______ねぇ、少しは成長した?
“Collaboration‼”
これは、誰かと誰かが初めて出会った記念の物語です。
ドイツのとある家にて。とある晴れた日の午後、赤毛の少女はその快晴の空を窓から見上げて、目を輝かせました。
「ねえママ、少し散歩に行ってきても良い?」
ここは、赤毛の少女___リリアーネ・スーゼウィンド(通称リリ)___が暮らしている家です。リリは、小学四年生でとある秘密を持っています。
「いいわよ。気をつけて行ってらっしゃい」
「分かった。行ってきます!」
ママに許可を貰いニコッと笑ったリリは、勢いよく外へ飛び出しました。そして大きく伸びをします。
「う〜ん、いい天気。ボンサイも連れてくれば良かったかも!」
ボンサイとは、リリの飼い犬のことです。リリとはとても仲良しでとてもやんちゃです。
しばらくリリが散歩をしていると、目の前に公園が見えてきました。
「こんなところに公園なんてあったっけ…?ちょっと寄り道して行こう!」
ぱっと目を輝かせたリリは、見知らぬ公園へと走り出しました。
(ん…?)
走っている途中でなにやら不可解な現象を見つけ、リリは一度立ち止まりました。公園の奥で何かが光っているのです。
「なんだろう?」
リリが公園の中に入り駆け寄ると、その光の正体は、金色の扉でした。とても幻想的なその扉に、思わず目を奪われます。
「…でも、どうしてここに扉が?」
リリは首を傾げ、誰か他の人を呼ぼうか考え込みます。
「でも、その間にこの扉が消えちゃってたらどうしよう…」
リリはこの不思議な扉にとても興味を持っていました。
この扉の向こう側には一体なにがあるんだろう?普通に今いる公園があるのでしょうか?それとも……こことは別の未知の世界?
まさか、それは有り得ないだろうとは思いながらも、リリは小学四年生。ファンタジックな物に憧れる、そしてそれを信じたい年頃です。
……それ以上に、リリにはある予感がしたのです。何か素敵なことが待ち受けているような、そんな予感が……。
「……よし!」
意を決したリリは、好奇心に逆らおうとせず、その金色の扉を開きました。その時、リリは不安など微塵も感じていませんでした。
金色の扉を開くと、通路が続いていて、中も金色で溢れていました。
「綺麗……」
リリはそう呟きながら眩しさに目を細め、前に進み始めました。
しーんとした空気の中、リリの足音だけがコツ、コツと響き渡ります。
しばらく歩くと、奥にまた扉が見えてきました。今度は銀色の扉で、これもまた幻想的です。
「出口だ!」
リリは叫んで、勢いよくその扉を開きました。
すると…。
目の前に広がったのは、リリが見たことのない古風な場所でした。
「わあ!まるで昔の街に来たみたい…。もしかして私、タイムスリップしちゃったのかな?」
リリは驚いて、辺りをきょろきょろと見渡します。住宅地の裏通りなのかな?人が少なく、幸いリリが突然現れたことに気づいた人はいなさそうです。
ふと耳をすますと、どこかから声が聞こえて来ました。ついでに何やら美味しそうな香りが漂って来ます。
なんだろう、と思って恐る恐る声のするほうへ近づいていくと、そこには沢山の屋台が並んでいて、沢山の人で賑わっていました。
「もしかして、お祭りなのかも!」
リリはそう仮定し、目を輝かせます。しかしその途端、お腹の虫がきゅるるる、と鳴りました。
「そ、そういえば、昼食を食べて結構時間が経ってる…!」
しかし、ただ散歩するだけだと思っていたリリは、財布を持って来ていません。
これはまずい。リリは顔を青ざめさせます。そして、リリは賑わう屋台を見つめながら、途方にくれていました。
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リリが食事の危機に陥ったその三日後。南街区のとある小さな診療所では。
「ない、ない、カルテが無〜い!」
15歳ほどにみえる茶髪の少女が、顔を真っ青にして叫んでいました。
少女の近くには、同年齢にみえる優しげな少年と金髪の少女があきれたような顔をして座っています。
ここは茶髪の少女、トリシアの診療所。トリシアは、魔法の力で人も動物も癒すお医者さんなのです。ここには毎日いろいろな患者がやってきます。
妖精やお人形、ドラゴンまで。トリシアはいつも大忙しです。
「もう!今日の分のカルテはどこ?レン、探すのを手伝いなさい!」
「えー!?」
レン、と呼ばれた少年は、思い切り嫌な顔をしました。彼は、トリシアの幼馴染で腕の良い魔法使いです。
「えー、じゃない!」
「分かった、分かったよ…」
トリシアに睨まれ、レンは渋々部屋の中を探し始めました。
「キャット、貴女も!」
「第二王女たるわたくしに物探しをさせるなんて何事ですか!仕方ないですわね」
もう一人の少女、キャット(本名キャスリーン)も、顔をしかめながらトリシア、レンに並んで探し始めました。
キャットは、この診療所が存在するアムリオン王国の第二王女で、トリシアの親友兼悪友です。
トリシアとレン、キャットはかつて、同じ魔法学校__月見の塔__で共に学んだ同級生でした。
「あ、あったー!良かった〜!」
トリシアはいきなり歓喜の声をあげました。どうやら探していたカルテが見つかったようです。
「全く、人騒がせな」
キャットは、そっぽを向いて鼻を鳴らしました。
頑張って下さい
8:奏◆/2:2019/09/30(月) 22:15 ID:3zE
>>6 誤字訂正『月見』→『星見』
>>7 ありがとうございます!
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「二人とも、ありがとう!見つかって良かっ……」
「トリシア!急患だ!」
それは突然のことでした。
トリシアが安堵した顔でレンとキャットに礼を述べているとき、いきなり診療所の扉が開いて、近所に住んでいる男性が慌てた様子で入ってきました。
背中には見知らぬ赤毛の少女が、青ざめた顔で気を失っています。
「どうしたの!?」
トリシアは緩んでいた顔を一気に険しくさせ、少女のもとに駆け寄りました。
「裏通りで倒れてるのをさっき発見したんだ!俺が来た時にはもうこの状態だった!」
「とりあえず、ベッドに寝かせよう」
レンが落ち着いた表情で男性をベッドに誘導して、赤毛の少女をベッドに寝かせました。
そしていざ、トリシアが診ようとしたとき。
「…う、ううん……」
少女から、うめき声が聞こえて来ました。
「あなた、私の声が聞こえる?」
トリシアは真剣な顔で彼女にそう呼びかけます。
すると少女が薄く目を開いて、トリシアの姿を捉えました。
そしてその視線をトリシアの後ろにいるレンやキャット、男性に移して、口を開きました。
「お腹すいた……」
「「「「…へ?」」」」
トリシアたち一同は、その少女、リリアーネの言葉に、呆気にとられ目をぱちくりさせたのでした。