それは炎から生まれた。全てを焼き、汚し尽くす禍々しきプロメシュースの火。全ての命を刈り取る死の輝きの中で、"それ"は神のごとき獣となった。もう、誰もヤツを止められない。
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それは星から生まれた。この宇宙にただ一つの、青き命の星。絢爛たる極彩色の翼、優雅なるそれはしかし強者であった。青き星で共に生きる、全てのもののため……"それ"は守るために、戦う。
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それは闇から生まれた。眩い星々と、それさえ包み込む果ての見えぬ宇宙。そして"それ"は黄金に輝く姿であった。己より眩きもの、また己に影落とすものは有らずと嘯くがごとく。伏して拝むがいい。黄金の終焉を。
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そして、一人の男が異世界に召喚された。その過酷な運命を、己ばかりか神さえ知らぬままに。
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GODZILLA-Raging Giants-
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副題:異世界でチート能力で無双でハーレム!のはずが……!
Chapter1:選ばれし男
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炎に沈む村落に、怒号と悲鳴が飛び交っている。村中に転がる村男達の死体を踏みにじり、"戦利品"を携えた人型の怪物たちが我が物顔で闊歩していた。戦利品……村中の女子供は怪物たちによって広場に集められる。怪物は一番小さな者でも人の2倍はあり、屈強な肉体と不気味な緑の肌、そして棍棒に腰簑だけという野蛮な姿は却って原始的な恐怖を煽り、もはや男なき村人達の抵抗心を削いでいた。
「グググ……久しぶりの収穫だ。食ってよし売ってよし……アレもよしだ!グハハハハ!」
「ざっと80人!これほどの収穫は始めてですぜ親方!」
一際大きい"親方"と帳簿片手に皮算用を繰り返していた小物が下卑た笑いを響かせ、他の怪物たちも"戦利品"の使い道に舌舐めずりしてにやけていた。女ばかりを生かしたのだ、その使い道など決まっているようなもの。村人たちは行く末を嘆くか、神にでも祈るしかなかった。震える声で、小さな子供が呟く。
「……かみさま、ママのいうことききます。いいこになります、すききらいもしません……みんなをたすけて……!」
その時であった。囲いを割って怪物が入ってきた。しかし全身傷だらけで、焦ったように声を詰まらせ何かを伝えようとしている。
「どうしたい!ビクビクしてねえでさっさと喋らねえか!」
怪物の親方が苛立ちながら一喝する。
「に、逃げ……化けも、の……。」
しかし、全てを伝えきる前に傷だらけの手下は事切れ地面に突っ伏した……その瞬間、亡骸をごく鋭利な刃物で斬られたような幹竹割りとされながら。
「ぬぐっ!?……化け物だァ?俺達ァトロールよ!俺達以上の化け物なんざァいるか!ふざけやがって、どこの野郎の仕業だ!」
「俺だよ。」
怒り心頭のトロルの親方に応えたのは、よく澄んだ若い男の声だ。トロルたちが声の方へ振り向いて道を空ければ、声の主の姿が露になる。
声に違わず凛々しいそれは、金の刺繍を裾に施した黒いコートを纏っていた。線の細い体つきと中性的な容姿は、ともすればどこか女性的ですらある。己の背丈に匹敵する、艶やかな竜のエングレービングを施された大剣を突きつけて冷笑する。
「来いよ。お前達を掃除しに来たんだ。……まぁ、退屈な結果になりそうだが。」
【続】
「人間のガキが……ふざけやがって、やっちめえ!」
トロルの親方の号令と共に、部下のトロル達がコートの若者を取り囲み、一斉に襲いかかる。
「ふん。」
若者が無造作に剣を振るった様に見えた直後、一迅の風が通り過ぎた。若者は大剣を背に収めれば、風圧に怯んだ小物トロル達を尻目に囲いの外へ出て、トロルの親方の元へ歩いていき。
「……な、何してやがる野郎共!人間のガキ一人に何を……。」
「ああ、無駄だよ。あとはあんただけだ。」
「なっ―――」
若者が指を鳴らす。直後、小物のトロル達は一瞬で細切れの肉片に変わった。
「おのれいっ!捻り潰してくれるわ!」
しかしトロルの親方もこの程度で諦めたりはしなかった。先程部下が全滅したのも何かのトリックに違いない、一対一なら人間、それもこんな若造に負けるはずがない……が、トロルの親方の慢心は裏目に出た。
「"滅殺(バニッシュ)"」
トロルの親方が目の前に来たとき、若者が小さく呟けば閃光が走った。トロルの親方は腕だけ残して、跡形もなく消滅していたのだ。それは5分に満たない一方的な虐殺であった。若者は捕らわれの村人たちへ近寄れば、再び小さく呟いて不可思議な術を発動し、彼女らの拘束を破る。
「安心してください。他の連中は俺の仲間が片付けています。もう、奴らに怯えることはありません。」
若者は優しげに語りかけ、暫くして村人達の感謝の嵐に揉まれた。抱き着かれ、拝まれ、接吻され……。困った顔をしながらも、満更でもない様子の若者であった。
【続】
同じ頃、村の外でも動きがあった。
「はあっ……はあっ!ヤツは追ってきてるのか!?」
「いや、見えねえ!撒けたんじゃねえか?」
「何にせよあんな化け物と戦えるか!逃げるが勝ちよ!」
下っ端のトロル達が一目散に村を後にしている。見張りとして、村の出入り口を見張っていた別動隊であったが、黒コートの若者に蹴散らされ仲間を見捨てて逃げ出したのだ。幸い、若者が村人の救出を優先していたこともあり逃げるチャンスはあった。……だが、彼らの幸運は既に尽きていた。寿命が多少延びたに過ぎなかったのである。
「はあっ……この辺りまで……逃げれば……ん?ありゃなんだ?」
道中の森の中で立ち止まり呼吸を整えていると、トロルの一人が何かに気付いた。トロル一行が指差した先には、小さな人影が見える。身長は150cm程度、鍔広の大きな尖り帽子とローブは共に黒く、金の刺繍が施されている。赤い宝玉の付いた杖を携えたそれは、典型的な魔女の姿をした少女であった。
「ひぇ……い、いた……本当に来ちゃった……」
魔女はトロルの一団を見つければ、肩を竦め震える声で呟いた。そんな魔女の様子を見て、トロル達は揃って邪悪な笑みを浮かべた。
「ぐへへ、こりゃあいい土産だぜ。」
「あんな目にあったんだ、ちっとばかしいい目見てもいいよなぁ?ぐひゃひゃひゃひゃ!」
「い、嫌……来ないで……来ないでったら……!」
魔女は怯えて後退りつつも杖を突き出し、祈るように目を閉じる。トロル達はじりじりと距離を詰め、餓えた目付きをギョロつかせながら舌舐めずりする。
「へへへ……心配すんなよお嬢ちゃん、可愛がってやるからよぉ……!」
「きっとハマっちまうぜぇ〜?ひひひひひ!」
トロルが少女に触れようとした、その時であった。
「来ないでって……言ってるでしょぉっ!"フレアボール"ッ!」
トロルに向けられていた杖から、ごう、と音を立てて火球が放たれる。ほぼゼロ距離、外しっこない。
「ごああああっ!?……あ……ぁ……。」
「な……!こ、このガキぃっ!優しくしてりゃいい気になりやがって!」
火だるまとなり事切れていく仲間を見れば、先程までの剥き出しの情欲は引っ込めて棍棒を手に魔女を取り囲む。
【続】
「よそ見していて良いのか?」
「え?」
魔女とは違う女の声が尋ねると、魔女の背後に回ったトロルの首が飛んだ。声の主は首なし死体を蹴り倒し、包囲の中にに躍り出て魔女の背を守るように立った。それは魔女よりも頭二つは高い長身の女である。手甲や足甲、胸当てなど最低限の鎧しか持たない軽装の騎士である。
「危なくなったら呼べと言ったのに。大人は頼るものだぞ。」
「わ、私だって大人だもん!もう14よ!」
不満げな魔女と対照的にその体は成熟に恵まれ、軽装と相まってトロル達の情欲を多少誘った。……だが、立て続けに二人もやられた屈辱と怒りがそれを塗り潰し、トロル達は怒声を浴びせかける。
「やいやいてめえら!このまま帰しゃしねえからなぁ!」
「たった二人でこの数相手にどうしようってんだ!」
「大人しくすりゃ精々高く売ってやるぜ!」
しかし、女騎士は平然とし、魔女はおえ、と舌を伸ばして引いていた。」
「その言葉返そう。……"たったこれだけでどうしようというのだ"?」
「下品な発想……だから悪者になるのよ。」
直後、こちらでも虐殺が始まった。女騎士はその場から一歩も動かず、襲い来るトロルを切り捨て、或いは受け流して後ろへ転倒させるなどして、その接近を許さない。一方の魔女も、凍結魔法で地面を凍らせて敵の動きを封じ、そこに再び火球魔法を降り注がせ焼き払った。混乱の内に、トロル達は亡骸となって転がっていった。一段落付いたころ、二人の女は休息に入っていた。……死体のど真ん中で。
「あーしんどい……数ばっかりは多いから疲れちゃった。」
「体を鍛えろ体を。悪くないものだぞ?」
「貴女こそ最も頭を鍛えたら?」
「そう言うな、剣術を覚えるので手一杯―――っ!」
「えっ?」
何かに気付いた女騎士が飛び上がるように身を起こすが、遅かった。死に損ないのトロルが、魔女に飛びかかっていくのが見えた。
(くそっ、間に合わんっ……!)
「"ブレイズメテオ"。」
だがトロルはその本懐を遂げぬまま、突如現れた巨大な火球に弾き飛ばされながら炭化し、今度こそ絶命した。先の"フレアボール"よりも強力な炎魔法を見て、女二人は表情を明るくした。
「チイト様!」
「チイト殿!」
チイトと呼ばれた男……トロルの本隊と村で戦った、竜の剣と黒コートの若者が、二人の視線の先にいた。
【続】