つい建てたけど……まだまとまった考えを持っている訳ではないです。
何か案がある方、コメントお願いします。決まり次第気楽にばんばん書きたいです。
※注:自分の文才を上げるためでもあるので、下手くそでもよろしくお願いします。
「ユニコーンさん」
これコピペ化して改変とかで流行らせようぜ
ネットde小説()の無意味さ
10年続けりゃ凄いけど
まぁせいぜい黒歴史にならないよう
頑張れヽ(´ー`)ノ
>>28
いいじゃん、人それぞれ趣味が違うんだからさ。無意味でも。
明日は午後に更新する。
31:匿名 hoge:2015/08/09(日) 22:23 >>30
ああ、スレ主…
お亡くなりになりましたか……
やっぱり小説書くのて難しいね
俺も頑張るは
「こんばんは・・・おじゃましますよー?・・・って、誰も居る訳ないか・・・」
少女は墓場の入り口にたどり着くと、おそるおそる中を爪先立って覗き込んだ。
墓場は不気味に静まり返っている。この空気と少女の白いワンピースは、ひどく場違いだ。
「はあ。早く夜が明けてくれないかな・・・」
墓場に入ってすぐ、少女は糸が切れた様に座り込んだ。いくつもある墓石の一つを背もたれ代わりにして寄りかかる。
墓場から見上げる空は、灰色の雲ばかりがたちこめて益々不気味だ。
「お化けでもでそう・・・」
黙っていると更に怖くなってしまいそうで、少女は独り言を続ける。
「ううっ。焼き菓子・・・」
少女が呟いたのとほとんど同時だった。
ガサッ
背後の茂みで物音がした気がする。彼女の体が一気に固まった。
ガサガサッ
「え・・・。ま、まさか・・・」
少女は涙目で振り返る。すると、黄色い二つの目と目が合った。
「う、うああああ!!」
そのまま悲鳴をあげ、墓石からはって離れる。少女は数秒深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。それからもう一度先程の茂みを見つめる。
「・・・・ん?」
茂みをガサガサといわせ、そこから姿を現したものに少女は驚いて叫んだ。
「へ・・・蛇・・・!!」
一匹の蛇だった。茶色と黒の斑模様をした蛇が、茂みから少女の前に出てきたのだった。
「こ、こんにちは」
毒があるかもしれないと、少女はそのまま苦笑いで蛇との距離をあける。
「シューッ、シューッ・・・」
蛇は真っ赤な舌を出した。そしてそのまま続ける。
「オ・・・・・イ・・・デ・・・」
「えっ?!!」
蛇が口をきいた。枯れ果てた声で。それだけでも驚愕すべきところなのだが、おいでとか何とか言われた気がする。
少女は反射的に返した。
「ひょっとして・・・キミがこのお墓のお化け??」
蛇は舌を口の中に引っ込めると、もう少女には目もくれず茂みの中に戻っていってしまった。
「・・・・・・」
少女は何も言えなかった。
雨に濡れても構わない、とにかくこの不気味な墓場を出て先に進もうと、力が入らない体で無理矢理立ち上がる。
「誰?!!!」
突然墓場に叫び声が響き渡った。少女が出した物ではない。
「うああああっ!!ご、ごめんなさい!!」
今度は反射的に謝っていた。少女はせっかく立ち上がりかけていたのに、驚いて腰を抜かしてしまった。
そんな少女の前に、人影が浮かび上がった。少女は尻餅をついたままその人影を見上げる。人影は逆に少女を見下ろして言った。
「わたしの墓場に、おまえは一体何の用?!」
女の子の声だ。少女の前には女の子が立っていた。だが少女よりかなり年上に見える。十七歳くらい。服装も少女とは真逆だった。
黒いワンピースだが袖の部分だけ赤くなっていて、靴もまるで葬式にでも参列していそうなものだった。長い黒髪だ。黒い瞳は今少女を睨み付けている。
「何の用?」
その問いに少女は困ってしまい、黙る。というより怖くて声が出ないのだ。彼女はただその女の子を見上げていた。
>>32
お!復活したか
長過ぎて読めないけど頑張るんやで
>>33
OK^^
「何の用?」
黒髪の女の子は更に少女を睨み付け、これで三度目となる質問をする。そこで少女はようやく我に返って、咄嗟に頭に思い浮かんだ事を言った。
「えっと、その………わたし、雨、嫌いだから……」
女の子は一瞬拍子抜けした様な顔になりった後、腰に手を当てて空を見上げた。
「雨なら滅多に降らない。この辺りは昼でも薄暗いから。特にこの墓場の空気は……」
と、そこまでで言葉を止め、意味あり気に薄笑いを浮かべた。ずいっと少女の眼前に顔を近付け続ける。
「……ずいぶんと不気味でしょう?」
少女はぶんぶんと縦に首を振った。それからふと疑問に思ったのか、恐る恐る女の子に訊ねる。
「あの、キミは……何者?」
女の子は少し考える様な仕草を見せたが、少女の質問には答えてくれた。
「ユミ。墓場の管理人。…この墓場は、わたしの物よ。大体不法侵入しているあなたの方こそ、誰なの?」
その女の子、ユミは少女を再び睨み付ける。少女は慌てて先程思い出した名前を教えた。
「わたしは、サファイア」
「さ、サファイア?……宝石の?」
相当痛い名前だと思ったのだろう。ユミは顔をしかめて聞き返してきた。少女、サファイアはさあ?と首をかしげる。
「そうか。あなたは家族達とかからはぐれてここに来た。そうでしょう?」
ユミは突然、なるほど、という顔で頷いた。
「さあ?」
だがサファイアはまたもや首をかしげる。ユミはまたか、とうんざりしてサファイアに立て続けに質問し始めた。
「何歳?」
「9才」
「お母さんやお父さんはどこいるの?」
「さあ?」
「出身地はどこ?それともこの辺りに旅行にでも来たの?」
「分かんない」
「通ってた学歴習得所とか覚えてる?」
「何それ」
「………他に覚えている事は」
「焼き菓子が大好きです!」
「………………」
これでは会話にならないと、半ば呆れ気味にユミは溜め息をついた。
「… これからどうするの?」
最後にユミは尋ねる。サファイアは座り込んだまま、うーん、と腕組みをして考えた。そして勢いよく笑顔で立ち上がる。
「まあ、いいや!しばらく寝れば、何かは思い付くでしょ!」
「寝るって……どこで?」
唖然とした顔でユミは聞き返した。
「ここで!一人なら怖いけど…このお墓管理人、ユミがいるから大丈夫だよね!」
サファイアの自信満々な笑顔を、今度はユミが黙って見つめる番だった。
頑張ってください
37:匿名 age:2015/08/11(火) 11:53 >>36
ありがとうございます^^
しばらく旅行で更新できない。
16日頃再び更新する。
「そういえば、ユミはこのお墓の管理人だって言ってたよね」
自分を呆れた様に見下ろすユミに対し、サファイアは訊ねた。やはり年の違いからか、立ってもサファイアとユミはかなりの身長差がある。
「そうだけど」
ユミは答えたが、サファイアは更に質問してきた。
「さっき私の事『不法侵入』って言ってたよね。じゃあさ、このお墓にお墓まいりに来る人は?不法侵入になるの?」
これにはユミは首を横に振る。
「そうはならないけど。でも、ここにはお墓参りに来る人なんて居ない。ここは忘れ去られた墓場だから」
サファイアはいまいち分からなかったが、適当に相づちを打っておく。
忘れ去られたお墓?そんな場所本当にあるのかな?
内心はこう疑問に思っていた。
「一夜明けるまでの短い間だけど、あなたの事は何と呼べばいいの?サファイアは、少し長いし....」
どうやらユミは、観念してサファイアを一晩この墓場に居させる事にしたらしい。サファイアは笑顔で答えた。
「何とでも!好きに略してくれちゃっていいよ!」
ユミは少し考えて、それから言った。
「じゃあ、マーガレット」
「ま、マーガレット?!」
これにはさすがに驚いて、サファイアは叫んだ。
サファイアとマーガレットには何の接点もないからだが、ユミは逆に困惑した様な表情になる。
「え?だって、サファイアと言ったらマーガレットでしょう?」
{2}
サファイアとしては納得がいかなかったのだが、ユミは頑としてマーガレットを譲らなかった。好きに略していいと言ったのはサファイアなので、それならばもう何でもいいやと諦めた。
先程の墓石に寄りかかって座り、サファイアはそういえばさ、と再び切り出した。
「ユミには居ないの?」
「何が」
ユミは憂鬱そうに返す。ユミはサファイアの座っている墓石の向かい側、そこより少しずれた位置に転がっている墓石の一つの上に立っていた。
サファイアは続ける。
「家族とか」
びくっと、ユミはサファイアの顔を見た。
「家族………」
そのままサファイアの顔を見て呟く。しかしその黒い瞳には、自分の顔を通り越して何か別のものを映そうとしているようにサファイアには思えた。
「居ないの」
「へ?」
突然返されて、サファイアは間抜けな声を出してしまった。
「家族」
ユミは寂しそうに、にこっと笑って答えた。
「…そっかぁ」
聞いちゃいけなかったのかな、と思いながらサファイアは言う。
しばらく静寂が続いた。
だが、ユミが再び口を開く。
「みんな、戦で死んだらしいの」
墓場の大木についた枯れ葉が、強い風でかさかさと揺れる音を聞いていたサファイアだったが、その声で我に返った。
「いくさ?」
聞き返すと、ユミは頷く。
「珀麗帝国との」
「はくれい??」
どちらもサファイアには聞いた事もない言葉だった。
サファイアは西地方の国の方が馴染みがある。サファイアの好きな焼き菓子は西地方の菓子だから、ひょっとしたら自分は西地方の出身なのかもしれない。自分の事については全く思い出せないが、西地方の国の名は少々言える。その自分が知らない国という事は、その珀麗帝国とかいう国は東地方にあるのだろうか。人間同士の争いも、西地方では『争奪』という。
「ねえ、ユミはどこの国出身なの?」
巡り始めた思考を一旦停止し、サファイアはユミにたずねた。
ユミは、相変わらず強風で揺れ続ける枯れた大木を見て答えた。
「………忘れたよ」
ちゅーにびょー
42:匿名 age:2015/08/16(日) 20:51 >>41
まだそれほど重症ではないと思う。
あれ?これって>>1に言ったのかな。
>>42
内容は知らんけどネット小説でここまで続けられる奴は久しぶりに見た
失踪するなよ(束縛)
>>43
ありがとうございます。
でも、私はまだ五個の小さいまとまりしか書いていませんよ。
こんなに早く失踪したら小説なんて言えませんしね。←謎のプライド
ファンタジー(になってるか?)ものです。つもりです。ぜひ暇潰しにどうぞ。
後、鼻から失踪する気はありませんので、よろしくお願いします^^
44のままは演技悪いな。
age
「さて、と」
ユミは突然立ち上がった。
「わたしもそろそろ墓場の管理人としての役目を果たさなくちゃね」
そのままどこかに歩き始める。
「え、ちょっ、待ってよ!」
サファイアは慌てて呼び止めた。ユミは振り返る。
「わたしを一人にしないで……こ、このお墓……普通のお墓よりずっと怖い……」
絞り出す様にそう言ったサファイアに、ユミは再び背を向けた。
「……じゃあ、着いてくれば」
そして歩き出す。
「えっ!ま、待ってよー!!」
サファイアもすぐに立ち上がってユミの後を追いかけ始めた。
今こうして見渡してみると、この墓場は意外と広い。あちこちに古そうな十字型の墓石が転がっていて、そのほとんどに苔が生えている。お供え物や花束が置かれている様子はない。
つまり、ここは本当に忘れ去られた墓場だという事だろうか。
サファイアはそんな風に思いながらユミの後に続いて歩く。
辺りには生暖かい靄がかかっていて、この墓場の空気を益々どんよりとさせていた。空には先程の荒れ地よりも灰色の雲が立ち込めて、墓場には全く日の光がさしてこない。おまけに枯れた大木に数羽のカラスらしき黒い鳥がとまって、ガー、ガーとくぐもった鳴き声を出していた。
ここは本当に不気味な墓場だ。
そこまでサファイアの思考が回っていた時。
ざっく、ざっく……
前方を歩いていたユミが、いつから持っていたのか彼女の背の半分以上あるシャベルで墓石の一つを掘り返していた。
どうやらサファイアがうわの空の内に、いつの間にかユミは墓場の管理小屋まで行ってこのシャベルを取ってきたらしい。
今は懸命に墓石を堀続けている。
「へ?!!…ユミ?!なんて罰当たりな事してるの!!」
我に返ったサファイアが叫び声をあげた。ユミはそこで一旦動きを止める。
「罰当たりって……大丈夫。彼らもこれを望んでいるから」
「彼ら???」
サファイアの問いに、ユミは答えた。
「地の底に眠る、古の亡者達よ」
「古の……亡者?」
サファイアの分かっていなさそうな顔を見てユミは説明してやった。
「ここは、遠く昔に造られた墓場の一つ。地の底には古き亡者達が眠っているの」
ユミの説明にサファイアは地面を足で軽くトントンと叩いて頷く。
「でもここを訪れる人間なんていない。そういう墓場に永く眠る亡者達は、心休まる場所を求めているから……」
ユミはそこで言葉を止め、足元に置いてあったもう一つのシャベルをサファイアに突き出した。
「手伝って」
「えっ?!」
「一晩わたしの墓場に居させてあげるんだから……。その恩返しだと思って」
サファイアは不満そうな顔をしていたが、諦めたのかシャベルを握り、ユミが掘り返している墓石を掘り始める。
「これは結構大変な作業よ」
ユミは懸命になってシャベルに力を入れているサファイアを見下ろして、にやりと笑った。
「うん。今日はこれぐらいで良いとしましょう」
墓石を10個ほど掘り返した時、ユミは満足気に頷いた。
「これ…どうするの?」
額の汗を出て拭いながらサファイアはたずねる。
「一つ持って」
ユミはよいしょと墓石を一つ持ち上げ、ぽかんとしているサファイアを振り返った。
「早く」
「う、うん」
サファイアも慌てて墓石を一つ持ち上げようとする。が、持った瞬間サファイアは墓石一つの重さを思い知った。
「ぐ………重い……」
「着いてきて」
うめくサファイアを尻目にユミはすたすたと歩き始めた。
「ねえ、まだ?」
額に汗を浮かばせて、よろよろと墓石を運びながらサファイアはユミに着いていく。ユミは墓場を出て、墓場の後ろにある暗い森に入ってもまだ歩き続けている。
「この辺でいいか」
ユミは突然足を止めると、辺りを見回してから墓石を静かに置いた。
「もう置いていいよ」
「ふぅぅぅぅっ……」
墓石をその場にずんっ、と勢いよく置いたサファイアは、たまらずその場に腰をおろす。
「駄目だよ。静かに置かなきゃ。………古の亡者達の祟りは、恐ろしいのよ」
「ごっ!!ごめんなさい!!」
それを聞いたサファイアがすぐに墓石に向かって土下座した。そんな様子を見て、ユミはくすくすと笑う。
「でも、休んでいる暇は無いの。だって、今日中に後8個もここまで運ばなきゃいけないんだもの」
「あっ!!そういえば、後8個もあるのか……ううっ…」
サファイアは森の木々を見上げて呟いた。
「おっ……終わったー!!」
最後の一つの墓石を置いたサファイアは、その場に勢い良く倒れこむ。
ユミとサファイアは、先程の暗い森に古く苔むした墓石を十個程積み重ね終えたのだ。
「お疲れ様」
ユミは涼しい顔で立っている。
「疲れてないの?」
サファイアが泥まみれの顔でたずねると、慣れてるからとユミは答えた。
「そっかー……墓場の管理人っていう仕事も怖いだけじゃなくて、すっごく大変なんだねー……」
サファイアの独り言にユミは苦笑する。
「でもこんな所に置いて、この墓石はどうなるの?」
サファイアは半分身を起こして、地面に積み重ねられた墓石に目をやった。
「天に帰る」
「へ?天に?どうやって?」
ユミは灰色の空を見上げる。
「この森にはわたしが去った後、神の遣い、聖なる馬が通るの」
「せ、聖なる馬??」
続けて疑問符を連発させるサファイアに、ユミは短く答えた。
「ユニコーンさんの事」
サファイアはユニコーンについて、伝説だけなら知っている。ユニコーンとは清浄な森に好んで生息し、神に遣えているという伝説の白馬だ。とは言っても何せ伝説。その数は極端に少ないらしい。
「こんな森に………」
サファイアもユミにつられて空を見上げた。
「ここをユニコーンさんが通ると、この辺り一面に空は澄み渡り、森の枯れた木々は息を吹き返す。森には鳥達の歌声が響き、あの墓場は古の亡者と共に天へと消える………」
「天にかぁ……」
サファイアは目を閉じて、ユミの言った情景を想像してみた。そして呟く。
「それはすっごく綺麗な景色に変わるんだろうねぇ……」
「……そうね」
ユミも頷く。
「いいなぁ……。そんな景色のお話、もっと話してよ、ユミ」
「それは……無理」
サファイアを向いて、ユミは悲しそうに首を横に振った。
「何で?」
サファイアは訊ねる。ユミはゆっくりと答えた。
「わたしは、その光景を見る事が出来ないもの」
{3}
再び墓場に戻ったユミとサファイアは、また先程の墓石の前に居た。
ユミは先程の墓石の上に立ち、サファイアは先程の墓石に寄りかかって座っている。
「さっきから、わたしばかりがあなたの質問に答えてあげてる」
突然ユミが口を開いた。
「ん?」
サファイアもユミの方、正面を向く。
「マーガレット。わたしの質問にも答えて」
ユミは言った。
「でも……………」
サファイアは困惑した表情になる。
「覚えている範囲でいいから。でも、なるべく思い出して。」
付け足しの言葉に、サファイアは小さく頷いた。
「まず…。あなたの出身地はどこ?」
サファイアは答える。
「国とか村の名前は思い出せないけど…。多分、西の地方だと思う」
「西………。じゃあ、家族とかは?覚えている?」
ユミは更に聞いた。サファイアはその質問に考え込む素振りを見せたが、少しして首を横に振った。
「……………ううん」
「何故ここの近く、あの荒れ地に居たのかは?」
サファイアはついに頭を抱えてしゃがみこみ、叫ぶ。
「あー、もうっ!!全然だめ!自分の事になると、ちっとも思い出せない!!」
ユミはやれやれと諦めた様に肩をすくめた。
「仕方ないなぁ。思い出せたらいいね、一晩の内に」
そんなユミをしゃがんだまま見上げ、サファイアは言った。
「でも………その前に……」
「何?」
何か言いたそうなその声で、ユミはサファイアを見下ろす。サファイアは続けた。
「……あのね、お腹空いたの」
「お腹空いたって………」
ユミが困惑した様な表情を見せる。
「だって、多分今日一日何にも食べてないんだよ?!」
サファイアは抗議した。そしてふと思い立った様にユミにたずねる。
「ユミはお腹、空いてないの?」
ユミは首を横に振った。
「わたしは、ものを食べないの」
「はぁ?!」
サファイアはその答えに驚愕し、思わずすっとんきょうな声をあげる。だが一瞬の間の後、すぐに笑って言った。
「なんだぁ……冗談か」
しかし、ユミは再び首を横に振る。
「本当。わたしは……14歳の時から、何も食べていないもの」
「何で?」
咄嗟にサファイアは聞き返した。
「分からないけど……お腹が空かない」
「ふーん……不思議だねぇ……」
ユミの答えにサファイアは信じられなさそうに首をかしげる。
「わたしは……墓場歩きになった、あの時から…わたしは……」
ユミは悲しそうにうつ向いて、ぶつぶつと独り言を言い始めた。
「ねぇ、でもわたしは空いてるの!」
それに気付かず、サファイアは大声で叫んだ。
「え?ああ……。じゃあ、お金は持っているの?」
ユミは我に返り、サファイアに聞く。
「えーっとね……」
サファイアは白いワンピースのポケットを探り、銀貨を数枚取り出した。
「ほら。持ってるよ!」
その銀貨は、この暗い墓場ではピカピカと光って見える。
「でも……この辺りには荒れ地ばっかり。町や村に行かないと、食べ物は買えないよ?」
不安そうなサファイアを向いてユミは自信有り気に、にやりと笑った。
「そうね。……でも、わたしはあなたを町まで連れていける」
「へ?」
サファイアは意味が分からないと言う。ユミは墓石から降りて、墓場の出入り口に向かって歩き始めた。
「え?!あ、ちょっと?!」
サファイアも慌てて追いかける。
出入り口の所でユミは足を止め、軽く膝を曲げ、体制を低くした。そしてきょとんとしているサファイアを振り返る。
「ほら、マーガレット。乗って。わたしの背中」
「へ?」
サファイアが間抜けな声をあげる。
「背負って行ってあげる」
ユミは今も体制を低くしたまま、サファイアを振り返って見ていた。
「背負って行くって…どれ位の距離があるの?」
サファイアが恐る恐るたずねると、ユミは平然とした顔で答えた。
「常人なら、歩きで四日はかかる位」
「四日…………」
サファイアは絶句する。
「でも、わたしは平気」
ユミは笑って続けた。
「良いから、早く」
「もう!どうなっても知らないからね!」
サファイアは呆れて叫び、渋々ユミの背中に掴まった。そしてその肩に手を回して言う。
「掴まったよ!」
ユミは前を向いて頷いた。そして再びにやりと笑う。
「マーガレット、舌を噛まないようにね」
「え?」
まだ訳が分からないという顔をしているサファイアを無視し、ユミはその表情のまま呟いた。
「………レットゾーン」
テスト期間なので、一週間程止めます。
53:匿名 age:2015/09/04(金) 22:46今日はちょっと無理なんで、明日更新する。
54:匿名 age:2015/09/05(土) 23:15 そして、ユミはふらりふらりと歩き始めた。
「ちょっと!こんな速さじゃ……」
サファイアが言いかけた時。
突然ユミが一気に加速し出した。
サファイアは驚き、言葉を失ってユミの足を見る。その足は、凄まじい速さで動いていた。
「どう?マーガレット!速いでしょう?」
「______!!!!」
サファイアは声も出せず、ユミの背中に必死でしがみついた。
馬の何倍も速い。ユミの速度は、最早人間とは言えないものだった。
「このまま行くから」
ユミは言った。
「待っ___」
サファイアが叫ぶよりも早く、ユミは更に加速する。サファイアは諦め、舌を噛まない様にと黙った。
サファイアが何とか横を向くと、景色はどんどん変わっていた。ビュン、ビュンと風を切る音が、耳元で鳴り響く。
一体いつまで続くのかと、サファイアはユミの背にしがみつきながら、遠くなりそうな意識の中、思った。先程から15分程度が経っていたが、ユミの速度は一向に落ちない。
もう、限界。
サファイアの頭が真っ白になりかけた時。
ふいに、風を切る音が止んだ。
「……よし。マーガレット、町はもうすぐそこだよ」
「………え?」
ユミの声で、サファイアはゆっくり顔を上げる。いつの間にかユミは立ち止まって、満足気に前方を眺めていた。
「ほら。あれが町」
サファイアがユミの指差す方に目をやると、少し遠くに町が見えた。
「うわぁ………」
サファイアは思わず感嘆の声を漏らす。
「結構、着くのは早かったでしょう」
ユミは言った。
「うん……って言うか!あの速さ、何?!!」
頷きかけたサファイアは、慌てて訊ねる。
「『レットゾーン』の事?…あれはわたしが、墓場歩きになったのと引き換えに手に入れたもの。神、仂乘の脚力」
「神??ろ、ろくの??」
淡々と答えるユミの言葉は難しくて、サファイアの頭からは疑問が完全には消えなかった。更に疑問をぶつけようとしたが、ユミの言葉の方が先だった。
「ここからだったらあの町、ミランテスまでは歩いてすぐ。だから行こう、マーガレット」
{4}
「この町なら、食べ物が買える」
町の出入り口前に来てすぐに、ユミは言った。真上にはそこそこ大きな門が建つ。
「そりゃあ、町だもんね」
サファイアは平然と言い返す。
「それにしても、ごく普通の町だねぇ」
続けてこう呑気な感想を述べた。ユミが鼻を鳴らす。
「そうかもね…。で?何を買うつもりなの?」
サファイアは即答した。
「焼き菓子!」
「やきがし??」
ユミが不思議そうに聞き返す。
「え?!焼き菓子知らないの!!?」
サファイアは逆に驚いて叫んだ。ユミはこくりと頷き、更に訊ねる。
「それは、西地方の物?」
「うん。…ああ、そうか。ユミは東地方の人っぽい感じだもんね。焼き菓子は、西地方のお菓子。すっごく美味しいんだよ!!」
「へぇ。自分の事は全然思い出せないくせに、そういう事には詳しいの…」
顔を輝かせて説明するサファイアに、ユミは半ば呆れた顔で呟いた。
「何でだろうね?」
サファイアは再び呑気そうな顔を作って、町の出入り口の門を潜る。そしてユミを振り返り、言った。
「ユミ、行こう!」
「全く………」
ユミはやれやれと首を横に振り、駆け出すサファイアの背中を見つめた。
ミランテスの町は、そこそこ賑わっていた。何もかもが平凡な造りの町だ。大通を挟んで、両側に家や店が建ち並んでいる。
しかしミランテスには、他の平凡な町とは明らかに違う、大きな特徴がある。それは、この町を外から見ただけでは到底気付く事が出来ないものであった。
出入り口の門を潜ってすぐに走り出したサファイアだったが、20歩程進むとふいに立ち止った。そしてゆっくりと空を見上げる。
「うわぁ……綺麗だなぁ……」
青空が広がっていた。金に輝く太陽も昇っている。それらを見たサファイアは、思わず感嘆の声を漏らしていた。
「どうしたの?」
ユミが後ろから、のんびりとした足取りで追い付いて来た。そして突っ立っているサファイアに声をかける。サファイアは前を向いたまま答えた。
「ううん、何でもない。ただ、この町は空が綺麗だなぁって思って」
ユミは苦笑する。
「さっきまで『平凡な町』って言ってたくせに」
サファイアも苦笑いになり、ユミに訊ねた。
「えへへ…。ねぇ、焼き菓子の店ってどこにあるの?」
ユミは首を横に振る。
「知らない。わたしは一度しかここに来ていないもの。…ちょっと待ってて。今聞いてくるね」
そう言って、すぐ近くの店に入っていった。
今度はサファイアがその背中を見送る番だった。
乗っ取られるに1000ペリカ
58:匿名 age:2015/09/09(水) 23:36 >>57
概要を頼む。
「あっやっべ!!! 右腕が疼いてきたわ! やっべ!!」
「はっ!? どうしたんだ急に!!」
ユミが店へと進む歩を止め、脚を抑え始めた。
「いやさ、わたしの右脚に眠ってた虚龍(ヴィディバインメント・ドラゴン)が暴れ出したんDA」
「ファッ!? お前中二病みたいなこと言ってんじゃねーよ」
「ううっ!! 疼く!! 疼くぜ!! やばい、もう出る」
そう言った彼女の右腕からじわじわと蛆虫が湧いて出てきた。
「おい! 蛆虫じゃねーかそれ!!!」
「ヤベェ……包帯巻いてたら脚が壊死してたわ……」
「キメェよ!」
サファイアは涙を流した。
すると、一人の医者学園現れた。
名前 ルビー・エメラルディア
種族 闘
属性 天
性別 女
詳細 医者の高校生。天然派ドジ少女。
誤りがありました。
学園はいりませんでした。
「壊死した腕を直してやんよ」
ルビーはおもむろに注射器を取り出した。
「それで治るのか?」
「さあ?」
「ファッ!!?」
逃げようとしたユミに注射器が迫る。
「う、うわああぁぁぁぁああああ」
「ゆ、ユミェ……」
サファイアはユミの後姿を恋い焦がれる乙女のような目で追いかけた。
逃げるユミを有り得ない速さで捕まえたルビー。
「た、助けてく……れ」
「ほ〜ら、逃げるな逃げるな……あっ」
ユミが勢い余って注射針を胸に突き刺した。
「やばい、心臓とかに刺さったかも」
「ファッ!!!??」
「てへぺろ」
サファイアは涙を流した。
サファイア「………。」ドクン!
サファイアの能力の火が体の痛みを喰い尽くし、呪いが解け、痛みがとれた。
サファイア「……。フフフ…。よくも、殺ったね。」
「オエエエエエッ!!」
「どうした、サファイア!!」
「なんか突然吐き気が!!」
「そうか、ならこれだ!!」
「なんだこれは!!?」
「ルビーの死体だ!!」
「いつの間に死んでたんだってばよ!!」
「いいから食え!!」
サファイアは涙と胃液を流した。
「えっと、うーんっと…じゃあそこの『砂糖焼き』で!」
「はいはい」
親切な人の案内により、ユミとサファイアはようやく焼き菓子の店に入る事ができた。
ユミはずらりと並ぶ焼き菓子に圧倒されながら、店の端でサファイアを待っていた。そのサファイアと言えば、先程から何を買おうかと迷っていたが、今ようやく決めたようだ。元気良く店員に注文する。
「にしても……」
店員は、サファイアが注文した焼き菓子を袋に詰めながら、不思議そうにユミとサファイアを交互に見た。
「?」
ユミとサファイアも店員の顔を見る。
「君達、ずいぶんとおかしな組み合わせだねぇ」
店員は言った。ユミはうっと押し黙り、サファイアはまだ意味が分からずに首をかしげる。
「どこが?」
「どこがって……白黒じゃないか」
そういえば、とサファイアは自分とユミを見比べ、頷いた。
「姉妹?」
店員の質問に、ユミはぶんぶんと首を横に振って否定する。店員はやっぱり変な組み合わせだな、と呟き、サファイアに焼き菓子の袋を渡した。
「はい、ありがとうございました」
焼き菓子が手に入ったサファイアは上機嫌で、不本意な勘違いをされたユミはやや不機嫌で焼き菓子の店を出たのだった。
そして、ユミとサファイアは再びこの墓場へと戻って来た。
ミランテスの町からここまではもちろん、ユミがサファイアを背負って走ってきたのだ。再びあの『レットゾーン』を体験したおかげで、サファイアは墓場に着いた途端地面に倒れ込み、しばらくは頭がぼうっとして何も考えられなくなったのだった。
「マーガレット!マーガレット!」
そんな事があったので今、ユミは意識が朦朧とした状態のサファイアを介抱するはめになっていた。墓石の一つに寄り掛かって、サファイアはぐったりとしている。目線は宙をさ迷い、上半身はふらふらと力無く左右に揺れていた。ユミはその額を撫でて、懸命に話しかける。
「マーガレット!!ねえってば!!」
ユミが叫びながらサファイアの肩を揺らしていた時だ。
「ぐぅっ……ううっ……」
突然、サファイアがうめき始めた。目は変わらず虚ろだったが、額には大粒の汗が浮かんでいる。ユミは訳が分からず、呆然としていた。サファイアが身をよじって苦しみ、声を漏らす。
「あ……あ、ない………」
「ない?」
「いやぁあああああああああ!!!」
ユミが思わず聞き返した。するとサファイアは激しく暴れ出した、足をじたばたと上下させ、ユミを勢い良く蹴っ飛ばす。
「______がっ?!!」
ユミは1メートル程後ろまで吹っ飛んで、墓石に背中を叩き付けられた。
「痛………」
何とか身を起こし、ユミは自分の体を確認する。どうやら骨は折れていないようだ。そのまま正面に顔を向けると、サファイアもよろよろと立ち上がっているところだった。
「はあっ、はあっ……」
ユミは荒く息をし、サファイアに近付こうとする。途端サファイアは絶叫した。
「いやあああああああぁぁっ!!!お母さん、お父さん!!!」
一瞬耳がキーンと鳴り、ユミは何も聞く事が出来なくなった。サファイアは泣き出す。
「ない……ない…、みんな……爆弾が……あ、あ……いや……」
そして再び絶叫した。
「いやぁぁぁああああああっ!!!」
あ、間違い!
×墓石に背中を叩き付けられた
o背中を墓石に叩き付けられた
{5}
しばらくして、サファイアの絶叫は聞こえなくなった。ユミは、ずっと耳を塞ぎうずくまっていた。だがふいに顔を上げて、サファイアの方に目をやる。サファイアは立ったまま目を擦り、すすり泣いていた。
「ひっく…ひっく……」
ユミは今度こそ立ち上がった。少しの間サファイアの様子を見ていたが、暴れ出す気配が無いと分かると、そのまま近付いていく。そしてサファイアとの距離が五歩程になった時、立ち止まった。
「マーガレット」
優しく話しかける。サファイアはゆっくりと首を横に振った。
「いや……怖い、怖い……」
ユミは言葉を続ける。
「怖くないよ。落ち着いて」
サファイアが顔を上げた。
「だって……兵隊が…みんな……」
その目は泣きはらして赤く、まだ大粒の涙が溜まっている。
「そっか……」
ユミは、そっとサファイアの顔に手を伸ばした。サファイアがびくっとのけぞる。ユミは指で、サファイアの目に溜まった涙を拭うと言った。
「怖かったね……辛かったよね……。大丈夫、大丈夫」
そして、にっこりと笑う。
「泣かないで。笑って」
サファイアの目から、堪えようとしていた涙が一気に溢れ出す。
「…………ひっく」
気持ちとは反対に、涙は止まらない。とうとうサファイアは、顔を手で覆って泣き出し始めた。
「うわぁぁあああん!!…ケホッ、ケホッ!!うぇぇええん!!」
ユミはそんなサファイアの頭を撫でて、落ち着かせようと唄を歌い始める。
「花はー、命儚し 瞬く間に、お前は枯れる 花よ、花よ 枯れないでおくれ ああ どうか 泣かないで」
墓場にはサファイアの泣き声と、ユミの歌声がしばらく響いていた。
ごめんなさい
明日更新する
泣き疲れたのか、サファイアはいつの間にか墓石に寄りかかって寝息をたてていた。ユミはそんなサファイアの額を撫でる。
「マーガレット。戦は嫌なものだね」
そう呟いた。
「おいしい!やっぱり、焼き菓子って最高!」
一時間後、目を覚ましたサファイアは何事もなかったかの様に焼き菓子を頬張っていた。『レットゾーン』の時、吐き気に耐えながら守り抜いた焼き菓子だ。おいしさもやはり格別である。
「ねえ……マーガレット。本当にさっきの事、覚えてないの?」
ユミは信じられないといった顔で、これで三度目となる質問をサファイアにしてくる。
「うん?何にも。レットゾーンの途中までは覚えてるんだけど……」
サファイアは正直に同じ答えを返した。
「あのマーガレットの暴れ様は凄かったよ?絶叫してたし、何かぶつぶつ言ってたし……」
ユミは引き下がらない。サファイアは、ぽかんとした表情で目の前に立つユミを見上げた。
「本当に覚えてないよ?」
その目を見れば、嘘を言っていない事ぐらいは分かる。それでもユミには信じられなかった。
「一体あなたは何者なの………」
焼き菓子を食べる事を再開したサファイアを見下ろして、ユミは呟いた。
「あの焼き菓子のお店いいね!また行こうよ、ユミ!」
この墓場に泊まるのは一夜限りと言ったはずなのに、サファイアは満足そうに頷いていた。
結局ユミは、サファイアを居候させる時間を次の墓場に移動するまでに引き延ばす事にした。
サファイアのあんな状態を見たら、中々外に追い出す訳にはいかないし、何よりサファイアも墓場に泊まるのは一晩だけ、と約束した事をすっかり忘れているらしいのだ。
そのためユミは、居候させる代わりねとサファイアに言って、墓場歩きの仕事を手伝わせる事にした。
翌日の朝。ユミとサファイアは昨日とは反対側の位置の墓石を掘り返していた。
「ユミ!ここ固ーい!掘り返すの手伝って!」
ユミと離れ、しばらく一人で頑張っていたサファイアだったが、そろそろ体力に限界がきてしまっていた。ユミに向けて手を降り、助けを求める。ユミは分かった、と返事をすると、サファイアを手伝い始めた。二人で一つのシャベルに、めいいっぱい力を入れて踏ん張る。
「___っ!!もうっ!……確かに固い」
ユミは乾燥してかちかちに固まった地面を睨み付けた。サファイアは言う。
「もう少しで割れると思うよ!よし!ユミ、もう一踏ん張りしよう!」
ユミは頷いた。同時にシャベルに体重をかけてみようという事になり、サファイアがかけ声を出す。
「いくよ!!いっせーの、せっ!!」
ユミとサファイアは同時にシャベルに身を任せた。ぎちっ、ぎちっと地面がなる。ユミは更に体重を乗せるため、空を見上げた。
もうすぐ昼になりそうだというのに、墓場の空は灰色に濁り、辺りは薄暗い。そんな空を見上げていたユミは、ふと思い出してシャベルから手を離した。
突然片方が軽くなり、サファイアはたまらず後ろにひっくり返る。
「うわっ、痛っ!!……ちょっとユミ!!」
抗議の声をあげかけたサファイアを見下ろし、ユミは訊ねた。
「そう言えばもう昼になるけど。お腹は空いていないの?」
サファイアは腰を擦りながら立ち上がり、ユミの質問にきょとんとする。
「え?ううん。全然」
ユミは不思議そうに首をかしげた。
「変ね。普通の人間ならとっくに空腹になってるはずなのに」
昨日はあんなに空腹を訴えていたサファイアだったのだが、今はぴんぴんとしている。
そんなユミの心配にはお構いなしで、サファイアは少し土のついた顔をユミに向けてきた。
「さあ、ユミ!!続きを掘ろうよ!」
すみません。明日更新する
75:匿名 age:2015/09/28(月) 20:20 「お…腹、減った……」
その日の昼、唐突にサファイアは呟いた。
丁度、十個程の墓石を例の森に移動させ、ユミと休憩していた時の事だ。
「え?何?」
サファイアの後ろに立ち、木に寄りかかって寛いでいたユミが、聞き返してくる。
「お腹が…減ったの……」
サファイアはもう一度弱々しく繰り返した。
「え?だって、さっきまで全然お腹減ってないって……」
ぐううううぅっ、とサファイアのお腹が鳴った。ユミが不思議そうに言いかけたのと同時だった。
「………ね?」
サファイアはユミを振り向く。ユミは小さくため息をついて言った。
「もう………。お金は?まだある?」
サファイアは頷く。ユミが膝を折って体制を低くし、サファイアに背に乗るようにと言った。サファイアはユミの背に飛び乗る。
「それじゃあ、ミランテスに行くよ」
ユミがゆっくりと歩き出した。だが、すぐにサファイアはそれを止める。
「あっ…ち、ちょっと待って!」
「どうしたの?」
ユミが足を止め、顔だけこちらを振り向いた。サファイアはおずおずと言う。
「あのね……レットゾーンの時は
その、気持ち悪くなっちゃうから、眠ってたいんだ……。だから、何か唄ってくれない?」
ユミは何だ、と小さく息を吐いた。
「じゃあ、森を抜けるまでね」
そして再びゆっくりと歩き出す。レットゾーンは、しなかった。ユミは歌い始める。
「花はー、命儚し 瞬く間に、お前は枯れる」
サファイアは何だか安心した気持ちになり、ゆっくりと目を閉じた。
ものの15分も経たない内に、サファイアはユミの背中で寝息をたてていた。
「お前に会いたい お前に会いたい……儚き命を示し 開く花よ、雪原のー中で、お前は 短い命を終える……」
幽霊の様な森の中、ユミの歌声だけが響く。
{6}
ミランテスの町には特に問題なく辿り着けた。
レットゾーンの途中はユミの背中ですやすやと寝ていたため、今回のサファイアはいかんせん元気だった。
ユミの背中から降りた途端、サファイアが大声で空腹を訴えてくるので、二人は早速この間の焼き菓子の店に入り、そこでサファイアがクリーム入りの焼き菓子を買った。
「いやー、おいしい!」
ユミとサファイアは今、町の大通りを歩いている。サファイアは出来立ての焼き菓子を頬張りながらだ。ユミがその様子をを見て、あきれた様に言う。
「歩きながら食べると、こぼすよ」
「まあまあ。大丈夫だって!」
サファイアがユミを見上げて笑い、角を曲がった時だ。
わああああっ!!と、角の先から突然の歓声が響き渡った。
「わっ?!」
サファイアはその歓声の大きさに驚き、危うく焼き菓子を落としそうになった。ユミとサファイアが前方へと目をやると、二人が立つ所よりもすこし先に、結構な人だかりが見えた。何かを囲む様にしてできている。
「な、何?!あの人だかり・・・」
サファイアはユミを見上げる。ユミは行ってみようと呟き、その人だかりに向かって走り出した。サファイアも興味深々にそれに続く。