ道のT.Oだ」

T.Oが終了して、また試合が始まる。

「ねえ、キセキの世代ってなんなの?」

「そりゃお前…才能とか能力の塊みたいなもんだろ。天才ってやつだよ」

するとテツが、真太郎にパスされたボールをスティールした。そしてそのボールを日向さんが受け取って、ゴールへ走る。

「それなら…人一倍努力をした人は…」

だけど秀徳の4番(大坪)が、日向さんのシュートを防いだ。

「努力の天才ね。」

ーーーー

「なんか…ブキミっスね。残り3分、もっと激しくなるかと思ったんスけど…」

「ああ…秀徳がペースを落としてから、急にスコアが凍りついちまった。残り1分…おそらく動き始めたら一気だ…!!」

すると、真太郎が3Pを決めた。点差は5。それでも即座に、日向さんが俊くんからパスをもらって3Pを決める。

「時間がない…!このまま終わるのかしら…」

「残り15秒!!」

「誠凛逆転の最初で最後のチャンスだ…!!」

4番(大坪)が日向さんのマークに付いた。

「3Pを最優先で止めに来た…!」

「それでも誠凛には3Pしかねぇ。日向が決められなきゃ負けだ!」

残り10秒のとき、日向さんは3Pラインからはるかに遠いところまで走った。

「遠いわ!あんなところからは…!!」

それでも日向さんは、俊くんから、そしてテツからパスをもらう。

「決めろ、日向ァ!!」

俊くんの声が聞こえた。

そのあと、キレイに彼が投げたボールはゴールネットに入った。

「誠凛の逆転!!」

涼太くんが、笠松先輩が、客席のみんなが歓声を上げる中、あたしは1人の男を見ていた。

高尾和成

「まだよ…!」

彼は真太郎にボールを投げた。

「よく分かったな、ナミ。高尾がまだ動くことが」

「見えたのよ…!彼の呼吸、心拍、汗、重心の位置、筋肉の収縮とか、彼の全てが…!!」

「え、それって…!」

さっきは分からなかったけど、今は分かる。あたしがさっき視たもの、それは未来だ。

あたしの目は、未来が視える。

「そう。征十郎と同じ眼よ…でも、少し違うのはあたしは、征十郎よりも速く視える。」

「どういうことだ?」

「征十郎は呼吸、心拍、汗、重心の位置、筋肉の収縮とか、相手選手の全てを見抜くことであらゆる動きを正確に先読みしていた。
だけどあたしは、身体を見れば全て見抜けるみたい。」

「赤司っちが天帝の眼(エンペラーアイ)なら、ナミっちは女帝の眼(エンプレスアイ)っスね」

女帝の眼(エンプレスアイ)…!

この眼は何かの力になるかもしれない。

67:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 15:51 ID:da2

残り3秒で、真太郎は試合終了のブザーとともにシュートを撃とうとしている。誰もがとめられない、誠凛の負けだと思った時、彼は跳んだ。

「ダメ…!」

でもそれは、真太郎の計算内で。だから真太郎は火神ちゃんが跳んでから、自分はボールを下げた。

フェイクだ。

(緑間真太郎…!!百戦錬磨は黒子だけじゃねぇ…!!)

今度こそ、終わりだと思った。

でも、あたしの眼には映った。“彼”がボールを撃つところが。

「僕も信じてました。火神くんなら跳べると。そして、それを信じた緑間くんが一度ボールを下げると。」

彼はボールを撃った。

「テツ…!!」

ボールは真太郎の手から落ち、試合終了のブザーが鳴った。

「帰るか」

「あ、ちょっと待って!あたし行ってくる!」

「おい、どこにだよ!」

「まぁまぁ先輩。どっかでメシでも食いましょうよ!ナミっち、店決まったらLINEするっスね」

「うん!ありがとう!!」

あたしは笠松先輩と涼太くんと別れて、アイツの元へ向かった。

ーーーー

「真太郎」

「…ナミか」

雨に打たれる緑頭を見つけて、駆け寄る。

「お疲れ様。」

「何も言わないのか?」

「なんか言われたいの?」

あたしがそう言うと、真太郎はふっと笑った。

土砂降りの雨の中、真太郎が風邪をひかないように傘に入れる。

「試合見てて思ったけど、高尾くんといい4番の人といいすごいわね、あんたの学校は」

「俺のチームだ。すごくなくては困るのだよ」

すると、いきなり真太郎のスマホに電話がかかってきた。出ると甲高い大きい声が聞こえる。

『あーーミドリン!!ひっさしぶりー!!どーったった試合ー!?勝ったー!?負けたー!?あのねーこっちは』

こ、この声は!!あたしは急いで真太郎のスマホに向かって声を上げた。

『さつき!!あんたさつきでしょ!?相変わらずね元気そうね!!』

『え、ウソ、ナッちゃん!!?なんでー!?ってゆーか、ひさしぶりーー!!』

あたしの親友で、大ちゃんと同じ高校に行った桃井さつきだ。

『ちょっと涼太くんと試合見に来てて!!』

『あー、たしかきーちゃんとおんなじ学校に行ったんだよねー!?ウチに来れば良かったのにー!!』

『ごめんごめん!!だって大ちゃんと同じ学校だとアホだと思われるし!』

耳元で叫ぶのは勘弁してくれ、と真太郎にスマホを渡された。

『おい、誰がアホだって?』

『そりゃぁ大ちゃんって…え?」

高い声から、低い声に一気に変わった。

『だ、大ちゃん!?…別に久しぶりって感じしないわね。』

『うるせーよ。もっと別れを惜しめよな、お前も』

『あんたなんかいつでも会えるし…ってゆーか真太郎と変わるわよ』

『おう』

68:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 16:00 ID:da2

あたしは自分のケータイでも、さつきに電話をする。隣では真太郎と大ちゃんが電話している

「さつきー!元気だった?」

『もちろん!ナッちゃんは?』

「あたしも元気!なに?あんた高校でもマネージャーしてんの?」

彼女は元帝光中学バスケ部のマネージャーだった。

『そうだよー。ナッちゃんはマネージャーしないの?あ、でも敵になっちゃうか…』

「しないわよ。あんたたちと敵になりたくないし。」

あたしがそう言うと、さつきはあの甲高い声で喜んだ。

『そうだ、今度ウチと闘うのがテツくんの高校なんだよ。』

「そうなの?」

『うん!だから観に来ない?』

さっそく、大ちゃんと火神ちゃんの試合が観られるってことね…さつきには言いたいこともあったし、あたしは観に行くことにした。

『じゃあ今度誠凛に挨拶に行くから、一緒に行こう!』

「分かった!また電話して」

『うん!じゃあね』

あたしが電話を切ると、もう真太郎と大ちゃんの電話も終わっていた。

ーーーー

「あ、いたいた真ちゃーん!」

すると、高尾くんが走って来た。手には真太郎のものと思われる傘が握られている。

「もう帰るよー!って、隣のかわいい娘誰?彼女?あれ、でも海常の制服だよな?」

「そんな訳ないのだよ。こんな品のない女」

「フンッ!!」

「ゴフッ!!」

失礼なことを言われたので、思い切り膝を腹に入れてやった。すると高尾くんが大笑いする。

「ちょっ、真ちゃんのそんな声初めて聞いたんだけど!!ギャハハ!」

「うるさいのだよ高尾…!…こいつはナミだ。帝光で一緒だったのだよ。彼女でもなんでもない」

「ナミよ。あんたは高尾和成くんでしょ?試合観たわよ!すごかったわね!」

「まじで!?いやー、ナミちゃんみたいなかわいい娘にそう言われたらテンション上がっちゃうなー」

高尾くんは試合の時の印象とは違って、かなり明るい人のようだ。仲良くなれそう…

「あ、LINE来てる…」

LINEを見ると涼太くんからだった。

涼太くん:鉄板キッチンってとこにいるっス。迎えに行こうか?

「なぁ真ちゃん、腹減ったしメシ行かねー?」

「どこに行くのだよ」

「えー…どこにしよ」

真太郎と高尾くんの会話を聞いていたあたしは、即座に涼太くんにLINEを返した。

「ねえ、あたしも行っていいかしら?」

「もっちろんだよー!」

「じゃ、行くわよ!」

ーーーー

「高尾くんってなんか遠くない?」

「じゃあ和成?」

「いいねぇ!」

「あたしもナミって呼んでよね」

「おっけー!」

69:お香しゃちょー◆kk:2018/03/13(火) 16:17 ID:da2

「すまっせーん」

涼太くんと笠松先輩がいるという店に、あたしと真太郎と和成が入る。

「おっちゃん、三人空いて…ん?」

真太郎と和成が固まったので、あたしも店を覗き込む。すると、涼太くんと笠松先輩しかいないと思っていたのに、誠凛がいた。

「店を変えるぞナミ、高尾」

「ちょ、真太郎!!外は…」

すごい豪雨、と言う前に真太郎は外へ出た。そして無言で戻って来る。

「あれっ?もしかして海常の笠松さん!?」

「なんで知ってんだ?」

「月バスで見たんで!!全国でも好PGとして有名じゃないすか!!」

和成は笠松先輩に近づいて、誠凛さんたちの方へ席を移動させる。

ーーーー

「「「「「……」」」」」

(((((((あの座敷パネェ!!!)))))))

みんなの声が聞こえる。ってゆーか、なんであたしもここにいるの!?気まずっ!!

「や、やっぱりあたしは…」

「まってください、ナミさん」

みんなのいる方へ行こうとすると、テツに腕を掴まれた。

「だってテツ!!このメンツの中にいるのはいいわ!慣れてる!!でもね、キセキのなんとかでもないあたしがいるのは違うと思うのよ!」

あたしの隣にはテツと火神ちゃんが座って、あたしの正面には真太郎、テツの前には涼太くんがいる。

「場違いだと思うわ!試合にも出てないし!」

「そんなこと言ったらオレもっスよ」

「うっさい駄犬!!…とにかく、あたしは場違い!以上!」

「そんなこと言わなくても…それに、ナミっちも“あのこと”言った方がいいんじゃないスか?」

涼太くんの言う“あのこと”とは、きっと女帝の眼(エンプレスアイ)のことだろう。

「言わなくていいのよ。別にバスケしないし」

「いやそこまで言われたら、余計気になるっつーか…」

火神ちゃんの返事に、テツと真太郎が頷く。

「そんなに大したことないから気にしないで!ま、とにかく食べなさいよ!リコさんたちも!今日はウチのデルモとメガネが奢ります!」

「なっ…!」

「ちょ、ナミっち!?」

ーーーー

「何か頼みましょう。僕たちも来たばっかりなんです」

「オレもう結構いっぱいだから、今食べてるもんじゃだけでいいっスわ。」

「よくそんなゲ◯のようなものが食えるのだよ」

「なんでそーゆーこと言うっスか!?」

真太郎と涼太くんのやり取りに、ふっと笑みが溢れる。

「いか玉ブタ玉ミックス玉たこ玉ブタキムチ玉…」

「なんの呪文っスかそれ!!」

「頼みすぎなのだよ!!」

「大丈夫です。火神くん1人で食べますから」

「ホントに人間か!?」

そして、あたしとテツも火神ちゃんに続いて頼む。ついでに真太郎の分も頼んでやった。

「真太郎、ほらコゲるわよ」

「食べるような気分なはずないだろう」

「負けて悔しいのは分かるっスけど…ほら!昨日の敵はなんとやらっス!」

「負かされたのはついさっきなのだよ!」

真太郎がめんどくさいので、焼けてるやつを口に突っ込んでやった。素直に真太郎はそれを飲み込む。

「むしろ、お前がヘラヘラ同席している方が理解に苦しむのだよ。一度負けた相手だろう。」

真太郎の言葉に、あたしは隣に座る涼太くんを見た。

「そりゃあ…」

涼太くんが不敵に笑う。

「当然リベンジするっスよ。インターハイの舞台でね。」

テツと火神ちゃんも涼太くんを見た。

「次は負けねぇっスよ」

火神ちゃんも噛んでいたものを飲み込むと、ニヤリと笑った。

「ハッ、望むところだよ」

「黄瀬…前と少し変わったな。…目が変なのだよ」

「変!?…まぁ、黒子っちたちとやってから、練習はするようになったスかね。あと最近思うのが…海常のみんなとバスケするのが、ちょっと楽しいっス」

涼太くんが優しく微笑んだ。

たしかに涼太くんは変わったかもしれない。でもね、これが本来の涼太くんよ。

「…どうやら勘違いだったようだ。やはり変わってなどいない。」

やっと食べる気になったのか、真太郎がもんじゃに手を付ける。

「戻っただけだ。三連覇する少し前にな。」

「…けど、あの頃はまだみんなそうだったじゃないですか。」

「お前らがどう変わろうが勝手だ。だがオレは、楽しい楽しくないでバスケはしていないのだよ」

テツと真太郎の会話に、その場の空気が一気に暗くなった。

70:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 16:20 ID:da2

「お前らマジ、ゴチャゴチャ考えすぎなんじゃねーの?楽しいからやってるに決まってんだろ、バスケ」

「なんだと…」

そんな空気を壊すように火神ちゃんが言った。

「……何も知らんくせに、知ったようなこと言わないでもらおうか。」

真太郎は冷たく言い放つ。すると、“べっしゃあ”とお好み焼がみんなの席から飛んで来た。

「あ」

「…とりあえず、話はその後だ」

どうやら和成がひっくり返そうとしたお好み焼が、飛んで来て真太郎の頭に直撃したらしい。真太郎が怖い顔をして立ち上がる。

「高尾、ちょっと来い」

「わりーわりー…ってちょっとスイマッ…なんでお好み焼ふりかぶってん…だギャーー!!」

和成の悲鳴の後、ガッシャーンとものすごい音がした。

「火神くんの言う通りです。今日試合をして思いました。」

「?」

「つまらなかったら、あんなに上手くなりません。」

そう言うテツの顔は、笑っていた。

「…そうね。真太郎はツンデレだから、きっと素直になれなかっただけよ。」

ふっと笑って、涼太くんと火神ちゃんに微笑みかける。

「さ、涼太くんと真太郎の奢りだから食べるわよ!!ほら、追加で注文したのも来たし!」

「そうだな!」

「ちょっと!勝手になに追加してんスか!?」

ーーーー

「お、もう雨やんだんじゃね?」

「ホントだ。」

「じゃー、いい時間だしそろそろ帰ろうかー」

誰かがそう言って、あたしたちは解散することになった。

「火神、一つ忠告しといてやるのだよ」

席を立つ真太郎が、火神ちゃんに声をかけた。

「東京にいるキセキの世代は二人。オレともう一人は青峰大輝という男だ。決勝リーグで当たるだろう。」

火神ちゃんは黙って真太郎の話を聞く。あたしも静かに聞き耳を立てる。

「そして、奴はオマエと同種の選手だ。」

「はあ?よくわかんねーけど…とりあえず、そいつも相当強ぇんだろ?」

「…強いです。…ただ、あの人のバスケは…好きじゃないです」

テツが低い声で火神ちゃんの質問に答える。あたしと涼太くんは、黙ってその様子を見ていた

「…フン、まぁせいぜいがんばるのだよ。」

「…緑間くん!」

真太郎が店を出ようとすると、テツが声をかけた。彼にしては珍しい、大きな声だ。

「また…やりましょう」

「……当たり前だ。次は勝つ!」

真太郎のその言葉に、胸があたたかくなった。

テツと火神ちゃんという新たな刺激を受けて、彼の枯れた魂に火がついた。

「待って真太郎!!あたしも帰る!」

「あ、ナミっちは東京に荷物があるんスか…気を付けて帰るんスよ!」

「はーい!!」

ーーーー

「5万…ええ!?って緑間っち帰ったし!」

「黄瀬くん、ゴチになります」

71:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 16:24 ID:da2

「真太郎!あたしも一緒に…って和成!」

店を出ると、真太郎のチャリアカーに和成が乗っていた。

「今日はジャンケン無しでいーぜ?」

和成の言葉に真太郎は目を開くと少し笑顔を浮かべた。

「……フン。してもこぐのは高尾だろう。」

「にゃにおう!?」

(真太郎…いい相方、見つけたじゃない)

二人の関係性にふっと笑ってしまう。

チャリアカーにあたしも乗せてもらって、真太郎にもたれながらそんなことを考える。

「ま、次は勝とうぜ」

「当然のことを言うな」

「ただお前のラッキーアイテムはなぁ…」

「次からはぬからないのだよ。今度はもっと大きい信楽焼を買うのだから」

「サイズの話じゃねぇよ!!」

なんて二人の会話を聞いていたら安心感からか、眠気が襲って来てしまった。

「しんたろー…ねむい…」

「オレにもたれて寝ておけ」

「え、真ちゃんってナミの家知ってる!?道案内頼むぜ!!」

「いや、オレの家でいいのだよ」

「へ?なんでっ?」

「コイツがいつでも泊まれるようにと、オレたちの家に勝手に泊まるための道具をおいていった」

「え、パジャマも?」

「パジャマは中学のジャージを着るのだよ」

「ふーん…」

二人がその話をしてる間に、あたしは寝てしまった。

ーーーー

「ナミ、起きるのだよ。風呂に入れ」

「んー…」

「ったく…」

仕方なく、コイツを風呂まで運ぶ。べっ別に脱がすわけではないのだよ!!

「ナミ、やるぞ」

「へー…?…ぶぶぶぶ!!!」

シャワーの水圧を最大に強くして、顔面にぶっかけてやる。

「やめんかァッ!!」

「ゴッ!」

アッパーを喰らって、ナミの目が覚めたことを確認する。

「ってアレ?真太郎?和成は?なんであたし濡れてんの?」

「…お前がチャリアカーで寝て、今オレの家にいるのだよ。お前が起きなかったからシャワーで起こしたのだよ」

「そうだったんだ…。…お風呂入りますね〜」

アッパーを喰らったアゴがヒリヒリと痛むが、気にせずに風呂場を出て行く。

ーーーー

クローゼットからナミの下着が入っている袋と、自分の帝光のジャージを取り出す。

「……」

特に情があるわけではない。

あるとすれば、オレが自分の相方から逃げてしまったという悔いぐらいだろう。

存在を否定してしまった。逃げ出してしまった。向き合おうと、誰一人しなかった。

いや、ナミと虹村さんだけは違ったか。

「お兄ちゃん、ナミが呼んでるのだよ」

「もうあがったのか…」

かなり考えていたようで、妹がオレを呼びに来た。オレは風呂場へナミの着替えを持って行った

ーーーー

「真太郎、お先。あんたも入るでしょ?」

「今から入るのだよ。先に寝ておけ。お姉さんに連絡はしておいたのだよ」

「ありがとう。おやすみ」

「ああ」

ナミのお兄さんはいろいろと面倒だからな。お姉さんに連絡をする方がはやい。

「……」

次に黒子と火神たちが戦うのは桐皇学園高校。

そこには、かつての黒子の光(相棒)がいる。オレたちキセキの世代は、あいつを筆頭に崩壊したと言えるのだよ。

その頃からだろう。ナミが一人で泣いていたのは。

オレたちの背後で泣いていたのを、オレは知っている。

そして、その涙をぬぐっていたのは、いつもあいつの幼馴染だったのだよ。

(次の試合は、ナミに大きな影響をきっと与えるのだよ…)

どっちが勝っても、どっちが負けても、ナミは変わる。

と、おは朝占いが言っていたからだ。

ーーーー

「先に寝ろとは言ったが…ハンモックを使っていいとは言ってないのだよ!!」

「いいじゃないッ!ケチ!!」

「お前にだけは言われたくないのだよ!」

72:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 16:27 ID:da2

「……」

「……」

「…あああ!もうイヤ!!」

「諦めんの早いっスよナミっち」

「あんたのせいよ!」

あたしと涼太くんは今マジバにいる。何をしてるかというと、勉強である。

テツと真太郎の試合が終わって、神奈川に帰って来た。そして、海常高校ではもう少しでテストがある。

中学の時なら征ちゃんと真太郎がいて、二人の次に頭が良かったあたしは二人のサポートだけで良かった。

だけど、高校でみんなと離れたら、必然的にあたしが一人で教えることになる。

「だいたいあんた、なんか噂で勉強そこそこできるって聞いたわよ。あれ嘘だったの?」

さっきから分からないと言うところを教えて、分かったかと聞くと返ってくる答えは、

ちょっとまだ分かんないっス

だけである。

「そこそこはできるっスよ。現に赤点取ってないし」

「そうだけど!!」

「ほら泣かない泣かない。じゃあ気分転換にちょっとお話しようっス!」

あんたのせいよ、と真向かいに座っている涼太くんを睨み付ける。

「そういえばオレ、ナミっちに聞きたいことあったっス」

「聞きたいこと?」

「ナミっちってキセキの世代と仲良いでしょ?誰と1番仲良いんスか?」

それは、崎ピョンこと灰崎祥吾と修兄こと虹村修造もキセキの世代に入るのか?

「う〜ん…征十郎…あーくん?いや大ちゃん?う〜ん…やっぱ征十郎かしら?」

まぁこの三人とは頻繁に一緒にいたからほぼ同じぐらいだけど。いや、もちろん他の奴等とも仲良い。

「赤司っちっスかー。なーんか意外な感じがするっスね。赤司っちみたいなタイプとナミっちみたいなタイプって、合わない気がする」

「そう?あたしがうるさいタイプだから、静かに話を聞いてくれる人とは相性がいいの」

涼太くんは眉を下げながらそうっスか、と呟いた。

「じゃあじゃあオレはその中でどんぐらいの順位っスか?」

「崎ピョンよりは上よ、たぶん」

「いやショーゴくんはキセキじゃないから…しかもたぶんって何なんスか!?」

「あ、そっか」

「…そう言えばショーゴくんって高校どこいったんスかね、まぁ興味ないけど」

「あれ、どこだっけ?聞いたけど忘れたわ」

「聞いたんスか?電話で?それともLINEで?」

「電話が掛かってきたの。お前どこ行ったんだ?って、だからあたしも聞いたんけど…なんだっけ…」

うーんと唸るが全く思い出せない。一文字も思い出せない。

涼太くんはなんか、ショーゴくんから電話ショーゴくんから電話ショーゴくんムカつく、とかぶつぶつ呟いている。不気味なやつだ。

「キセキの世代の人達とよく電話するんスか?」

「遠方組とは頻繁にするわ。あとの奴等はまぁたまにね」

そう言うと涼ちゃんは少し不貞腐れたような顏をした。

「オレとも電話してくださいっス!」

73:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 16:30 ID:da2

「何バカなこと言ってんのよ。あんたとは学校で散々喋ってるでしょーが。電話でまで話す必要ないでしょ」

学校ではほとんど一緒に居るんだから、電話までするなんて馬鹿らしい。あたしはお前の彼女か。

「でもナミっちにおやすみとか言われたいっス!」

そう言って口を尖らせる。だからあたしはお前の彼女か。

否、違うわ。

「それじゃああたしがあんたの彼女みたいじゃない。学校でもずっと一緒で夜電話しておやすみ、とか彼女以外の何者でもないわよ!なんなら付き合う?養ってくれるの?なに?」

最後喧嘩口調になったのは見逃してくれて構わない。

そんなことより何故か涼太くんは顏を真っ赤にしている。

「や、養うって…」

「あ、ほんのジョークよジョーク」

「もぉナミっちーー!!からかわないで下さいっス」

「そんなにあたしが好きなら落としてみなさいよ。あんたにできるかしら、坊や」

これも冗談で言ったつもりだが何故か涼太くんの目が燃えていた。

「あ、そんなことより勉強よ!!ほら、ノート開いて!また一から教え直し!!」

いつの間にか閉じてやがったノートを開けさせる。くそ、征ちゃんと真太郎がこんなに苦労してたなんて…

「ここはね、こうなるわけだから…ここまで理解した?涼太くん」

「いやまだ分からないっス」

その返答を聞いた瞬間、手元にあった空のジュースの紙コップを涼太くんの顔面に向かって投げつけた。

「ブッ!!」

痛がる涼太くんを見て満足するが、これではテストの勉強が全く進まない。

……あ、前方に笠松先輩発見!!

あたしは涼太くんを置いて、笠松先輩に後ろから抱きつく

「ナミっちーー!!!置いてかないでっスーーー!!!!」

ーーーー

「笠松先輩!」

「うおっ!…ナミか。どうした?」

「ちょっと助けてよ!今デルモに勉強教えてるんだけどね、全然アイツ理解しないのよ!」

「別にいいけどよ…後ろの方でそのデルモがお前のこと必死に探してるぞ」

「哀れね、黄瀬涼太」

「お前結構性格悪いな」

74:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:10 ID:da2

「ナッちゃーーん!!」

「さつきーー!!」

ガバッ

そんな音が聞こえそうなほど、強くお互いを抱きしめる。

彼女の名は桃井さつき。夜遅いのに駅まであたしを迎えに来てくれた、あたしの親友だ。

「誠凛が明日はカントクさんの家が経営しているジムのプールで、朝練をするって情報があるから、今日はうちに泊まっていきなよ!」

「そうするわ!」

明日は土曜日ってことで、さつきの情報収集がてら誠凛のみんなに会おうと思ったのだ。

ーーーー

「ナッちゃんさー、恋してるでしょ」

さつきの家に行って、お風呂とごはんを済ませてから、さつきの部屋で女子トークをする。

「え!?」

「あはは、分かりやすいね」

あんまり恋愛とか恋バナとかに縁がなかったあたしは、そういうのに免疫がない。なので、つい照れてしまう。

「誰々!?ナッちゃんの好きな人!前の好きな人みたいな感じの人!?」

「えー…違うわよ〜」

初恋の人が一人、いるだけだ。そういえば、さつきには話したことがあるけど、写真は見せたことがなかったっけ…

「せ、先輩なのはそうなんだけど…」

「へえ〜…たしか前の好きな人も先輩だったよね?他校の…」

「前の好きな人のことはもういいから!」

そう何度も何度も初恋を連呼されると、なんだか恥ずかしい…

「えっと…せ、誠凛の…」

「誠凛の!?」

「い…」

「い!?」

「伊月、俊くん…」

名前を出した途端、恥ずかしくなって布団に潜り込む。

「誠凛のイーグルアイを持つPGの伊月俊さんかぁ…」

「うん…」

さすが情報通。俊くんのことも詳しい。ってゆーか、あたしばっかりだったけど…

「あんた、テツとはどーなのよ」

そう聞くと、さつきのうっとりとした顔から恋する乙女に変化した。

「テツくんね!たまに連絡取るよ!!」

「へえ、告白は?」

「こくはっ…!?だ、ダメだよ!!大事な試合前なのにそんな…!」

「あぁ、ゴメンゴメン」

テツは試合とかは鋭いくせに、恋愛だけには疎い。さつきの大胆なアタックも、なかなか気付いてないだろう

「明日はテツくんと会える…!ナッちゃんも、伊月さんに会えるじゃん!」

「……うん…!」

こうやって、さつきと恋バナをできることがすごく嬉しい。

あたしはほんっとうに恋愛に縁がなかったから、テツに恋をするさつきが少し羨ましかった。だから、俊くんという心を撃ち抜いてくれた相手に出会えたのが、嬉しい

「恋バナはちょっと終わりね。…さつき、あんたに伝えないといけないことがあるの。」

「?」

「征十郎って、天帝の眼を持ってたじゃない?未来が視える眼。その能力が、あたしにもある」

「え、えええええ!!?」

予想通りの反応だ。

「それがあたしの能力、女帝の眼。征十郎と違うのは、少し身体を見れば分かること。そして、体力が切れそうな人しか先読みできない」

これは、最近分かった。涼太くんたちの部活中、レギュラー以外の人は外周の後ぐらいから見切れるけど、レギュラーの人たちは練習が終盤に近付くと見切れるようになった。

「でも、体力が限界に近付けば近付くほど、あたしはその人の先の先の未来まで視ることができる。」

「女帝の眼…」

女帝の眼の話を終えた後、もう一度恋バナをしてからあたしたちは眠りについた。

75:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:14 ID:da2

ピィッという笛の音と、バシャバシャという水の音。そして荒い息遣い。更衣室まで聞こえるその音が、練習が辛いことを分からせてくれる

「はい、一分休憩ー」

「あー!キッツイマジ!!」

日向たちが休憩に入ったと同時に、ナミと桃井の着替えが終わり、更衣室を出る。

「面白い練習してますねー」

上から聞こえるその声に日向が顔を上げると、しゃがんで自分を見ている謎の女と、立って自分を見ているナミがいた。

パーカーを着ても隠し切れない二人の豊満な身体に、日向は言葉にならない悲鳴をあげる。

「ーーーーーーーー!!?」

「…どうしたキャプ…っておお!!?ナミ!と誰!?」

伊月たちが振り向くと、顔を赤くした。その中でも、冷静な男が一人。

「…桃井さん、ナミさん」

「知り合い!?」

黒子だ。黒子に続いて、リコも二人に声をかける。

「えっ…とナミちゃんと…どちら様?」

「えーと…なんて言えばいいのかなー?」

「そのまんまでいいんじゃない?」

ナミが少し動くと、紺と白の縦シマのビキニがポヨンと揺れる。それに男はうっ、と反応する。

「じゃあ…、テツくんの彼女です♡
決勝リーグまで待たなくて、来ちゃいました」

「テツくん?」

「黒子テツヤくん♡」

少しの間のあと、

『ええええええ!!!!』

という大声をその場にいるみんなが出した。ナミはぷっと吹き出す。

「黒子ォ!!お前彼女いたの!!?」

「違います。中学時代、マネージャーだった人です」

「テツくん!?久しぶり!!会いたかったーー!!」

「苦しいです、桃井さん」

黒子がプールからあがると、桃井が勢いよく抱き付く。ナミも伊月の腕を自分の腕と絡ませる

「さつきがテツの彼女なら…あたしは俊くんの彼女かしら?」

「え、あの…えっと、ナミさん?」

(羨ましすぎる!!黒子と伊月!!)

(いいなあ二人とも!死◯ねばいい!!)

黒子と伊月が美女に絡まれてるのを、恨めしそうに見る他の部員。

「ちょっ…いやいやいやいや、伊月は分かるけどなんで黒子!?さえねーし薄いしパッとしないし!」

「え〜、そこがいいんですよ〜。でも試合になると別人みたいに凛々しくなるところとか、グッときません?」

桃井の意見に、伊月と腕を組むナミもうんうん、と頷く。

「あと…アイスくれたんです」

『はあ!?』

ーーーー

桃井の話が終わると、ナミと桃井がきゃーきゃーと話す。

「分かる!!さりげない優しさがいのよね!」

「そう!!ナッちゃんもアイスだっよね!」

二人の会話に、他の部員はそんなことで…と驚いているが、対する黒子と伊月はなんの話か分かっていないようだった。

「だからホントはテツくんと同じ高校に行きたかったのー!!けど…けど…」

「あたしだって俊くんのこと知ってたらココに来てマネージャーしてたのにー!!でもぉ…」

「二人とも…プール内は響くので大声は控えてください」

(((((((なんだこの展開…)))))))))

涙を流すナミと桃井に、静かに声をかける黒子。

76:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:17 ID:da2

「なっ、ななな…いったいなんなのあの子!?ナミちゃんはいいとして…」

二人の美女に騒つく部員に、少し焦りつつも呆れるリコが日向に声をかける。

「そもそも、ちょっと胸が大きくてかわいいぐらいでみんな慌てすぎよもう!ねえ?日向くん?」

「……うん。そだね…」

チラ見する日向の視線には、ナミのIカップと桃井のFカップがうつっている。

「チラ見してんじゃねぇよーー!!」

そんな日向をリコが拳で成敗する。その様子を見ていた桃井が二人に声をかける。

「日向さん死んじゃいますよー」

「えっ、なんでオレの名前を…」

日向の問いかけに、桃井は怪しく笑う。ナミは桃井をじっと見つめる。

「知ってますよー。誠凛バスケ部主将でクラッチシューター日向さん。」

日向が驚く間も与えずに、次々と名前を出していく桃井

「イーグルアイを持つPGでナッちゃんの未来の彼氏、伊月さん。」

「なんか違う!!」

「無口な仕事人でフックシューター水戸部さん。」

「……!」

「小金井さんと土田さん」

「あれっ!?そんだけ!?」

「ギリギリBのカントク、リコさん」

「ふざんけなぁ!!」

桃井に対して目を釣り上げるリコ。ナミもふっと笑う。

「桃井さん…やっぱり青峰くんの学校行ったんですか」

黒子の言葉に、少し悲しそうに眉を下げる桃井。ナミも少し二人から目を逸らした。

「…うん」

ナミは目をつむりながら、強く下唇を噛む。

「ナミ…?」

それに彼が気付いた。

「アイツほっとくと、何しでかすか分かんないからさ…」

桃井は困ったように微笑んだ。

ーーーー

「少し、二人で話してもいいですか?」

「え、うん…でも午後の練習もあるから、それに間に合うようにね」

「はい」

ナミも空気を読んで更衣室へ向かおうとすると、誰かに腕を掴まれた

「っ、俊くん!」

「カントク、オレとナミも二人で話してもいいか?」

「伊月くんも?まぁ練習に間に合うならいいわよ」

「分かった。ナミ、外に行こう」

「…うん」

プールに黒子と桃井を残して、他のみんなはプールを出た。

77:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:32 ID:da2

「ごめん俊くん!おまたせ」

「大丈夫だ。さ、行こうか」

入り口の近くで、あたしを待っていてくれた俊くんは制服姿だった。

それに比べてあたしは、オレンジを基調とした花柄のTシャツと短パン…髪の毛も下ろしてるだけだし…

さつきと同じように制服着ればよかったかしら…でも制服は神奈川にあるし…

「そういえば、ナミの私服って初めて見るな。似合ってるよ」

「しゅ、俊くん…!!」

やっぱり私服着てきてよかった!!

ーーーー

適当に歩きながら、少し昔の話をする。

「大ちゃ…青峰はテツの相棒だったのよ。バスケが誰よりも好きで、テツとのコンビネーションも最高で…」

「うん」

「あたしね、アイツのバスケ好きだったの!テツとの連携でシュートを決めて、そのシュートを誰よりも喜ぶアイツがカッコ良かった!」

本当に、カッコ良かったの

「でも…枯れたの、アイツのバスケは」

「……」

「勝負を挑む、から受けるに変わっちゃったのよ。
誰か…誰かアイツのバスケに火を付けてくれたら…!!そしたらまた、アイツの笑顔が…バスケが見れるのかな…?」

「……」

「今アイツがやってるバスケは、あたしの知ってる大ちゃんのバスケじゃない!!
見たいの!大ちゃんのバスケが…!」

何故だろう。俊くんと歩いてるから嬉しいはずなのに、ボロボロと涙が溢れでてくる。

でも、俊くんは静かに話を聞いてくれた。

「っ、ごめんね、暗くなっちゃって…泣いちゃったけど、俊くんと歩くのは嬉しかったわ。
さ、戻りましょう」

「……そうだな」

ーーーー

俊くんと一緒にジムへ戻ると、まださつきとテツは話をしているようだった。

「じゃあ、あたし帰りますね。さつきに先に帰ったって伝えといてください」

「ナミちゃん、」

「いいんですよ日向さん!どーせさつきも学校行かなきゃダメだから!!」

それに、好きな人とはもう少しいさせてあげたいしね

あたしはジムを出た。すると、バタバタと次は肩を掴まれた。

「ナミ!!!」

「ッ俊くん!?」

「お前が見たいバスケ、オレたちが見せてやるから!
キセキの世代のバスケは、オレたち誠凛が変えてやる!!」

ああ、彼のこういうところも好きになったんだろうな。

「ありがとうっ、俊くん!」

そういえばこの道を少し行った先に、バスケコートがあったっけ…

少し、撃ってみようかしら

78:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:35 ID:da2

あたしがコートに行くと、誰かがいるようだった。近付いてみると、それは火神ちゃんと大ちゃんだった。

(二人で1on1…?でもたしか、火神ちゃんの足は真太郎との試合で…)

その時、あたしは視えた

圧倒的な速さで抜かれる、“火神ちゃんを”

「お前の光は、淡すぎる」

そして、そのすぐ後に火神ちゃんは大ちゃんに抜かれた。

「っ、大ちゃん!!火神ちゃん!!」

怖くなったので、急いで駆け寄る。何が怖いってそりゃあ、誠凛バスケ部のカントク様に決まってる。きっと火神ちゃんは無理をしたせいで、リコさんにものすっごく叱られる。

「…ナミ。お前の予想は外れだな。こいつの光じゃ、オレは倒せねぇよ」

「……!!」

また冷たい目だ。

「うっさいわね!!あんたは光ってゆーより、闇でしょーが!あんた鏡見たことあんの!?全身真っ黒よ!」

「うるせーよ」

ムキになって言い返すと、大ちゃんはあたしの額を指ではじいた。

「じゃあな」

それだけ言うと、大ちゃんは行ってしまった。

「……」

火神ちゃんは座り込んだまま、何もしようとはしなかった。大ちゃんとの圧倒的な力の差に、ショックを受けているのだろう

「火神ちゃん…」

「…悪ぃ、ナミ。一人にしてくれ」

ーーーー

仕方ない。あたしはさっきジムで別れた人たちがいる誠凛高校に足を運んだ。体育館では、みんなが必死に汗をかいて練習をしている。

(…練習しない人が勝つなんてない。アイツは絶対に負ける)

あたしの賭け、と言ったら軽いかしら…でもあたし、賭けには強いから

(よし、帰ろう!)

大丈夫。今のままでは勝てないかもしれないけど、火神ちゃんは大ちゃんへ突っかかることはやめない、はず!

(それがアイツ…アイツらの刺激になればいいんだけど…)

アイツらといえば…涼太くん、テツ、大ちゃん、真太郎は会えるからよしとして、あーくんと征十郎は元気なのかしら

あーくんとはよく電話するけど、征十郎とは最近してないわね…まぁ忙しいだろうし、アイツがかけてきた時にたくさん話せばいいわよね

あ、崎ピョンと修兄ともしてないわね…あとマコも

そんなことを考えているうちに、駅についた。これから、涼太くんたちがいる神奈川へ帰る。

ーーーー

「お前…育ったな」

「揉むな!!!」

「ゴフッ!!」

「何してんだよアホ峰!!」

79:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:37 ID:da2

今日は大ちゃんとテツたちの試合だ。なのに、コイツときたら…!!

「コラ!いい加減に起きなさい!」

「あと五分だけ…」

「ダメよ。試合に間に合わなくなるから、はやく起きなさい!」

全然起きない!ったく…仕方ない

「あっ、ダメダメ、何するつもりなの、しんたろ、!ひゃっ、どこ触って…んん!」

「わあああ!!緑間っち!前から思ってたっスけどやっぱムッツリ、ス…ね?」

「おはよ、涼太くん」

「お、おはようっス。み、緑間っちは?」

「いない」

「……はあー!!?」

「はやく準備してよね〜」

寝ぼけてるバカにはこういう方法が手っ取り早いのよね。あと、ごめん真太郎!!

「ナミっちがそこまでバスケの試合に興味持つの、珍しいっスよね」

「バスケの試合じゃなくて、火神ちゃんと大ちゃんの試合に興味を持ってんの。」

「どっちみちバスケの試合じゃないスか」

「うるさい。はやく朝ごはん食べて!東京に行くわよ!」

ーーーー

「ありゃ、まーた遅刻っスわ」

「ほら!あんたがもたもたしてるから」

「しかもまた負けてるし…」

試合会場につくと、すでに試合は始まっていた

「ん?」

「どうしたの?涼太くん」

「いや、アレ…」

涼太くんが指差す方を見ると、見慣れた緑頭がいた。

「真太郎!!?」

「…む?
ナミっ!?それに黄瀬も!?なぜ気づいたのだよ!?」

「アホスかグラサンて!」

「ってゆーか恥ずかしいからソッコー外して欲しいんだけど」

「なにィ!?」

いやホント、マジの方で。周りの人たちの視線が痛いし

「あれスか?見たくないとか周りには言ったけど、結局来ちゃったんスか?」

「テキトーなことを言うな!近くを通っただけなのだよ!」

「いやあんたの家、真逆じゃない」

ーーーー

「で、どースか試合は?」

「…………どうもこうもないのだよ。」

涼太くんの問いかけに、グラサンを外した真太郎がメガネをカチャッと上げる

「話にならないのだよ。青峰がいないようだが…それでもついて行くのがやっとだ」

「大ちゃんいないの!?」

あんのガングロ!!今度会ったらタダじゃ済まさないんだから!

「まあ今、あの二人が決めたじゃないスか。これからっスよ」

「忘れたのか、黄瀬。桐皇には桃井もいるのだよ」

真太郎の言葉にハッとする涼太くん。あたしはさつきを探す。

「アイツはただのマネージャーではないだろう。中学時代、何度も助けられたのだよ。
…つまり逆に、敵になるとこの上なく厄介だ」

ーーーー

「真太郎、さつきに関しては素直じゃない」

「ホントっスね。いつものツンデレはどこっスか?」

「ツンデレじゃないのだよ!ってゆーか、口に手を当てて笑うな!」

80:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:41 ID:da2

「桃っちスか…そーいや青峰っちと幼馴染だったスね」

「でもさつきって、テツのこと好きよね?むしろ本気なんて出せないんじゃ…」

もし、あたしが俊くんの敵なら本気なんて出せずに負けてしまうかもしれない。

「そうなのか?」

「気付いてなかったの!?バレバレっていうか、むしろ毎日アタックしまくりだったじゃない!!」

「あれ見て気付かないとか…サルスか!?」

「なにィ!サルとはなんなのだよ!!」

真太郎って…ホンットに恋愛には疎いわね…賢いのにバカみたい

「…まあいい。だったら尚更なのだよ。」

「え?」

「黒子が試合で手を抜かれることを望むはずがないのだよ。そもそも、アイツのバスケに対する姿勢は選手と遜色ない。
試合でわざと負けるような、そんなタマではないだろう。」

「…そうね。」

あたしは選手でもなければ、マネージャーでもない。でも、手を抜かれたらそれが親友だろうが、好きな人だろうが、許せない。

「ナミっちー、ケータイ鳴ってるっスよ」

「え、ウソ!ったく誰よ」

荒々しくポケットからケータイを取り出すと、青峰大輝という名前が表示されていた。

(は?大ちゃん?あのガングロ、試合出てないくせにあたしに電話できるわけ?)

「ごめん涼太くん、真太郎!あたしちょっと出るわ」

「了解っス」

ーーーー

「もしもし」

『お前出んの遅ェよ』

「うっさい!!あんたもはやく試合に来なさいよッ!!」

『そう怒るなって』

電話の向こう側に怒っても仕方ない。こういうのは本人をハッ倒すのが一番だ。

「で、あんた今どこにいるわけ?」

『んぁ?あー…会場』

「はあ?はやく来なさいよ」

『迎えに来い』

「イヤよ。今試合見てるし!さつき見てるし!俊くん見てるし!」

『いいから来いや。どうせ第1Qはあと少しで終わんだろ?』

「もう第2Q始まってるわよ!!」

こいつと話してたらツッコミがいくつあっても足りないわ…

『お前が迎えに来ねぇなら、オレはこのまま帰る』

「駄々っ子か!!…今会場のどこら辺?」

『入り口のロビーんとこ』

「よりによって入り口なのね…今から行くから、絶対試合出なさいよ!」

『へいへい』

仕方なく、あたしはロビーへと向かった。

ーーーー

「いた!!ほら、行くわよ」

「もう来たのかよ…」

「迎えに来いって言ったのは誰よ…!!」

試合前じゃなかったら思いっきり殴ってたのに…くそっ

「んじゃ、行くか」

「はやくしなさいよね…ってきゃっ!」

あたしはあろうことか、エロ大魔神青峰大輝に片手でヒョイッと抱えられてしまった。

「離して!離しなさいよっ!ヤられる!!」

「ヤるかアホ!お前も行くぞ」

どこに、と言う前に歩き始めた大ちゃんは、右手にはカバン、左手にはあたしというカオスな状態だ。

「お前、オレたちのベンチでじっくり見とけ。」

「ッッ!!」

ゾクッと何かが背中を走った。まるでこいつは、ケモノだ。

「……わ、分かったわよ…」

あたしは落ちないように、そいつの腰に手を回した。大ちゃんの腕は、ちょうどあたしの腰回り。

「細いな、腹」

「ウエストって言ってくれるかしら…?」

ーーーー

「お前…暴れたらオレの腕におっぱい当たるぞ」

「やっぱりヤられる!!征ちゃん!真太郎!涼太くん!テツ!あーくん!修兄!ナミゾウ!」

「だから暴れんなっつの!あとまだヤらねぇ」

「まだってなによ!!ヤる気満々じゃない!」

81:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:43 ID:da2

あたしは今、大ちゃんに抱えられながら試合会場へ向かっている。

「大ちゃん、お尻触んないで」

「ケチなこと言うなよ」

「ハッ倒すわよ」

扉を開けると、みんな試合に夢中で異質なあたしと大ちゃんには気付かない。

「行ってこい!」

「ウス!」

ちょうど、誠凛がメンバーチェンジをしたところだった。大ちゃんは嘲笑うように火神ちゃんに近付いて、肩に手をまわした。

「そーそー、張り切ってくれよ
少しでもオレを楽しませられるようにさ」

「……!!テメェ…青峰!!」

「ナミちゃん!!」

やっと大ちゃんとあたしに気付いたみんなが騒ぎ出す。

「アレって…ナミっち!!?」

「なぜ青峰と一緒なのだよ!!」

はやく下ろしてもらおうとジタバタしていると、チームメイトらしき人が大ちゃんに声をかけて来た

「やっと来たかまったく…早よ準備して出てくれや!!」

「えー?つか勝ってんじゃん。しかも第2Qあと1分ねーし」

その人の顔はあまり見えなかった。だけど、監督さんとその人は大ちゃんを試合に出そうとしている。

「そうだコイツ、ウチのベンチで見せるぜ。」

「はあ?誰やねん、このお嬢さん」

「あー?あー…オレの彼女?」

「違うわッ!!はやく下ろしなさいよ!」

「いいよな?オレが試合出てやるからよ」

「…好きにしてください。桃井さん、このお嬢さんをウチのベンチへ」

「は、はい!ほら青峰くん!ナッちゃん下ろして!!」

「へいへい」

やっと下ろされたあたしは、とりあえずあたり一面を見渡した。

「荷物持っとけ」

「はあ?…ぶっ!」

上着やらカバンやらを好き勝手に投げられたので、腹が立って捨ててやった。

「脱いだもん全部投げんなーーー!!!」

「あーー!!ナミッ、テメ!」

「あんたたちあたしを荷物持ちだと思ってんの!!?か弱い女子に汗くさいジャージ投げるなーーー!!!」

すると、ずいぶん前にあたしに荷物を預けてバスケをした涼太くん、テツ、火神ちゃんがビクッと反応したのをあたしは見た。

「中学の頃からそうよ!!ったく…」

「結局持つのかよ!!」

「あとでたっぷり“おかえし”もらうから」

「仕方ねえな…
じゃあ…ま、やろーか。」

82:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:51 ID:da2

その後、桐皇のリードで終わった前半戦。いつもなら誠凛の控え室に行くところだけど、そうもいかなかった。

「ナミ、行くぞ」

「はあ!?もうベンチで見たじゃない!!涼太くんと真太郎が心配してるから、戻りたいんだけど!」

「知るか」

デカイ態度を取る大ちゃんにイラついて、あたしから荷物を取って桐皇の控え室に行こうとするそいつのふくらはぎを、足で思いきり蹴ってやった。

「テメェ…選手の足を…!」

「ほとんど試合に出てないんだし大丈夫よ」

「…先行っとくぞ」

ポケットからケータイを取り出すと、涼太くんから大量に電話がかかっていた。あたしは電話帳から涼太くんを探し出す。

『もしもし!ナミっち!?』

「うん。あ、ごめんね?涼太くん。あたしベンチで見るつもりじゃないんだったんだけど…」

『青峰っちに連れて行かれたって感じだったっスね…分かってるっス』

「そう、良かった…今日はもう戻れそうにないから…」

『了解っス。帰る時にまた連絡して?迎えに行くから』

「うん、分かった。」

涼太くんとの電話を終えてから、大ちゃんたちの控え室に足を運んだ。

ーーーー

「大ちゃーん、さつきー」

ガチャリ、とドアを開けると桐皇の人は驚いたようにこっちを見た。

「おー、ナミかぁ。久しぶりやな〜」

「そうね、翔一さん。久しぶり」

「知り合いなの!?ナッちゃん!」

メガネで関西弁の男が話しかけて来た。

「まぁな」

「ナミゾウの小学校からの先輩なのよ」

「……え?」

『はあああ!!?』

控え室を出ようとしていた大ちゃんを含めた桐皇の人全員が、大きな声で驚いた。

「きっ、聞いてないよナッちゃん!!」

「だって、さつきたちと同じ高校だって知らなかったし」

「友達の妹って普通そんな仲良くなるっスか?」

たしかこの人は…

「何をゆーとんねん若松ぅ。ナミがピーピーの頃から知っとるねんで?仲良うなるもなんもないわ」

そうそう、若松さん!大ちゃんがうぜーって言ってた先輩よね!それより…

「ピーピーってなによ!あんたもピーピーだったじゃない!」

「オレにおやつのドーナツ食われて泣いてたガキはどいつやねん」

「うぐっ!!」

「そういえば、花宮とナミゾウ元気か?」

「あー、元気元気。また会ってやってよ」

「せやな」

ポカンとしているみんなを置いて、あたしと翔一は会話を進める。

「そういえばナミゾウさんって…」

すると、ナミゾウという言葉に反応したさつきが口を開いた。

「霧崎第一のマネージャーやってるらしいですよ。なんでも、“奪う”眼を持ってるとか」

奪う眼…あたしの未来を視る眼とは違う種類かしら…

「奪う眼、ねぇ…」

「はい。その名は“泥棒猫の眼”(シーフキャット・アイ)なんでも、その眼で見た選手の技の弱点や癖、全てを読み取る眼だそうです。そして分析を行い、技の全てを選手に伝える…」

あたしのエンプレス・アイとは違うわね…あたしは視ることはできるけど、奪うことはできない。

「ナミゾウが新たな敵ってことか…」

「大ちゃん!」

「たとえナミゾウでも霧崎第一でもオレには勝てねぇよ。オレに勝てるのは、オレだけだ。」

「……せやな。ナミゾウでも花宮でも、こっちには青峰がおるんや。強気で行こ」

そして、休憩が終わっていよいよ後半戦が始まった。

あたしは桐皇のみんなと、ベンチへ向かう。

83:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:53 ID:da2

ノジコ、ナミゾウの細かい設定


朱崎ノジコ
実は福田総合学園高校2年
静岡で一人暮らし
キセキの世代は弟だと思ってる
灰崎とは仲が良い



朱崎ナミゾウ
霧崎第一高校2年
幼馴染の花宮に誘われてマネージャーになった
キセキの世代とは普通に仲が良い(特に青峰)
東京で一人暮らし



ナミゾウの能力は泥棒猫の眼”(シーフキャット・アイ)

ノジコの能力はまだ考え中

ナミゾウはシスコンでナミゾウ大好き!って感じだけどノジコも大好き!

そして2人と同じぐらい花宮も大好き!学校では花宮とずっと一緒で、花宮もまんざらでもない

ノジコが行った学校にたまたま灰崎が来た

ナミと黄瀬みたいな関係なのがノジコと灰崎、ナミゾウと花宮



ちょっとノジコと灰崎、ナミゾウと花宮の小説書きますね

84:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:57 ID:da2

【ナミゾウと花宮(ほんのりBL感ありかも?)】

オレの幼馴染は花宮真。オレが生まれたとき、真の家はオレたちの家の向かいにあった。

「まーこーと!」

「あぁ?」

「今日ウチに来ねぇ?母さんもゲンのおっさんも仕事なんだよ」

「…仕方ねぇな」

小学校の頃から、母さんとゲンのおっさんがいないときはウチに泊まっていた真。

「マコーー!!」

「あ、真!」

「よぉナミ、ノジコ」

もちろんナミとノジコも真が大好きで、いつも真が泊まりに来るのを楽しみにしていた。

「マコ!今日はあたしと寝る?」

「あぁ?」

「悪ィけどダメだナミ!真はオレと寝る!」

「なんでよ!あたしもマコと寝たい!!」

「まあまあ…ナミはあたしと寝よ?」

「えーー!……うん」

「誰とでもいいから、早くメシ食おうぜ」

オレはナミのことが大好きで、なにかを許してたり譲ったりしていたけど、真のことはどうしても譲れなかった。

「ナミゾウ!!また真を泊まらせたな!」

「っるせーなジジイ!!真の名前を気軽に呼んでんじゃねぇよ!」

周りの奴になんて言われようと、オレは真の隣から離れようとしなかった。

ーーーー

「ナミゾウ」

「……真…」

母さんが死んだあと、オレは家を出た。

あんな腐った人間と一緒にいたら、オレまで腐っちまう。

「ナミとノジコが心配してた」

「……」

家を出て、街を歩いてたらスカウトされてモデルになった。そして事務所が所持しているアパートに住んだ。

それでも、真はオレに会いに来ていた。

「それだけだ」

「…………真!」

「あぁ?」

「オレ、お前とノジコと同じ中学行くから!その、えっと、くそ…し、心配すんなって伝えとけ!!」

「ふはっ」

いつものように笑っただけで、真はなにも言わずに事務所を去った。オレが稼いだ金を、ノジコとナミに届けるために。

(ナミが中学に行くまであと約三年…それまでに“オレたち”の学費稼げるか…?)

いや、稼げるかじゃねぇ。稼ぐんだ。

そして、ゲンのおっさんが死んだと聞いた。

中学に行ってから、オレはさらにモデル業に専念した。有名になって、テレビにも出るようになった。

「真」

「あぁ?」

「オレ、もう一回やり直してみるな!」

「…おう」

「そしたらしばらく会えねぇけど…」

「引っ越し、すんのか」

「おう。帝光の地区にいる母さんの親戚がアパート持ってて、タダで部屋貸してくれるって」

「そうかよ…じゃあ帝光中に転校すんのか?」

「しねぇよ?ノジコはするけど…オレがいなくなったらマコっちゃん、悲しいだろ?」

「…!ふはっ、誰がマコっちゃんだよ。んなワケねぇだろバァカ」

「えーー!ひでぇな〜、真は!」

そしてオレたちはナミが小6、オレとノジコが中1の冬にまた三人に戻った。

「真!!オレ、お前と一緒に高校行くからな!絶対連絡くれよ!」

「気が向いたらな」

「なんだよー!気が向いたらって!」

ーーーー

「あーー!!原っ!お前真に近付きすぎ!!」

「別にいいじゃん。オレにも花宮貸してよ」

「ヤダねぇーっだ!あ!古橋!!あとザキ」

「オレはついでかよ!!」

「おーい、健太郎起きろよ〜」

「無視すんなっ!!」

「うるせぇよテメェら!!」

「怒んなよマコっちゃ〜ん」

85:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 17:59 ID:da2

【ノジコと灰崎】

「あれ?灰崎じゃない。なんでここにいんの?」

「ゲェッ!ノジコ!!」

「ノジコさん、でしょーが」

あたしはナミの二つ上の姉貴で、ナミゾウの双子の姉貴であるノジコ。

この灰崎祥吾という男は、中学の頃のサボり仲間だ。ナミと同い年であり、友達でもある。

「なんでノジコサンが静岡(ここ)にいるんスか」

「その言葉、そのまま返すわ。…あたしは推薦よ」

「はあ!?一緒にサボってたのに頭良かったのかよ!!?」

「まあね。むしろサボってたのは授業が分かってたから。」

「そんなのアリかよ…」

ここは屋上。あたしのサボりスポットでもあるこの場所に、灰崎を誘ってあげたのだ。あたしってホント優しい。

「っていうか、あんたのその頭…なに?」

「高校デビューってことでイメチェンした。つーかナミは?」

「ナミは涼太と同じ海常。…まあ、神奈川ね」

すると灰崎は怖い顔になった。声も低くなる。

「…黄瀬に、ついてったのか…」

「……誘えっつーの」

「は?」

これは姉の特権で、その姉と同じ高校に来たこいつの特権だ。教えてやろう。

「ナミは、迷ってた。どこの高校に行くか、誰と同じ高校に行って支えるか。
あんた、後輩になったから教えてあげるけど、ナミはあんたのことも心配してたのよ。もちろん、他の奴らも。」

「……」

「だから誘えば、あんたと一緒にいることを選んだかもしれないのに…あんたたちは自分についてくるのが当たり前だと思って…!」

ナミは一人で、ナミにも選ぶ権利がある。

だからキセキの世代の中でも、一緒の高校へと誘っていた涼太と行ったのは正解だと思う。

「あんたたちってバカね…」

「……オレは別にナミと一緒に行きたかったわけじゃねェ。」

そう言うと灰崎はゴロンと横になった。あたしはその隣に座り込む。

「黄瀬と一緒っつーのが気に入らねェだけだ」

「……」

「でも…あんたがオレの隣にいてくれるなら、オレは負けねェよ?」

「どういうこと?」

「そのまんまだよ。あんたの推薦の理由、オレが知らないとでも?」

なんだ…知ってんのね。

「なあ…?朱崎ノジコ監督」

あたしの推薦は、もちろん学力の高さもある。だけど、女バスでやっていた監督としての能力も買われたのだ。

男子バスケ部に

「あんた、知ってたのに聞いたのね?タチ悪いわー」

「っるせぇよ!!」

ーーーー

「灰崎!!!サボんな!!」

「ぎゃーーー!!!鬼監督ッ!!」

「一人で外周20周ね!」

「本気で鬼か!!」

86:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/13(火) 18:04 ID:da2

「翔一さんがあたしのおやつ取ったあ!!」

「おい翔一!オレのナミ泣かせんなよ!だからあんたを家に入れたくなかったんだ…!」

「すまんて、ナミ!でもおやつは翔一さんが食べてもおたからないわぁ」

「うわああああ!!!マコォ!!」

「性格悪すぎだろ、あんた…」

「あー!ナミ!真から離れろ!真!ナミから離れろ!」

「どっちやねん」

今思い返すと、翔一さんにはあまりいい思い出はない。

ーーーー

ワーッと会場が盛り上がり、あたしは一気に過去から今に意識を戻した。

コートでは、大ちゃんがギリギリのところでシュートを打っていた。DFは、火神ちゃん。

点数は、51対39

(さすがね、火神ちゃん…ここまで大ちゃんに付いて来れた選手を見るのは初めてよ…でも、視えた)

一気に火神ちゃんがボールを投げる。速攻だ。

でもここで、アイツが速攻に追いついてシュートを防ぐ。

(あたしの眼で見たのは火神ちゃんが止められる未来…体力的に、今のは大ちゃんの未来じゃなくて火神ちゃんの未来…)

つまり、火神ちゃんの体力の消耗が激しいのに対して、大ちゃんの体力はまだ大分残っているということだ。

すると、大ちゃんのフンイキが変わった。

そして、誠凛のみんなをトリッキーな動きであざむかせる。

(このバスケ…知ってる!)

昔、修兄とアメリカに行った時に見た

ーー変幻自在

路上の(ストリート)バスケ…!

火神ちゃんを避けると、次は日向さんたちが3人がかりで大ちゃんをとめるために飛ぶ。

でも、大ちゃんはそのまま行った。

そして、ボールをゴールの裏に投げる。

誰もが外すと思われたそのシュートは、不思議なことにゴールに入った。

(これが、キセキの世代のエースの力…アイツのこの強引でめちゃくちゃなバスケは、常識(セオリー)が全く通じない)

それでも火神ちゃんの目に、諦めはなかった。

87:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/14(水) 14:03 ID:WvI

火神ちゃんをあざむかせ、更に理解不能な体勢からシュートを入れる大ちゃん。

ボールを投げただけのように見えるのに入るそのシュートを、動きを、解析できる奴なんているのだろうか。

否、いない。

ーーーー

「バスケットに限らず、どんなスポーツでもその歴史の中で洗練されてきた、基本の動きがあり、理想の型(フォーム)があるのだよ。
洗練されムダがなくなったからこそ、選択肢は限られ逆に矛盾も成り立つ。
そこにOF・DF共に駆け引きが生まれる。
それが試合(ゲーム)だ。」

緑間っちの話は難しくて、オレには理解できない。だけど…

「だが青峰(アイツ)は物心つく前からバスケットボールに触れ、大人にまじりストリートでずっとプレイしてきた。
もはや体の一部と化したボールハンドリング+天性のスピード
自由奔放なバスケットスタイル

ドリブルもシュートも
青峰の動きに型はない

無限…!!
ゆえに
DF不可能の点取り屋(アンストッパブルのスコアラー)

それが
『キセキの世代』の
エース 青峰大輝…!!」

青峰っちがどれほどすごいかは、イヤというほど知ってる…!!!

誠凛は今、桐皇が55点に対して39点だ。

ーーーー

大ちゃんのスキをついて日向さんが大ちゃんからボールを取る、

はずだった

しかしそれは取られることはなく、一瞬で大ちゃんの手へ帰る。

「うぐっ!?」
(やっべ、変則のチェンジオブペースかよっっ!!)

「っのヤロォ!!」

火神ちゃんが大ちゃんを止めるために飛ぶ。

それは今までより一段と

「高い!!」

「止めてくれ火神ーー!!!」

客席がワァーッと騒がしくなる。

「あーはいはい
確かに高ーよ。大したモンだ。

けどもう
飽きたわ」

大ちゃんは、上半身をほとんど寝かせながらシュートを撃った。

(普通、シュートってのは上手い奴ほど弧(ループ)の高さがいつも変わらない…
けど青峰(アイツ)はてんでバラバラだ

なのに、落ちない!!!)

88:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/14(水) 18:43 ID:WvI

【ゆっくり気ままに書く番外編みたいな】
番外編1『桃井と朱崎とキセキの世代』

今、帝光中学の文化祭にみんな夢中で、部活の合間を縫ってクラスの子に呼び出される人もいる。

もちろんあたしも、二度目の文化祭に張り切っていた。

「さつき、一緒にまわんない?」

「もちろんいいよ!」

今年はさつきとまわることにした。さつきのクラスはクレープ屋さんをするらしく、さつきは裏方らしい。たぶん当日に追い出されるか、ウェイトレスになるわね、うん

ーーーー

さつき:クラスのみんなに追い出されたから、今からナッちゃんのクラス行くね…

ほらね。さつきには悪いけど、すっごく予想できてた。

「ナッちゃーん」

「あ、さつきだ。征ちゃん、出てもいいかしら?」

「ああ。俺も後から出る。」

征ちゃんに一言かけてから、教室を出てさつきと歩き出す。

「んじゃ、どこ行く?」

「バスケ部のみんなのところに行く?」

「確かみんなは…「桃井さん、ナミさん」

地図を見ると、前から声をかけられた。見てみると、燕尾服姿のテツだった。横にいるさつきが蒸発しかける。

「テツ!あんた、なんで燕尾服なの?」

「おかしいですか?」

「お、おかしくなんかないよ!似合ってる!」

さつき、がんばった!がんばったじゃない!!さつきの勇姿に感動した。

「テツのクラスはエレガントde curryね。そのセンスはどうかと思うけど…行きましょ」

「て、ててて、テツくんの燕尾服…」

やはり蒸発しそうなさつきの手を引っ張って、テツにエスコートしてもらう。

カレーはなかなかおいしかった。

ーーーー

歩いていると、占星術研究会の占い相談コーナーと書いている看板を見つけた。

「あ、確かここって、ミドリンがいるところだよ」

「真太郎が?」

「うん。たぶん、おは朝占いを生活の基準に置いてる人だから、占星術研に目を付けられたんだと思う」

…さすが真太郎。類は友を呼ぶ、ってこーゆーことなのね。

「面白そうだし、行ってみようよ!ナッちゃん」

入ると真太郎に会ってしまった。こいつが正しく占える訳がないのに…

「私、会長に見てもらって来る!!」

「ちょ、さつき!」

嬉しそうに走り出して行くさつきに、少しだけ嫉妬した。あぁ…私もできることなら会長に占ってもらいたいわよ!!

「見てやるのだよ、ナミ」

しょーがないから、真太郎の前に座る。水晶やタロットで見てもらえるのかな、と思っていると机の上にはホラ貝とガラス製ランプが置いてある。

「こんなんで占える訳あるかーーッ!!!」

怒りでホラ貝とガラス製ランプを拳で壊してしまった。真太郎が叫ぶ。

「あああああ!!何をするのだよ、ナミ!!これでおは朝グッズがもらえたのだよ!!!」

「知るか!詐欺よ詐欺!!ったく…行くわよさつき!」

さつきを引っ張って教室を出る。ここら辺は、征ちゃんの好きな将棋部やチェス部の出し物をしていた。もしかしたら征ちゃんいるかも、なんて思って覗いてみると、赤いよく知っている頭がいた。

赤司様だ。

赤司様は、将棋部の部長に圧勝した。

(あ、赤司無双を私はこの目で見た…)

少しびっくりしながら歩いていると、何かにぶつかった。

89:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/14(水) 18:47 ID:WvI

番外編2【桃井と朱崎とキセキの世代】

ぶつかったのは、変な格好をした涼太くんだった。周りの女子がキャーキャー言いながら、列を作っている。

「あ、ナミっち、桃っち、おはようっス」

「きーちゃん!」

「涼太くん!…何?その変な格好」

ガーンッと効果音付きで膝をつく、フランス王朝の青年将校姿の涼太くん。でもすぐ復活した

「うち、縁日やってんスよ。だからこれはその衣装」

看板には、艶仁知〜艶やかなる新しき愛と知性をあなたに〜と書いてあった。

「…もうどっから突っ込んでいいのか、分からないんだけど」

そう言うと、涼太くんも苦笑した。

「ナミっちの気持ちも分かるっス。俺も教室の飾り付けしてて、あれ?と思ったし」

いやもっと前から気付くでしょ、と思う。これには、経緯を見てると気付かなかったらしい。

涼太くんの話によると、初めはアフタヌーンティーの喫茶室を希望してたらしいけど、調理室の関係で飲食店のクラスは数が限られてて涼太くんのクラスは抽選に外れた。

だけど、一部の女子はアフタヌーンティーの準備を既に準備をしていた。せっかく用意したものを無駄にはできない、と用意した衣装で縁日をやろうということになった、らしい。

「でも人がいっぱい入って良かったじゃない」

「まあ、そうっスね。なんか物珍しさで人が集まってるらしくて」

「物珍しさ、ねぇ…」

涼太くんと話し始めてから、やたらと背中に視線を感じる…たぶん間違いなく、涼太くん目当てに並んでる女子たち…

それはさつきも感じ取っていたらしく、2人で顔を見合わせて、あはは…と笑う。

「あ、そうだ2人とも!紫原っちのも見た方がいいっスよ絶対!待ってて!呼んでくるから!」

ーーーー

「あ、ナミちんにさっちんだー」

「あーく…ん!?」

あーくんは、お姫様の格好をしていた。デカイ分、迫力もある。

「驚くっしょ?」

涼太くんの言葉に、こくこくと頷くあたしとさつき。すると、涼太くんはあーくんに声をかけた

「紫原っち、アレやってよ」

「えーうん。まあいいよ」

「アレって?」

「まあ、見てて」

黙って見てると、ゴホンッとあーくんは咳払いをすると腰に手を当てて、人差し指を突き出す

「ごはんがないなら、お菓子を食べればいいじゃなぁい!!」

「「…え?」」

あたしとさつきが驚いていると、周りの女子がキャーキャー言い始めた。

「似合うー!すてきー!」

「もっとやってー!」

な、なんてあーくんにぴったりなセリフ…

そのままあたしたちは、縁日を後にした。

ーーーー

「あ、もうちょっとでスタンプラリーね」

「スタンプラリー?」

「そう。その大会に男女ペアで出場して優勝すると、そのペアは幸せなカップルになるんだって」

さつきの目の色が変わり、肩を掴まれる

「まさかナッちゃん…!」

「そのまさかよ…!」

ガシッとあたしとさつきは手を組んだ。そして、勢い良く走り出す。

「がんばりなさいよ、さつき!テツにはこのこと言ってあるから!!」

「ありがとうナッちゃん!私、がんばる!」

そう。テツとさつきにペアを組ませるのだ。

90:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/14(水) 18:50 ID:WvI

番外編3『桃井と朱崎とキセキの世代』

受付会場に向かうと、たくさんの人が集まっていた。

(この中からテツを見つけるとか、砂浜に落ちたコンタクトレンズを拾うのに等しいじゃない…!)

ショックで2人でうなだれていると、大声で声をかけられた。

「ナミー!さつきー!」

「ナミさん、桃井さん」

ハッとして声をかけられた方を見ると、テツと大ちゃんがいた。あたしとさつきはテツに駆け寄る

「テツ!!」

「テツくん!!」

「おい、オレは無視かよ」

大ちゃんにデコピンされる。

「だってテツしか目に入らなかったもん」

「そうだよ!無視じゃないもん!」

「それを無視っつーんだよ!!」

大ちゃんを無視して、テツにはさつきと組むように言う。テツはそれに分かりました、と頷く

「おい、なんの話してんだよ」

「このスタンプラリーの話よ。あんたもこれに参加すんの?」

「しねぇよ。オレはテツに付いて来ただけだ」

「呆れた…このスタンプラリーの優勝景品は、レブロンモデルだから、ついあんたもかと…」

「マジかよそれ!!オレも欲しかったんだよそのバッシュ!!!」

すると、大ちゃんはガシッとあたしの肩を掴んだ。やだ、イヤな予感…!

「ナミ!オレと参加しろ!!」

あぁ…イヤな予感、的中…

「イヤよ!あたしはさつきの味方なの!!」

「なんでそこでさつきが出てくんだよ!」

「いいからイヤなの!!出たいなら他の女を誘いなさいよ!それか男!!」

「めんどくせぇ!!参加しろ!」

「2人とも、受付終了しますよ?」

ギャーギャー言い争ってると、いつの間にか人があたしたちを避けていた。

「…しかたない…あとで焼きそば奢ってよ!」

「分かったよ」

受付を済ませて、会場へ進む。まずは二人三脚で第2ゲームへ進む、というものだった。

「勝つぞ、ナミ!」

「はいはい。ってゆーか、あんまりくっ付かないでくれるかしら?セクハラよ」

「どういうことだよ!!!」

ーーーー

スタートの音と共に、大ちゃんに引っ張られてあたしは走り出す。

「はやッ!速すぎ!!止まれなーーいッ!!」

「止まる訳ねーだろ!!…ッ!曲がるぞ」

「え?」

すると、勢い良く大ちゃんはカーブした。ゴールから少し離れる。

「ちょっと!なんで曲がるのよ!?」

「なんつーか、イヤな感じがしたんだよ」

「はあ!?」

「いいからっ!もう一回曲がってコースに戻るぞ!!」

コースに戻って走ってると、後ろからバゴォッと音がした。振り返ると、地面には大きな穴があいている。

「後ろの、ゴールを一直線に目指してた集団が消えてる!?なにあの穴!!」

確かあの場所は、大ちゃんがちょうど曲がったところ…すると、アナウンスが流れた。

《えー、クイズ研からのお知らせです。落とし穴に落ちた人は、その場で“失格”となるのでご注意ください》

「落とし穴って…あとだしもいいとこよ…」

てか良く見たら、ところどころ掘り返したあとのような…どことなく土の色が違う気が…!

「グラウンドに落とし穴って…本格的すぎ…」

「いいじゃねぇか。これぐらいスリルがある方がおもしれぇよ。」

うわ、楽しげな笑み…因縁のライバルと出会ったかのような…

すると大ちゃんは、あたしの肩に回している手に力を込めた。

「ナミ、突っ走るぞ!」

「えっ!?いや、少し慎重に行かないと私たちも穴に落ちるわよ!?」

「オレの勘を信じろ!!」

自信満々な大ちゃんを見る。

「…本当に信じて大丈夫なんでしょうね?」

「大丈夫じゃねー時は…なんとかしろ!」

「んな滅茶苦茶な!!」

「グダグタ言うな!行くぞ!!」

もう一度、あたしと大ちゃんは走り出した。

91:お香しゃちょー◆kk:2018/03/17(土) 19:24 ID:u5k

(くそおっっ!次何してくるか、まったく読めねー!!だったら…取られる以上に点を取ってやる!!

平面の速さで勝てねーんだったら、高さで勝負だ!!

届かなきゃ、止められねーだろ!!)

しかし、もう火神の手にボールはなかった。

取られたのだ、青峰に。

「わりーな。ノロすぎて…
ついとっちまったわ」

そのままドリブルをする青峰を追いかける火神。スピードは速い。

だが、追いつかない。

(まさか…いくら速いっつっても…ドリブルして火神より!?)

「ったく、止めろよそんぐれー!青峰ばっか目立ってんじゃねーか!!」

「ええっ!?」

目をつり上げる若松に、桜井がビビる。ナミは黙って、その様子を見ていた。

(諦めてたまるか!!)

「うおぁああああ!!!」

シュートをしようとする青峰を止めようとするか火神だったが、ドンッと音を立てて青峰に当たった。ファールだ。

しかし青峰は、シュートを決めた。

(そんな…火神がここまで、手も足も出ないのか…!?)

(涼太くんとやった時も、真太郎とやった時も、どんな強敵にもくらいついてみせた…
今度もきっとなんとかしてくれる…心の中でそう思ってた…けど…甘かった

大ちゃん(コイツ)は…
止められない…!!)

絶望を感じる誠凛。悔しそうに、ナミが拳を握る。

「バスケットカウント!!ワンスロー!」

桐皇学園が59点に対し、誠凛は39点。その差、20点。

「オイオイ、こんなもんか。
そーじゃねーだろ、テメーらのバスケは」

青峰が誠凛を挑発する。

「オレに勝てるのは オレだけだ
テメー“だけ”じゃ、抗えねーよ」

つまり、黒子がいない誠凛に桐皇どころか自分には勝てない。

「出てこいよ
…テツ!!」

(20点差…覚悟を決めるしかないわね…!!)

もちろん、それを一番分かってるのは誠凛だ。だからカントクは、覚悟を決めた。

「黒子くん…」

「大丈夫です。
もう十分、休めました

行ってきます」

黒子が立ち上がる。

「決着つけようぜ
見せてみろよ

新しい光と
影の底力をよ」

92:マッキー◆5A:2018/03/17(土) 21:26 ID:7Ts

来たよ!中々良い小説だよね。ねぇ、ルフィとか出てるかな?あとサンジも・・・

93:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/17(土) 23:15 ID:u5k

>>92
マッキーさん…やっと人が来たよ…ずっと一人でやんなきゃとか思ってたよ…
番外編でバシバシ出るよん

94:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/17(土) 23:34 ID:u5k

番外編2ー1『もしもナミが海賊高校に行っていたら!黄瀬涼太VSウソップ編』

たまたまナミとウソップが日直で放課後まで残っていて、たまたま自宅の方向が一緒だったから2人で帰っていた。

「駄菓子屋行きましょうよ、ウソップ」

「えー、めんどくせぇよ。一人で行けよ」

「いいのかしら?そんなこと言って」

ウソップはナミの言葉に怪訝な顔をする。

「なんだよ」

「あたし、あんたの恥かしい写真撮っちゃったのよね。カヤに送り付けてもいいのかしら?」

「お供しますナミ姉さん!だからそれだけはご勘弁を!!」

どんな写真かは分からないが、とりあえずナミが脅しに使うということは、相当危険だと考えたウソップ。それを片想いの相手に送りつけられるのはヤバイ

「じゃあ奢ってよ、みかん飴」

「は?…まぁみかん飴ぐらいいいけどよ。頼むからカヤに写真はばら送らないで下さい」

ということで、ウソップの了承をもらったのでナミとウソップは駄菓子屋へと向かった。

いや、正確には向かおうとした。

ーーーー

「ナミっちーーー!!!!」

ナミの背後から突進する勢いで誰かがナミに抱き着いた。

「ぎゃっ…涼太くん!?」

倒れそうになったナミを瞬時にウソップが支えた。さすが援護は任せろと胸を張って言う男である。

「誰だ?この犬みたいな奴」

「犬じゃないっス!つーか、あんたオレのこと知らないんスか?」

黄瀬の馬鹿にしたような物言いに、ウソップはキッと目を釣り上げる。

「あんた、誰もが自分を知ってると思わないでよ。あたしも初対面の時はあんたのことなんて微塵も知らなかったし」

ナミが黄瀬を引っぺがしながらそう文句を言う。

「ナミっちヒドイっ!じゃあ自己紹介するっス。オレ黄瀬涼太っス。モデルやってます」

髪を掻き上げて無駄にキラキラさせながら言う黄瀬にナミとウソップは鼻で笑った。

「オレはキャプテン・ウソップ!」

「なんか今鼻で笑わなかったっスか?」

「ハハハ、気のせいだよ黄瀬くん」

三人が道端で突っ立っていると、学校帰りの女の子達が群がってきた。

「ねぇ、あれ黄瀬涼太じゃない?」

「ほんとだー!やばいかっこいい」

キャーキャー騒ぐ女子たちに黄瀬は笑顔で手を振った。ナミとウソップはうんざりした顔で黄瀬を見る。

「あれ?でもあのオレンジ髪の娘、めっちゃかわいくない!?」

「ほんとだ!ちょーかわいい!」

「隣の鼻の長いのって彼氏かな?」

「えー、似合わな〜い」

「オイ」

ウソップが失礼なことを言う女子に静かにつっこむ。女子の言葉に黄瀬は眉根を寄せた。

「これ、オレの彼女っス!」

黄瀬がナミの肩を抱いてそう言った。その言葉にナミとウソップは何言ってんだこいつ、とでもいうような顔をする。

「涼太くん、バカなこと言ってるとその顔潰すわよ」

ナミの冷めた声色に黄瀬の顔が引きつる。

「おい、ナミィ。さっさと駄菓子屋行って帰るぞ」

「そうね。じゃあね、黄瀬涼太」

「ちょ、ナミっち!!フルネームやめて!!」

女の子達に囲まれる黄瀬を放ってナミと土方は駄菓子屋へ向かった。

ーーーー

「……お前も苦労してんだな」

「まあね…」

end

95:お香しゃちょー◆kk:2018/03/17(土) 23:43 ID:u5k

番外編2ー2『もしもナミが海賊高校に行っていたら!緑間真太郎VSロロノア・ゾロ編』

ナミは今、緑間と食べ放題に来ている。昨夜、ナミからご飯を奢れと電話をしたからだ。

「ん〜、うまい!」

「相変わらず人使いが荒いのだよ」

おいしそうに料理を頬張るナミをよそに、緑間もちょくちょく料理を口に運ぶ。

「真太郎、友達できた?」

「フン、下僕ならできたのだよ」

「そう、ちゃんと友達できたのね」

「な、と、友達じゃないのだよ!!…ゴホン、お前はどうなんだ?」

緑間の質問にフォークを銜えながら首を傾げる。

「もちろん「よォナミじゃねェか」…ゾロ?」

ナミたちのテーブルに左目に傷をし、左耳に三連のピアスをした男がやってきた。

「誰なのだよ。このマリモみたいな男は…」

「誰がマリモだ!!
…誰だこいつ。お前の彼氏か?」

緑間が怪訝な顔でゾロの顔を見て、ゾロは睨みつけるように緑間を見た。

「これは高校の友達よ「これって言うな」そして、これが中学の時の友達「これは失礼なのだよ」

緑間は溜息を吐いて口をモグモグさせるナミを見る。そしてその後、ゾロに目を向けた。

「緑間真太郎です。ナミがお世話になってるのだよ」

「ロロノア・ゾロだ。別に世話はしてねェ」

「あたしが世話してやってるのよ」

「それは絶対ないのだよ」

緑間がナミを白けた目で見る。ゾロは2人の様子を見てククッと笑った。

「仲良いんだなお前ら」

「別に、そんなに仲良いわけじゃないのだよ」

「真太郎はツンデレなの。本当は仲良いわ」

「ち、違うのだよ!!」

「ちょっと照れないでよ!」

ゾロから見ればじゃれ合ってるように見える2人。

「…?何よゾロ。しかめっ面なんかしちゃって」

「……してねェよ」

ナミはゾロの顔を見て頭に疑問符を浮かべる。明らかに何時もよりしかめっ面をしていたからだ。

「あれ?ってゆーかゾロ、あんた何してるんの?」

「あ、忘れてた。オレ知り合い待たせてるからもう行くわ」

「あ、そう。じゃあまたね」

「ああ」

ナミは去って行くゾロに手を振った。

ーーーー

「………不良か?あの人」

「ゾロ?別に不良でもなんでもないわよ。バカでマリモだけど。でも、いい奴だわ」

微笑んでそう言うナミに、緑間は何とも言えないような顔をした。

「…………そうか」

ーーーー

「……あんた嫉妬してるの?

「はぁ?ち、ち、ち、違うのだよ!!」

end

96:お香しゃちょー◆kk:2018/03/18(日) 00:27 ID:u5k

《誠凛、メンバーチェンジです》

「…黒子」

「…わりぃ。オレ一人じゃ予想以上にしんどいわ…わ」

「すいません。イミが分からないんですけど」

「あ!?」

「最初から一緒に戦うつもりだったじゃないですか。
そんな簡単に勝てたら、苦労はないです」

「っせーな、わかってるよ

行くぞ!」

「オウ、来いよ」

(……テツくん)

「黒子っち…!」

(テツ…!!)

(…お願い…!!)

ーーーー

開始早々、黒子がパスを出す。そのパスは、秀徳戦で見せた超長距離パスだ。それを受け取った火神を、青峰が追いかける。

「知ってるよ。追いついてくるんだろ?ムカつくけど…」

しかし取られる前に、ゴール付近にいた日向にボールを投げた。

「どうした火神ー?ずいぶんと、ナイスパスじゃねーか!」

パスを受け取った日向が、不敵に笑う。

「決めてくださーい!!キャプテン!!」

一年の祈りが通じたのか、日向が撃った3Pはキレイに決まった。

「きたぁ〜〜〜!!!後半ついに初・得・点!!」

「つか祈ってんじゃねーぞ一年!
オレが撃つ時は称える準備だけしとけや…!」

(((クラッチタイム入ってた!!!)))

(すごいやこの人…
今…撃った瞬間、入るのが分かった…)

桜井が驚いた顔で日向を見る。

点数は、桐皇が59点、誠凛が42点。

その差、17点

97:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 01:06 ID:u5k

桐皇のボールを、黒子が取る。

(アカン!アホかワシは…!)

(ウスすぎだろ!?桃井から聞いてたのに…ちょっとカッとなるとすぐいること忘れちまう…!)

黒子はパスを伊月に出し、受け取った伊月がシュートを決めた。

「うおおお!!連続ゴール!黒子いると全然違うぜ!」

(やっぱテツがいると、全然違ーな
テツが入るとよ)

「相変わらずだな、テツ…
中学の時とホント変わってねーわ、全然…

…マジ、ガッカリだわ」

冷めた目付きで黒子を見る青峰。そんな青峰を黒子も強く見つめ返す。

「それで勝ったつもりかよ?オレに」

「……そのつもりです
これが僕のバスケです」

ーーーー

「……!」

黒子の動きに気付いた伊月が、黒子にパスを出す。

(これで一気に流れをとるぞ!
行け!!)

“加速する(イグナイト)パス!!”

黒子がパスを出す姿勢に入った。

「悪ーな、テツのパスは全部知ってる。ミスディレクションのタネもな

何より、オマエのパスを一番とってきたのは誰だと思ってんだよ?」

しかし、

「オマエのパスは
通さねぇよ」

そのパスは青峰に、簡単に止められてしまった。

「なっ!!?」

「そんな…!」
(高尾くんでもとれなかった切り札が…!?)

「……!!」
(今までテツのパスを一番とってきた大ちゃんだからこそとれた…!!)

そのまま青峰は伊月、日向、水戸部の3人をドリブルで抜き、ゴールへ向かう。

シュートとしようとする青峰を止めようと、黒子と火神が飛ぶ。

「止めてくれ!!黒子・火神!!」

「テツ!火神ちゃん!」

しかし、青峰は2人をふっ飛ばした。

「「!?」」

(5人…抜き!?そんな…)

「悲しいぜ…最後の全中からオマエは何も変わってない
同じってことは成長してねぇってことじゃねぇか
やっぱ結局、赤司が言った通りかよ…

黒子(お前)のバスケじゃ
勝てねぇよ」

青峰の言葉に、黒子が絶望を顔に表した。

98:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 03:26 ID:u5k

《第4Q始めます》

「……」

「ここまでかよ…」

「……」

いとも簡単に点を取られていく誠凛に同情が湧く。黄瀬は信じられないものを見るような目で見、ナミは悔しそうに試合を見る。

そこで一人、火神の異変に気が付いた。

(火神くんの様子が…!?…足!?)

カントクだ。

(なんで!?ほとんど完治してる上に、テーピングもキッチリやった…そう簡単に悪化なんて…)

「……!!」

(違う…!これは…)

ーーーー

《誠凛、メンバーチェンジです》

「火神!!」

火神の代わりに、土田が入る。それに火神は抗議した

「なんでまた…!?テーピングも問題ねーよ…です」

「いいから戻れよ」

「大丈夫っすよ!!それにまだ試合は…こんな所で…」

「いいから戻りなさい!!!」

カントクの声で、悔しそうに唇を噛みながらベンチへ戻る火神。

(…やっぱり。今まで痛めた足を無意識にかばいながらプレイしてしまってたんだわ
そのせいで、今度は逆の足に負担が…
もう出すわけにはいかない…それどころか

決勝リーグ残り2日も…)

自分の身体のことだ。火神自身が、一番分かっているのだろう。彼はただ、悔しそうにするだけだった。

「…いよいよ決まりですかね。桃井さん、黒子(カレ)の対策もあったんでしょう?どうします?」

「さつき…」

桐皇のベンチに座るナミが、心配そうに桃井を見た。

「…いえ
もう必要ない…
と思います」

彼女は諦めた様子だった。ショックを受けているようにも見える。

光を失った影は、消える

99:お香しゃちょー◆kk:2018/03/18(日) 04:21 ID:u5k

「オイオイ、すんげーな火神(あいつ)
人でも殺◯すんか?」

「ええ!?」

若松の言葉に桜井がビビる。今の火神を見れば、冗談だと思えないのも仕方ないだろう。

「今まで青峰とやった奴はみんな、才能の差に諦観するか、茫然とするか。どっちにしろ、意識消沈てカンジだったんだけどな
オレだって正直、味方じゃなかったら分かんねー。けどアイツはあんだけやられてなお、つかむしろ今まで以上に

ほとばしってんぞ

怒りが

諦めるどころか、やり返す気マンマンだ。あんな奴初めて見たわ」

チラリ、とだけ青峰が火神を見る。静かに怒りをあらわにする火神はまさに、殺気にあふれていた

(落ちる…!
撃たされただけだ…DFは青峰を止められない上にOFは桃井のせいで全部読まれてる…!)

日向の読み通り、先ほど日向が撃った3Pはゴールに入らなかった。

ーーーー

「…終わったな…」

「さっきから一方的だ。見てらんねーよ」

「40点差…どうあがいても…ムリだ」

(マジで手も足も出ねー。黒子もとっくに限界だ。…むしろコガに変えた方がいいんじゃねぇのか?)

日向さんは分かっている。だけどまだ、アイツは諦めていない。

「思ったより早かったな
もう決まりだろ」

テツの前に立つ大ちゃんは、嘲笑うかのようにテツを見ている。

「自慢のパスも通じず、体力も尽き、火神(光)もいない。ミスディレクションもとっくに切れた。もはや並の選手(プレイヤー)以下だ。

オレの勝ちだ、テツ」

「…まだ、終わってません」

「バスケに一発逆転はねぇよ。もう万に一つも…」

「…可能性がゼロになるとすれば、それは諦めた時です
どんなに無意味と思われても、自分からゼロにするのは嫌なんです

だから諦めるのだけは絶対
嫌だ!」

彼の言葉で、チームの士気が上がった。そうだ、テツは諦めの悪さだけはキセキの世代No.1だ。こんなところで諦めるわけがない

(ったく、そりゃ代えらんねーわ
一年坊主のヤル気に
オレらが負けるわけにはいかねーよな)

「コラ、ベンチ!お通夜か!もっと「声だせ!!最後まで!!!」

コガが、ベンチで諦めていた一年の肩を掴んだ。

「中の選手が諦めてねーんだぞ
黙ってみててどーすんだ」

その一言で、ベンチの声も戻った。

「1点でも多く縮めるぞ。走れよ、最後まで」

「当たり前だろ」

日向さんの言葉に、俊くんや水戸部さんが頷く

「…一つだけ認めてやるわ。
諦めの悪さだけは」

誰一人、諦めず

全員が最後まで戦った

それでも点差は開き続けた

(次は…次は…勝つ!)

涙は出なかった

その日、それほど誠凛高校バスケ部は圧倒的に

ーー負けた

100:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 04:48 ID:u5k

「行くぞ黒子。整列だ」

「…はい」

大ちゃんとテツは、握手をすることなく整列した。

「112対55で桐皇学園の勝ち!!」

「礼!!」

『ありがとうございました!!!』

あたしも一人、客席にいる涼太くんの元へ向かう。

ーーーー

「涼太くん、真太郎」

「ナミっち!」

急いで戻ると、まだ2人はいた。

「…こんな試合を最後まで観るなんてオレもどうかしているのだよ。じゃあな、黄瀬、ナミ」

「早っス!」

「ちょっとはショックとかないのー?この結果に」

そう言うと、真太郎は目線だけをこちらに戻した。

「オレの心配などするぐらいなら、黒子の心配をした方がいいのだよ」

「「え?」」

「スコア以上に…青峰に黒子のバスケは全く通用しなかった。精神的にも相当なダメージだろう
しかも誠凛はまだ若いチームだ。この修正を一晩でするのは、容易ではないのだよ。残り2試合に、影響がなければいいがな」

ーーーー

二日後、涼太くんの部活に付いて行くと中で一人、笠松先輩が練習をしていた。

「あら?」

「センパイ?」

「あ?どうしたんだオマエら。決勝リーグ最終戦、観に行ったんじゃねーのか?」

「行ったっス。つーかそれよりセンパイ
1対1(ワンオンワン)しないっスか?」

「あ?
やだよなんだよ急に!!」

「いやーなんか、ムショーにバスケがしたくなったんス」

「あたしも!ムショーにバスケが見たい!」

「つか結果はどうだったんだよ!!」

「センパイ先攻でいっスよ!
いてっ!!」

すると、涼太くんのアゴに笠松先輩が蹴りを入れた。

「聞けよ!!やらねーよ!!なんなんだオマエら!!」

ーーーー

誠凛バスケ部は残り二日、全力で挑んだ

しかし桐皇との戦いの爪痕は確実に残っていた

火神ちゃんの欠場、チームの不協和音

そしてテツの突然の不調

今までチームを何度も救ったパスはミスを連発し、見る影もなかった

満身創痍で最後まで戦うも

二日目、対鳴成高校

ーー惜敗

三日目、桐皇学園が全勝。しかし誠凛が勝てば3チームが一勝二杯で並び、インターハイ出場への可能性が残る(その場合、得失点差で判定)

全てを懸けて挑んだ最終戦

それでも、挑む者全てが

勝者となれるわけではない

誠凛バスケ部は負けた

そして

誠凛高校のインターハイへの挑戦は終わった

ーーだが、全てが終わったわけではない

終わるということは同時に

相田リコ:ごめん、負けちゃった。

始まりを意味する

ーーつまり

「そっか…間に合わなかったか…」

木吉鉄平:でも、これで終わりじゃないだろ?

新しい挑戦へーー

101:お香しゃちょー◆kk:2018/03/18(日) 16:22 ID:u5k

「じゃあ涼太くん、ちょっと行ってくるわね」

「駅に着いたらLINEしてっス。迎えに行くっスよ」

「はいはい」

あたしは、海常のマネージャーではない。もちろん、なるつもりもない。…合宿の時とかは別だけど

プルルルル プルルルル

『もしもしー?』

「あ、もしもし?あたしよ。東京に着いたからちょっと迎えに来てくれない?」

『あーい』

このままじゃ、あたしは女帝の眼(エンプレスアイ)を使いこなせない。

使いこなすには、それなりのバスケの知識が必要だ。

ーーーー

「おまたせー」

「そんなに待ってないから大丈夫よ。それで、話は付けてくれた?」

「おう。大坪さんと監督の許可もバッチリ!」

「ありがとう、和成」

あたしが向かうのは真太郎、和成がいる王者・秀徳高校

そこで少しの間、練習を見させてもらうのだ。涼太くんには秘密にしてるけど、簡単に言うと夏休みの間だけ秀徳のマネージャーをする。

「ナミ連れて来ましたー!」

「はじめまして。海常高校から来ました、ナミです!夏休み中、皆さんのバスケを見させていただきます」

和成に続いて体育館に入り、そして頭を下げて自己紹介をする。

「オレは主将の大坪だ。よろしく」

すると、大坪さんに握手を求められた。素直にそれを握り返す。

「あたしは海常生ですけど、海常に秀徳の情報を流すなんてことは絶対にしないので、安心してください」

むしろ黄瀬涼太が最近ウザイから、海常の情報を流してやろうか。…いや、笠松先輩たちを裏切るわけにはいかないわね、うんっ

「どういう風の吹きまわしなのだよ、ナミ。あれほど帝光でマネージャーを嫌がっていたお前が、他校でマネージャーなど…」

「いーじゃない!あたし、前から秀徳って気になってたのよ〜。ね?和成!」

「え、そうなの?」

「そうなのよッ!!」

涼太くんとさつき以外に眼のことを言うつもりはない。まあ、秀徳が気になってたのは事実だ

「よし、練習始めるぞ!!三日後は合宿だ!」

とりあえず、見せてもらおう

王者の練習を

102:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 17:26 ID:u5k

あたしは今、学校までの道のりを歩いている。隣にはラッキーアイテムであるアイドルのうちわを持っている真太郎。

夏休みの間、秀徳にお世話になることになったあたしは朝に真太郎に電話で叩き起こされて、和成に借りた秀徳のバスケ部のジャージを着て真太郎と学校に向かう。

「ねえ、あんたホントに和成と学校は行ってないの?」

チラリと真太郎の顔色を伺いながら言う。

「あいつといつも一緒だと思うな。それに、今日の蟹座のラッキーパーソンはオレンジ色の髪をした友達だったからな」

え…何それ、おは朝鬼畜すぎじゃない?オレンジ色の髪とかそんなにいないわよ?世の中の蟹座のやつ今頃困ってると思うわ

などなど色々考えたが、そもそもあの鬼畜占いをまともに信用するのなんてコイツしかいないだろうという考えに行き着いた。

「というか、あんたに友達ができるなんて、和成も物好きよねぇ…」

「友達じゃない。下僕なのだよ」

「あんたね、そんなこと言ってるからあんまり友達ができないのよ。征十郎を見習いなさい。あいつ、親しくない奴等は全員ジャガイモにしか見えないけど、ちゃんとジャガイモとも接してあげてるよとか言ってたわよ?」

「意味が分からないのだよ。とりあえず、あいつは洛山でも相変わらずなのは分かった」

なんやかんや話をしていたら、前方から蜂蜜色の髪をした男が此方に向かって歩いて来た。

「よぉ緑間」

「どうも、宮地先輩」

真太郎の先輩で、あまり話したことのない宮地先輩だ。ちなみに、なかなかイケメンである

「あ、うちわありがとうございます」

「おう。いやーやっぱみゆみゆ可愛いな…お前絶対汚すんじゃねぇぞ!汚したら軽トラで轢く!」

「はぁ…はい…」

なんかいつも堂々としてる真太郎が圧倒されてる…この先輩、できる!

あれ、てかこの会話聞くかぎりじゃ…このうちわって先輩のってこと?うそでしょ!?やっぱ人って見かけに寄らないわね…

そんなことを考えてると、隣の2人は…

というか宮地先輩が一方的にその"みゆみゆ"とかいうアイドルについて語り始めた。

すごい白熱してる…1人で…

ーーーー

真太郎がチラチラと此方を見て助けを求めてきたのが面白かったので、少し放って置いたけど、そう言えば学校に向かってる途中だったと思い出した。

遅刻して怒られるのも嫌なので、仕方なく助けてやることにした

「真太郎、早く行きましょうよ」

あたしがそう声を掛けると、宮地先輩がバッと此方を向いて一瞬驚いた後、ヤバイという顔をした。

もしかしてこの人、あたしに気づいてなかったの?

(緑間ぁ!テメェふざけんじゃねぇぞ!なんでこの子がいるんだよ!!)

(はい…?)

(こんな可愛い子の前でドルオタなの晒しちまったじゃねぇか!)

小声で会話しているみたいだけど、すぐ隣にいるあたしには筒抜けだ。

「とにかく、練習に遅刻するからあたしたちは行くわよ」

真太郎の腕を引っ張ってスタスタと歩き始める。

「緑間ぁ!テメェ覚えとけよ!!」

「なぜオレのせいなのだよ…」

背後から絶対緑間轢いてやる、絶対緑間轢いてやると呪文のようなものが聞こえてきた。

物騒ね、と笑えば、笑い事じゃないのだよと小突かれた。

そう言えば…宮地先輩って雰囲気が誰かに似てる気がするのよね…

103:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 17:28 ID:u5k

マネージャーの仕事を終えてからは暇なので、真太郎たちの部活が終わるまで、ボーッと練習を見る

あたしは体育館内を見渡して目当ての人を探す。

「あ、いた…宮地先輩」

そう、あたしはあの宮地先輩に何かが引っ掛かっているのだ。出かかってるのに出ないのは、結構腹が立つ

宮地先輩をじーっと観察していると、彼は後輩たちをよく叱ってヒビられていた。

うーん…やっぱり誰かに似てる…

あっ…もしかして…

「やっぱ宮地先輩かっこいいよねー」

「そうそう!あの爽やかな感じがたまらない」

ギャラリーとしてバスケ部を観に来た人は結構いて、女子がキャーキャー騒いでいる。あたしは白けた目でそのうるさい女たちを見る

「やっぱ強豪校だから、見学する人って結構いるのね…」

帝光ではあまりにも多かったので見学が禁止になっていた。まあ、あたしは色々とコネがあるから極々稀に見学しに行ったら歓迎された。

そんなことよりあたしはさっきの宮地先輩が、あの人に似てるということを真太郎に話したい。

ーーーー

練習が終わって各々が自主練をし始めたとき、あたしは急いで真太郎のもとに走った。

ちょうど真太郎は水分補給をしていた。

「ねえっ、真太郎!」

「ナミか…まだ自主練があるのだよ」

「分かってるわよ!けどちょっと聞いて欲しいの」

興奮しながら話そうとしたら真太郎に落ち着け、と頭を叩かれた。

「あのね、宮地先輩って修兄に似てない?」

「虹村先輩に…?いや、似てない…」

真太郎は宮地先輩の方へ視線を移した。

「高尾!テメェふざけんじゃねぇぞコラァ!轢くぞ!」

「……言われてみれば似てないこともないのだよ」

「ほら!ね、あたしあの人と友達になりたい!いいえ、友達になってみせるわ!」

そう真太郎にそう宣言すると怪訝な顔をされた。

もう一度2人で宮地先輩の方を見る。

すると目が合った。

そして宮地先輩は頭をガシガシ掻いて此方にやって来た。

これはチャンスだわ!!

「あのー、お前朝に会った奴だよな…」

「そうよ」

「頼むからオレがアイドルオタクってことはバスケ部以外の奴には言わないでくれねぇか?」

「分かったわ…その代わり…」

あたしはニヤリと笑う。そのあたしの笑みを見て真太郎の顔が引きつった。

ーーーー

「なんだ?そんなことでいいのか?」

「ええ」

「あの…宮地先ぱ「真太郎は口出ししないで」

「じゃあ今から行くか。自主練も終わったし…」

「オレはまだ終わってないので、2人で行ってきて下さい」

「分かったわ」

「おう。ちゃんと家まで送り届けるから心配すんな」

「あ…はい。あの宮地先輩、先に言っておきます。










……御愁傷様なのだよ」

「は?」

104:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 17:31 ID:u5k

「何だったんだ?緑間のやつ」

あたしたちはある所に向かいながら話している。

「さぁ?…そんなことより下の名前聞いていいかしら?」

あたしの質問にそう言えば言ってなかったなと呟いた。

「3年の宮地清志だ」

「そう。よろしく、清志!」

「おい、ちょっと待て!色々ツッコミてぇーんだけど!」

清志はこめかみに青筋を浮かべた。

「なんでテメェ敬語使わねぇんだよ!あと、先輩つけろ!」

「え…嫌よ面倒くさい」

一言でバッサリ斬ってやったら片手で頬を掴まれてグイッと顔を清志の方に向けさせられた。バッチリ清志と目が合う。

「オレは礼儀がなってねぇやつ、大っ嫌いなんだよ」

「大っ嫌い……?」

あたしは目に涙を浮かべる。

もちろん、わざとである。

見なさい!!このあたしの完璧な嘘泣き!

「おう、嫌いだ……え?ちょ、泣くな」

「グスン…清志に嫌いって言われたぁ…」

清志は慌ててあたしの頬から手を離した。

うふふ、どうよあたしの演技力!神奈川にいる駄犬とかナミゾウはこれで一発なのよ!

…いたっ!あれ、今なんか目に入った!!

あれ?なんか超痛い…

やだ、ホントに涙出てきた!!!

「ちょ、悪ィ悪ィ。大っ嫌いって言ったこと取り消すから、頼むから泣き止め」

清志が背中をさすって慰めてくれてるけど、今はそんなことどうでもいいわ!

ーーーー

「ほら、デパート着いたぞ。荷物ぐらい持ってやるから泣き止め」

デパートと聞いて勢いよく顔をあげる。

そして今度は頭をポンポンと撫でられた。

そう、あたしがドルオタのことを周囲にバラさない代わりに、清志にショッピングの荷物持ちをしてもらう約束をしてたのだ。

いつの間にか、目に入ったゴミと思われるものは、たぶん涙とともに流れて痛くなくなっていた。

「じゃあとりあえず、この店とあの店ね。そのあとは三階のあそこの店で服買いたいし、新しいアクセサリーも欲しいのよね〜」

「はぁ?そんなに買えんのか?つーか荷物持つのオレだろ!!部活終わりだぞ!もっと遠慮しろよ!」

「ちょっと、これでも遠慮してあげてるんだけど?」

「まさか…緑間が言ってたのは…」

隣で頭を抱える清志を見て可哀想になった。

「はぁ…しょうがない。アクセサリーはまた今度ね」

「それでも多いっつーの」

ーーーー

「送ってくれてありがとね、清志」

「おー…」

「…ちょっと元気ないわよー?」

「誰のせいだと思ってんだよ」

「フフン」

笑ってんじゃねーよと額を小突かれたからムカついて、清志に抱き着いて思いっきり力を入れた。

「ちょ、テメェどこからそんな力が、いてててててっ」

痛がる顔に満足して力を緩めてやる。でもまだ抱き着いた手は離さない。

下から清志を見上げると目があったがすぐに逸らされた。

「ねえ、コッチ向いてよ」

「っ!?」

そう言うとぎこちなく顔が動いて、あたしと目をあわせた。清志の喉仏が上下に動いてゴクリと音が聞こえた。

「ナミって呼んで」

「は、はぁ?」

「だって全然名前呼んでもらってないもん…ねえいいでしょ?ナミって呼んでみて」

上目遣いで清志を見ると、清志は顔が赤くなった。

「な、…ナミ」

名前を呼ばれたのを聞いて、満足したので清志から離れる。

「よし、じゃあね清志!気をつけて帰るのよ!」

ぼーっとしていた清志があたしの言葉に我に返る。

「敬語とちゃんと先輩つけろ!許可した覚えはねぇぞ!」

「はぁ?なんて言ったの?」

と言い逃げして家の中に入る。

「明日会ったら絶対轢いてやるからな、ナミ!!」

清志の声が家の中に入ったあたしにまで聞こえたので、近所迷惑ねと思いながらぷっと笑った。

ーーーー

「ねぇ聞いてよ修兄!今日修兄みたいな人と友達になったわ!」

『ほー…お前と友達になるとか、可哀想だなそいつ』

「どういう意味よそれ」

『そのまんまだ』

「修ちゃん腹立つ!!」

『そのあだ名で呼ぶんじゃねぇーよ!』

105:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 17:45 ID:u5k

「し、真太郎…あっつい…」

「ちゃんと水分補給しろ、あとタオルを首に巻いておくのだよ」

バスケ部専用のバスから降りたら、あまりの暑さと強い陽射しでフラついたところを真太郎に支えられた。

今日から秀徳高校バスケ部で一軍だけの合宿がある。

あたしは合宿中だけ秀徳のマネージャーとして働く。マネージャーと言っても合宿中のご飯やドリンクを作るだけでいいと言われた。

「大丈夫か?ナミ、合宿所は目の前だ。早くいくぞ」

「清志、おんぶして?」

「せめて先輩つけろ!あと自分で歩け!轢くぞゴラァ」

「ナミ大丈夫か?荷物持つから貸せよ」

そう言ってあたしの荷物を掻っ攫った和成にお礼を言う。

ーーーー

「げぇっボッロー」

和成の声を聞いて目の前の合宿所を見上げる。

「…なんか虫がでそうなところね」

「虫ぐらい何処でもいるのだよ」

「イヤよ!あたし虫がいたら死ぬ!おばけとかの方がマシよ!!」

「おばけの方がマシなんだwww」

「そこの一年うるさいぞ」

「すみません大坪キャプテン」

タオルを持っていない方の手で大坪先輩に向かって敬礼する。

「なんかオレとの態度違いすぎじゃね?」

清志があたしを怪訝そうな顏で見る。

「当たり前でしょ。キャプテンは偉いのよ」

「なんだよ。どうやって手懐けたんだよ大坪」

「こいつを手懐けたかったら晩ごはんでも奢ってやれば簡単に懐きますよ」

真太郎が眼鏡をクイッと上げながらそう言った。

「別に今回の合宿は晩ごはん奢ってくれるって言ったから参加したわけじゃないわよ!?」

「晩ごはんでつられたんだナミwww」

「なるほどなー晩ごはん奢ってやるのかー」

「違うわ!清志が奢ってくれても先輩ってつけないから!」

「轢くぞてめぇ!」

まぁ、なんやかんやで楽しめそうね

ーーーー

「ナミ、早く来るのだよ」

「いやでも、虫があたしを待ち構えているかもしれないじゃない」

足元を警戒しながら真太郎と和成の2メートル後ろを歩く。

「おーい荷物こっちー!」

という清志の声を聞いて和成が返事をする。

「って、アレ?」

いきなり和成と真太郎が立ち止まった。

なんだろ?と思いながら2人に近づくと見覚えのある人物がいた。

106:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 18:54 ID:u5k

「どうも」

「なぜここにいるのだよっ!?」

「火神ちゃん!?それにテツも!」

勢いよく火神ちゃんに抱きつくと、火神ちゃんの隣りにいたテツも慣れたようにあたしの頭に優しく手を置く。

「なんで海常生のナミさんがここにいるんですか?」

「こいつは今回の合宿の臨時マネージャーだ。お前らはバカンスとはいい身分なのだよ」

その日焼けはなんだ!?と真太郎が火神ちゃんを指差す。

「ちょっと!もうみんな食堂いるわよ。何やってんの?」

ワイワイガヤガヤしてたら女の人の声が聞こえてきた。そちらの方に目を向けると包丁を持って服やエプロンを赤く染めたリコさんが立っていた。

その光景にあたしを含めた全員がビシッと固まる。

「あれっ?秀徳さん!?それにナミちゃんも!」

そう言ってそのリコさんがあたしに近づいてきた。ってゆーか、包丁持って近づかないで欲しい。恐怖だ。

しかしリコさんは、そのままつまづいた。そして持っていた包丁はこっちに飛んでくる

『ぎゃあああああ!!!』

それは間一髪のところで避けられた。やばい、心臓ばくばくする…!

「テヘッ♡滑っちゃった」

「テヘッじゃねーよ!!包丁持ったまま歩き回るなよ!」

「コエーって!しかも一匹仕留めてるよ!」

「きゃあああ!!ゴッ、ゴキがーー!!!」

壁に刺さった包丁は、Gを仕留めていた。虫が嫌いなあたしは、真太郎に抱き付く。

「熟練の殺し屋なのだよ…」

真太郎も少しビビりながら、あたしの頭を撫でた。

「カントク、包丁…きちんと洗ってくださいね…むしろ使わないで欲しいです」

ーーーー

ごはんの準備をしてドリンクを用意して、ついでにレモンの蜂蜜漬けを作って、あたしのやる事は終わった。

「終わったか、ナミ。じゃあ後は自由にしてていいぞ」

「ハーイ、キャプテン!」

よし、海に行こう。
足だけでも浸かりたい。

「ナミ、外に行くならちゃんとタオルを持って行くのだよ」

「分かってるわよ緑ママ」

「ブフッ!!緑ママwww」

真太郎の説教くらう前に体育館から逃げ出した。

後ろから真太郎の怒声が聞こえるがそんなもの無視だ。

タオルを頭に乗せてスキップで浜辺に向かった。

107:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 19:01 ID:u5k

「ん?」

浜辺に行くと砂浜にバスケのゴールがたっていた。

「あれは…誠凛の人たち!」

スキップしながら誠凛のみんがところへ近づく。あれ?リコさんがいないわね…

ちょうど休憩に入ったのか、みんなドリンクを飲み始めた。

「テツ!火神ちゃん!俊くん!」

あたしの声にみんなが振り返った。

「ナミさん」

「よぉ」

「ナミ!?」

「なんで海常のナミがいんだ!?」

日向さんの質問に火神ちゃんがあたしのことを説明する。

「へえー、臨時マネージャーか。オレらも臨時マネージャー付けとけばよかったな」

「俊くんだけのマネージャーになら、いつでもなるわよ?」

「あ、あのー、ナミさん?」

にっこりと微笑みながら、俊くんの腕に抱き付くと俊くんは苦笑いしながらも頭を撫でてくれた。

ーーーー

「お、ナミかー」

「…! 鉄平さん!」

久しぶりに見るその人に、俊くんから離れてバッと駆け寄る。

「木吉先輩、ナミさんを知ってるんですか?」

「中学の頃にコンビニで会うようになって、仲良くなったんだ」

「海常に行く決意も、鉄平さんがいたからできたのよ。」

「……そうですか」

「「……」」

何故だろうか。テツと火神ちゃんと俊くんの顔が少し険しくなった。まあ、すぐにいつもの顔に戻ったから気にしないけど。

「じゃあ練習頑張ってねー!」

そう言って靴を脱いでそこら辺に放り投げた後、海の方へ向かう。

今日は和成のジャージの下にタンクトップと短パンだったため、足が露わになっている。

「白いな…」

「火神くんエロい目でナミさんを見ないでください」

「み、見てねーよ!」

ーーーー

暫く海に足をつけて遊んでいたら、いつの間にか誠凛のみんながいなくなっていた。ドリンクとかボールはあるのでランニングにでも行ったのか。

海からあがってちょっとだけボールを拝借する。少しだけならいいかなと思ってタオルを置いて、そこら辺にさっき放り投げた靴の横に置いた。

ボールを両手で持って適当にゴールリングに向かって投げ放った。

ボールは綺麗な弧を描いてネットをくぐる。

さすがあたしね!

なんて思ってると背後からパチパチと拍手の音が聞こえた。

「あ、リコさん」

急いでボールを拾ってリコさんの元へ駆け寄る。

「さすがナミちゃんね。すごいわ、バスケやってたの?」

「やってないです。あたし、その辺の女子より少し運動神経がいいのよ」

「もったいないわね。いいもん持ってるのに」

「いいもん?胸のこと?」

そう言えばリコさんに胸を掴まれたんだと思い出した。

「ちがうわよ!」

「…っ、」

「あれ?どうしたのナミちゃん!目が座ってるわよ!」

あれ?なんだか頭がクラクラする…

「あ、カクトクとナミ」

するとちょうど誠凛の人達が帰ってきた。

でもあたしの身体は限界がきていてバタンと音を立てて倒れた。

108:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 19:06 ID:u5k

「あれ?ちょ、ナミちゃん!どうしたの!?」

「カントク何したんすか」

「何もしてないわよ!!」

倒れてたナミをみて誠凛の人たちは慌てる。頬が赤く、息も荒い。額からは大量の汗が流れている。

なんとも色っぽい姿にゴクリと喉を鳴らす音がいろんなところから聞こえた。

「熱中症かしら」

「そ、そうかもしれません…ナミさんはジャージを着ていたので…早く日陰に…あと水を…」

そう言い残して黒子が倒れた。

「黒子ぉおおお!?お前もっと体力つけろよ」

「うるさいです火神くん。あと僕にも水を持ってきてください」

ーーーー

リコは素早くナミに水を与えた。しかし飲みきれなかった水がナミの口から垂れて首筋をつたって行った。

その光景にまたもや、いたるところからゴクリと喉を鳴らす音がした。

そんなやつらをリコが部員をキッと睨みつけると全員が固まる。

「今から秀徳高校と練習試合だから、そのままナミちゃんを引き渡しましょ」

『練習試合ぃーーー!?』

「鉄平、ナミちゃんを運んで。あと水戸部くんはナミちゃんにタオルで日陰を作ってあげて。日向くんは黒子くんをお願い!火神くんは練習試合じゃなくて他のことしてもらうから」

リコの言葉に木吉がナミをお姫様抱っこをして、水戸部がタオルを持って日光を遮る。水戸部のもう片方の手はナミが脱いだ靴下が握られている。

火神は「なんで!?」と絶望していた。

ーーーー

練習試合する体育館に向かう途中、黒子がやっと復活した。

そして、体育館の扉を開ける

すると秀徳生の人達が一斉に此方を見た。

『ナミ!?』

みんなの視線は木吉の抱いているナミにいった。

「緑間くん、ナミさん熱中症みたいです」

黒子が緑間に声を掛けるとハッとして、緑間がナミをお姫様抱っこしている木吉に駆け寄る。

「迷惑をかけてすいません」

そう言って木吉からナミを受け取った。

「ブッ!真ちゃんがお姫様抱っこしてるwww」

「コラ高尾笑い事じゃねぇよ!刺すぞ!…緑間、大丈夫かナミ」

「大丈夫みたいです。もう少しすれば目を覚ますと思います」

そう言って緑間はナミをベンチに寝かせた。そして秀徳生がみんなナミに駆け寄る。

頬が赤くて息が荒い、さらには額から汗が流れているナミ。そして高尾のジャージから延びる白い脚。

誠凛のときと同様、何処からかゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。

「おいお前ら!変な目で見てんじゃねぇよ!轢くぞ!!」

そんな奴らを宮地が片っ端から成敗していく。

「高尾、お前もキモイ目で見てるのだよ」

「ち、ち、ち、ちげーよ」

明らかにどもった高尾を緑間が虫ケラでも見るかのような目でみる。

そしてみんなが落ち着いた後練習試合が始まった

109:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 19:10 ID:u5k

あたしが倒れてから目を覚ましたときは、秀徳と誠凛の練習試合があってら退屈だからもう一度寝た。

そして次に目を覚ましたのは真太郎と清志に起こされたときだった。

その後お風呂に入って、暇だったから真太郎を誘って外の自販機までジュースを買いに行った。

「ナミ、ちゃんと髪を拭くのだよ」

お風呂から上がったあと、面倒くさかったので髪を軽く乾かしてから頭の高い位置でお団子にした。

だからまだあまり乾いていない。

「大丈夫よ〜」

と言いながら駐車場を通って宿泊先に向かっていると、目の前でバスケのゴールと火神ちゃんが倒れていた。

「何してんの!?」

「おお、ナミか」

真太郎は火神ちゃんを睨みつけていた。

「んだよ緑間」

火神ちゃんは立ち上がってゴールを立たせた。そして真太郎を睨む。

「用などない。オレたちは飲み物を買いに出ただけなのだよ」

「あたしは真太郎に無理矢理付き合わされたわ」

と嘘を吐くと真太郎に頭を叩かれた。

「飲みもん?…よく夏にそんなもん飲めんな」

そう言って火神ちゃんは、真太郎が左手に持っているお汁粉を指差す。

「冷た〜いに決まっているだろうバカめ」

「そーゆーこっちゃねぇよ!」

2人のやり取りに笑いそうになって必死に堪える。

「まったく…お前には失望したのだよ」

「なんだいきなり!」

「オレに負ける前に青峰にボロカスに負けたろう」

その言葉に反応してしまった。

「ちょっと真太郎!」

真太郎の服を引っ張るが、真太郎はあたしを無視する。

「オレが倒す前にそう何度も負けてもらっては困るな…来い」

そう言って真太郎が左手のテーピングを外し、そこら辺に転がっていたボールを拾ってあたしにお汁粉を渡してきた。

もう知らないわ。お汁粉も飲んでやる!

そして真太郎と火神ちゃんの1on1が始まった

ーーーー

どうやら10本勝負らしい。あたしが記録をつけることになった。

「すごい…!真太郎」

今のところ真太郎が圧勝だ。

「やめた。このままでは何本やっても同じなのだよ」

「なっ…てめぇ」

「いいかげん気づけバカめ。お前を止めることなどたやすい。なぜなら、必ずダンクがくると分かっているのだから」

その言葉に火神ちゃんはハッとする。真太郎がアドバイスするなんて珍しいわね…

「行くぞナミ…あと高尾」

「和成?」

「あり?バレてた?」

なんと草むらの向こうに和成とテツが隠れていた。あたしはお汁粉を真太郎に返してテツに駆け寄る。

その間に真太郎と和成はスタスタと歩いて行ってしまった。何よ、こんなかわいいあたしを置いて行くなんて

「ナミさん、髪がまだ濡れてますよ。ちゃんと拭いてください」

「はいはい」

テツが言うなら仕方ない。あたしはテツから離れて、髪の毛をゴシゴシと拭く

「次の公式試合…なんだっけ?」

「WCです」

「そうそれ。……がんばって」

「お前は海常生だろ?オレたち応援していいのかよ」

真太郎に負けたからなのか火神ちゃんが若干イラ立ったような声で言った。

「火神くん、ナミさんに八つ当たりしないでください」

「……わ、悪ィ。そんなつもりなかった」

すごく焦っている火神ちゃんだが、あたしはあまり気にしてない。

「大丈夫よ。それにあたし、みんな応援してるの。海常生だけど、バスケ部じゃないあたしには関係ないわ。
友達を応援するのに、理由なんていらないでしょ」

「ありがとうごさいます」

「うん。あ、でも大ちゃんはボコボコにしてやって構わないわよ」

この前会ったとき胸揉んできてムカついたからという言葉は伏せておく。

それじゃ、と手を振って真太郎たちを追いかける。

「青峰とナミって仲悪いのか?」

「いえ、その逆ですよ。でも大方、青峰くんがナミさんを怒らせるようなことしたんでしょうね」

ーーーー

「真太郎!和成!」

「お、ナミ来た」

「…………おい、ナミ。お前から返してもらったお汁粉が空なのだが、どういうことか説明してくれるか?」

「げっ…ヤバイわ………逃げるわよ和成!」

「え、何でオレも!?」

「ナミィィィ!!!」

110:マッキー◆5A:2018/03/18(日) 21:36 ID:7Ts

どうも、中々いい感じの小説だね。サンジのもリクエスト良いかな?

111:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/18(日) 22:00 ID:u5k

なかなかって…褒められてんのかわかんねー(笑)
いいけど、書くの遅いっす(笑)

112:お香しゃちょー◆kk hoge:2018/03/19(月) 18:33 ID:u5k

「笠松先輩!みんな!!」

「ナミっち!!…ってそこは涼太くんって言う所じゃないスか?」

急いで海常高校の控え室に入る。駄犬が何か言ってるがそんなもの無視だ

今日はインターハイ当日。駄犬に見にくるようにと言われてたし、合宿の場所から近いということで見に行くことにした。

(今日はキセキの世代のスタメン同士の戦い…涼太くん対大ちゃん…!!)

涼太くんが大ちゃんに憧れてバスケ部に入ったことは何度も聞かされててから知っている。よく二人で1対1(ワンオンワン)をしていたことも…

そして、涼太くんが一度も大ちゃんに勝ったことがないことも

「や(り)ますよオ(レ)っ!!練習の成果を今こそっっ!!がんば(り)ますか(ら)っ!!マジでオ(レ)っ!!」

「は!?なんて!?」

やはりと言うべきか、このラ行が言えてなくて早口の先輩、早川充洋は、いつも通り暑苦しい

「だか(ら)っがんば(り)ますオ(レ)っ!!」

「あつっくるしーし、早口だし、ラ行言えてねーし、何言ってっか分かんねーよバカ!!」

バコッと笠松先輩が充洋を殴る。

「すんません!でもオ(レ)っ…」

「オイ森山!なんとかしてくれ、このバカ!」

笠松先輩がそう言うと、ストレッチをしていた由孝がこっちを見た。

「おお、ナミ!オレは今日、オマエのために戦うぞ…!!」

「無視かオマエ!そんで海常(ウチ)のために戦え!」

ヒラヒラといい笑顔でこちらに手を振る由孝に、苦笑しながらあたしも手を振る。

「センパイッ!!」

「あぁ!?」

すると、さっき控え室から出て行った涼太くんが笠松先輩に声をかけた。

「ファンの子からさっき差し入れもらったんスけど、食って大丈夫ですかね!?万が一何か入ってたら…」

少し困った様子を見せる涼太くんに、なぜか無性に腹が立ってので、そばにあったスクイズを涼太くんの顔面にめがけて投げる。もちろん命中した。

「食ってできれば死◯ね!!」

笠松先輩も目を釣り上げて涼太くんを蹴る。

ーーーー

「どいつもこいつも…つーか集中させろ!!」

笠松先輩がキレていると、ガチャっとドアが開いた。

「オイ、お前ら準備はできてるか。もうすぐ入場だぞ」

「監督!あたし、ベンチで見た…い!?」

「気合い入れていくぞ。
それと朱崎、ベンチで見るのはいいが周りに迷惑はかけるなよ」

((なんで桐皇のイケメン監督に張り合ってんだオッサン!))

あぁ、あたし今、笠松先輩と同じツッコミを入れた気がする…

だって小汚いただのオッサンが、ピッチピチのスーツ着て髪の毛も整えて、ひげも剃ってるのよ!?

「ゲームプランはさっきのミーティングで話した通りだ。あとは集中力高めとけよ」

笠松先輩はツッコミに疲れていたが、あたしたちは面白くて笑うのを必死に堪える。

ーーーー

「黄瀬、あと五分になったら呼べ」

「あ、はいっス」

そう言うと笠松先輩は、そのまま控え室を出た

「やっぱセンパイでもキンチョーするんスねぇ…」

「そうね…」

「まあ
それだけじゃないがな…あいつは」

「「え?」」


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