桜空「・・・・・わかった、三日後に決行する・・・・・」
(そう言って立ち上がると「今回ばかりは本当に危険だな・・・・・」と、今まで感じたことのない悪寒を、全身を駆け巡るようにして感じる・・・・・
自分同様に人間離れした異能持ちではあるものの、敵対する相手も同じ人間、それなのに、まるで得体の知れないモンスターの大群を敵に回したような気分だ・・・・・)
【病室にて】
夕渚「おいーっす氷華ー!」
(いつもと変わらずに元気な夕渚、今日は小説を読んで病室での時間を過ごしていたのか、手の届く範囲には三冊ほど小説が積まれている・・・・・
だが、枕には涙で出来たシミの跡が確認できることから、また人知れず一人泣いていた時間もあったと思われ、このこと自体は夕渚自身、親友の氷華にも心配をかけまいとして敢えて言っていない・・・・・)
氷華
「最後に来たのは二週間前?
少し間が空いてしまったけど、漸く来れた。」
夕渚の横になっているベッドの近くまで歩くと、両手を後ろに組ながら、小説が三冊積まれている事と、涙に濡れた枕を見て、敢えて核心には触れずに懐かしいと言葉を掛ける。
自分は闇に生きる存在であり、頻繁には顔を出すことが出来ず、半年も来るのに間が空いてしまう事もあったが、亡き弟と彼女の事は何時も気に掛けて来た……
自分はもう悲しくとも辛くとも涙は流れない。
自分の操る冷気のせいで体外に流れなくなっているからなのか、それとも人間として失ってはならない感情が失われてしまったからなのかは定かではない……