なんで、なんでどうして止められなかった?言い出せばよかった。嫌われるから?もう嫌われてるくせして何がだよ。既に陰口散々言われて嫌悪感を抱いたままで、それでもどうして言えなかった?普通は言えないよ、って母はフォローしてくれたけど、そんなの納得できなかった。結局変わらないじゃないか。あの子が言ってたことと、ひとつも違わない。善人の皮を被って、エゴに塗れたバケモンでしかない。憤りの向く矛先は、間違いなくあの人たちなのだが、それ以上に悔やみきれない悔しさと、あの人たちに向く以上の憤りが自分自身に押し寄せる。背中に背負ったランドセルは軽かった。だけど心は鉛玉のように重たいまま。だだっ広いアスファルトに呑み込まれそうな帰り道で、喉の奥で何度も叫んだ。嫌い嫌い嫌い。自己嫌悪に陥っては、どうにか胸を張ろうとした。
誰かが傷つく様を見て笑うなんて、どうかしてる。「悲しんでるのに、思うことなんにもないの?」って同級生が言った。でも彼奴は無感情のまま、いや薄ら笑いを浮かべて、何も思わない、と答えた。周りから嫌われてるからって、傷つけていい理由にはならないし、ましてやそれを断罪だの何だのと自らを棚に上げるなんて言語道断。涙を流したかつての友達。知っていて、どうして止めなかった?嫌われたって良かったのに。どうせ嫌われている、嫌われ者の自分が言えばよかった。止めよう、ってどうして言えなかった?謝っても謝りきれない。帰り掛けに謝りに行くと、その人は笑顔で受け入れてくれた。どうしてこんな人が嫌われるんだろう。優しい人なのに、なんで?世の中はこんなにもわからないことだらけだ。いつになったら、彼奴がしたことも同じように笑えるだろう。きっと自分は、何十年経っても笑うことなんてできない。
違うクラス、ってだけで罪を逃れてしまった。>>86の件について、今日案の定先生から言及があったようで。ただ、自分は別クラの友達から詳しいことを聞いただけ。聞いた、だけ。止められなかったのに、罪を逃れて。そのクラスの知ってた人は全員叱られたよ。違うクラス、ってだけだったのに。贖罪と懺悔、十字架の重さと閉じ込めた秘密。叱られたい訳じゃない、が、同時に叱ってほしい気もする。許さないでいい、と願う自分がいて、それは許されないからこそ十字架は軽くなる気がしたから。このまま黙っておくこと、そのことの方がよほど辛いことではないか。でも叱られたくないんだよ。矛盾してる。おかしいよね。