閲覧ありがとうございます。
こちらは上海アリス幻樂団様の「東方Project」二次創作小説になります。
以下の成分が含まれますので、苦手な方はご注意ください。
◇オリジナル主人公、及び複数のオリジナルキャラクター
オリキャラ同士の絡みもあります。
◇残酷な描写
◇遅筆、不定期更新
◇見事な残念クオリティ
ご感想や改善点、誤字脱字などありましたら、お気軽にどうぞ。
厳しいご意見でも構いません。
何かお言葉をいただけると作者が泣いて喜びます
>>1
【重要】
早速ですが、注意書きに書き忘れていたことがありました・・・・・・汗
◇この作品は、
一部オリジナル設定や過去捏造設定
を含みます。
苦手な方はご注意ください。
◇チャットアプリ「東方トーク」にも同じ作品を投稿しております。
以下、小説本文になります。
しかし、《それら》は動いていた。
──話が違う。
彼女はあわてた。
長きにわたって彼女の内に巣食い、苦しめてきた《それら》 を封じる術。そんじょそこらの妖が扱うようなものではない。かの大賢者らが編み出し、霊験あらたかと謳われる代物である。決まった手順さえ踏めば、《それら》を完全に沈黙せしめる──はずだった。
ㅤ 体外に追い出すことには成功したものの、《それら》は動きを止める様子を見せない。まるで彼女を嘲笑うかのごとく、身体を小刻みに揺するのだった。
のこされた書物を読み込み、準備に準備を重ねた上で実行に至った。それなのになぜ──?いったいどこに不備があるというのだろう。
そんな疑問が脳裏を埋めつくしたのも束の間。答えをだす前に、彼女の思考は恐怖で上塗りされる。《それら》のうち、一番大きな個体が襲いかかろうと近づいてきたのである。
──やめて!来るな!
考えもなしに、手元にあった薬瓶を投げつけた。傍から見れば決して良い判断とは言い難い。むしろ逃げた方が賢明とも言えよう。彼女と対峙する《それ》は、もはや手に負えないほど凄まじい力を持つ存在なのだから。本来ならこの程度の足掻きなど、なんの足しにもならない。
ただ、今の彼女にそんな考えはなかった。
──もうここで終わらせなければならない。
とどめを刺せなかった焦りと、一刻も早く目の前の敵を消すという意思。それだけだ。
派手な音とともに中身が飛び散り、甘ったるい匂いが部屋を満たしたが、気にもとめなかった。
幸運にも、例の術によって弱まったのであろう《それ》には効果があったようだ。一瞬怯んだ隙を、彼女は見逃さなかった。
──こんなモノは、あってはいけない。
彼女は《それ》に更なる術をかけた。指先から紡がれる術式は、連なり繋がり鎖となった。逃れようと暴れるそいつを、固く絡めて縛ってゆく。《それ》が二度と現れないように。誰とも接触しないように。
──もう見たくない。
・・・・・・こわかったのだ。とめどなく湧き出て、わたしだけでなく、大切な人まで傷つけてしまう✕✕✕✕が。
気づけば手に石を握っていた。あの術に使った霊石の一つだ。本来戦いに使うものではないが、構わない。その切っ先を《それ》へと向ける。そして、やるべき事は一つ。
──さよなら。
まるで楔を打ち込むように。ありったけの力をこめて、彼女は石を《それ》の中心に突き刺した。
泣き叫ぶような断末魔が噴き出す。黒く濁った液体が、脈を打つようにあふれて、彼女の手を同じ色に染め上げた。今すぐ振り払いたいものだったが、手を止めるわけにはいかない。歯を食いしばり、奥へ奥へ霊石を押し込む。悲鳴も鼓動も次第に弱まっていき、今度こそ《それ》は押し黙った。
そして、何も聞こえなくなる。
彼女は、もう動かない《それ》を拾い上げる。すでに事切れている他のモノとまとめて、空へと放った。《それら》は幾筋もの光となり、彼方に散っていく。限りなく穢れた存在であるはずなのに、最期はどこか美しいとさえ思える光景であった。
事が全て終わるまで見届けたのち、彼女はぐにゃりと倒れ込んだ。安心からではなかった。
なぜか、体が動かない。手足に力が入らない。疑問に思い、自身を眺めた。
そこで今更、彼女は気づいた。
己の胸に、大穴が穿たれている。
どうして今の今まで立てていたのだろうか。痛みはなかったのだろうか。
力なく座り込んだ彼女の胸からは、とくとくと命が流れ出てゆく。ぽっかりできた空洞から漏れ出す錆びた赤。衣と、辺りを濡らしていくそれを、もはやどうすることもできない。
術の代償は、それだけ大きかった。
あとは、眠りの時を待つほかない。早い段階で分かっていれば、手を打つこともできただろうが。
仕方ない、と彼女は思った。望んだ形ではないものの、これも彼女が『望んだ』結果。甘んじて受け入れるのが筋だろう。
──次に目覚めたときは、きっといい日が待っているから。
少し笑って、彼女は目を閉じた。
心地よい鳥の声と風に揺れる草の音で、あたしは目を覚ます。草の中で身を起こすと、徐々に空腹感を覚える。だいぶ昼寝してしまったらしい。太陽はすでに南西の方に移っていた。
とりあえず帰って食べよう。今朝採った栗の入った籠(かご)を持って立ち上がる。
──っと、何か固いものを踏んづけた。足元の草の中にキラリと光るものがある。危ない危ない、鋏(ハサミ)を忘れていた。地面に立てたら腰まである、でかくて重いこいつ。ずっと昔から一緒の頼もしい相棒だ。これを使って木の幹に印を刻んだり、身を守ったり。山で暮らしていくには欠かせない。
鋏を拾い上げ、大きな伸びを一つ。そして、家に向かって歩きだした。
格子戸と屋根のついた、薄汚れた箱。高さはちょうど背丈くらい。これがあたしの家だ。
扉を大きく開けて身を乗り出す。一瞬、頭から何かに吸い寄せられる感覚。次の瞬間には、薄暗い空間に着地していた。手足をめいいっぱい伸ばして転がりまくれる程度の広さはある。雨風をしのげるし、夜もそれほど寒くない。朽ちた木の臭いを気にしなければ、寝泊まりするにはもってこいの場所だ。初めてここを見つけたときは、本当に驚いたものだった。
大きめの鍋を出し、水をたっぷり入れて火にかける。その中に昨日から水に浸しておいた栗を入れる。しばらく待てば美味しいゆで栗の完成だ。
その間、特にやることもない。気がつけば懐に入った丸く小さな板をいじくっていた。大分汚れてはいるものの、山の木々や石にはない、白く独特な光沢を持っている。これは〈オカネ〉と言うらしく、先日突然現れた〈人間〉と呼ばれる生物のものだった。
確か、日差しの暖かい昼だった。うちでうたた寝していると、彼らが四体ほどやってきた。同類なのか、山で見る他の動物より、姿かたちがあたしに近く、発する声の意味もいくぶん理解できた。少し興味が沸いたが、何をされるかはっきりしない以上、中から様子をうかがうだけにとどめておいた。
彼らは家の前に立ち、仲間内でひとしきり話をした。
話の大半は、山で取れる動物や植物についてだとか、麓に住む仲間についてだった。それによれば彼らは〈人間〉という種族で、山の下に群れで暮らしているそうだ。この四人は、家族や仲間のために、狩りに来ているらしかった。
そして、少しではあるがこの家についても触れていた。
──この箱は、〈ほこら〉と呼ばれる特別な箱で、〈かみさま〉というものが住んでいる。
要約すれば、大方このようなことを言っていた気がする。
この話を聞き、一つ疑問が生じる。
自分は果たして〈かみさま〉なのか。
残念ながら、あたしは誰にも会わず、ずっと一人で暮らしている。〈かみさま〉というものを見たことがない。それが何なのか、どんなことをするものなのか・・・・・・よくわからない。
帰り際に、彼らは片手ほどもある木の実やら、この〈オカネ〉やらを置いて帰っていった。
結局うちに何をしに来たのかは分からずじまいだった。が、少なくともあたしに対して敵意はない、という印象を抱いた。あれから木の実を食してみたが、毒はなかった。それどころかお世辞抜きに美味い。〈オカネ〉は食べ物ではなかったものの、人間社会において価値のある物らしい。
そんなことを考えながら、時折鍋をかきまぜたり火の調整をしているうちに、いい匂いがただよってきた。ゆで上がった栗を水で冷やし、栗の座から先端に向かって切っていくと・・・・・・いい香りの湯気と一緒に、見事な黄色い中身が現れる。一口かじってみた。
──ん!
持っている分を口に放り込み、知らぬ間に手を二つ目の栗に伸ばしていた。
今日のは特にほくほくで甘い。
あっという間に栗は腹の中へ消えていった。
異変に気づいたのは、食事が終わって横になろうとしたときだった。棚にしまってある皿がカタカタ音をたてて小刻みに揺れはじめたのだ。
何だろう?
耳をすますと遠くの方からかすかにずん、ずん、という音がする。少しずつそれは大きくなっていく。皿の音もまるで何かを警告するようにガタガタ・・・・・・ガチャガチャと激しいものに変わる。
何か・・・・・・こちらに近づいてくる?!
家を飛び出し、辺りを見回す。音は、ここからいくぶん離れた茂みから──その茂みが大きく揺れたと思うと、中から一頭の生き物が現れた。
黒く大きな体に、太くて短い肢。たしか人間が〈熊〉と呼んでいた動物だ。力は強いが木の実を食べ、人間はめったに襲わないとは聞いた。けれど、果たしてそうだろうか。全身に、特に口とかぎ爪あたりに赤黒いものがこびりついている。そこから生き物の死骸のものによく似た臭いを放っていた。
──こいつは危ない。
本能的にそう感じた。
熊のぎらつく目があたしをとらえる。家まで一目散に逃げ帰りたい衝動にかられたが、思いとどまった。下手に刺激してはいけない。怒らせてしまったら一瞬で八つ裂きにされるか、頭から食われるかのどちらかだろう。熊から目を離さず、ゆっくりと移動する。とりあえずこの場を離れたほうがいいと思った。数十歩隔たった所にある木の陰に身をひそめる。
よかった、幸運なことに熊は追ってこなかった。代わりに、先程出てきた茂みの方をやたら気にしている。
何かいるのだろうか?
熊が茂みにうなりはじめた。あの熊が警戒するとは、向こう側にいったい何があるのだろう。見つからないように体を木の幹に押しつけ、縮こまった。
突如、茂みから赤いものが飛び出し、軽やかに熊の前へと降り立った。
そこにいたのは、紅白の衣をまとった人間。それもかなり若そうな個体だったのだ。
な、何なんだこいつは。
派手な格好して、わざわざ食べられに来たのか。
こいつの神経がわからない。
人の子が危ないことは勿論わかる。でも助けない。そんなことができる力はない。逆にこちらがやられるだけだ。そもそも自分から熊の前に出てきた奴を、なぜ助けねばならないのだろう。襲われたら自業自得としか言いようがない。あたしは一切関係ない。
だけど、誰かが殺されるところは見ていて気持ちいいものではない。早く逃げないかな、と思いつつ様子を見ていた。熊がこの場を立ち去らないことには、帰れないのである。
しかし人の子は動かない。それどころか勝ち誇ったような顔で、
「やっと見つけたわよ、覚悟なさい」
戦闘の体制に入った。熊のうなり声が一段と大きくなる。
いやいやいや、怒らせてどうするの・・・・・・。
ますます理解できない。
一言で言って、どうかしている。
熊の背丈は、あたしの倍は余裕である。その真っ赤なかぎ爪は人の首も難なく刈り取れそうだ。一方人の子が持っているのは、四角い飾りのついた棒と数枚の紙。どう見ても勝てるわけがない。
熊が後ろ足で立ち、吠えた。かぎ爪が人の子に降り下ろされる──!
人の子のほうが早かった。左手の棒でかぎ爪を押さえ、残った右手の紙を投げつける。紙は熊に当たった瞬間爆発し、熊の体に焦げ目をたくさん作った。
熊は目を血走らせながら立ち上がり、人の子めがけて突進していく。人の子はとっさに飛びのき、棒をさっと横に振るう。いくつもの光る弾が空中から現れた。
速く動くものは、急に止まれない。
いくら屈強な獣と言えど、この原理に逆うのは不可能だろう。
突進の勢いを殺せず、熊は光弾の雨に突っ込んでいった。
大きな爆発。
熊はそこら辺の木々をなぎ倒しながら吹っ飛び、地面に落ちて動かなくなった。
爆発でたった砂ぼこりで思いきりむせた。そこで口が半開きになっていたことに気づく。鋏を持つ手も汗で濡れていた。揺れがおさまり、熊がもう起き上がらないのを確認して、あたしはおそるおそる家の方に戻る。あの強すぎる人の子もそのうちいなくなるはずだ。
おかしいな。家があるはずの場所に何もない。少し離れたところに横たわる熊とそれをじっと見つめる人の子がいるだけだ。そのすぐ横の地面は深く削りとられていた。熊との戦いでできたものだろう。飛び散る土にまじって角ばった木片があちこちに見える。
暫し考えたのち、ようやく理解した。
家、壊された。
……………。
…………………。
うわああああ何してくれたんだよ!
……と怒鳴りたいができない。ある程度人の言葉はわかるものの、なんせ他人と話したことがないのだ。声が出せるかすら怪しい。それにあんな人を怒らせたら、何をされるやら分かったものではない。だからその場に立ち尽くすしかなかった。
困ったなぁ。せっかく集めた食べ物はパーになったし、山の夜はとても冷えるのだ。また森の中で震えながら過ごさないといけないのか……はぁ。
そんなあたしに構うことなく、人の子はのんきに倒れた熊を観察していた。体の傷を棒でつついたり、紙をペタペタはってみたり。
不意に熊から茶色の気が立ちのぼる。ゆらり、と揺らいだかと思うとそれは濃縮しながら熊の体を離れ、そのままあたしの方、あたしの目の中に──
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