夕渚「わあぁ〜・・・・・すごい綺麗・・・・・」
(まるで無邪気な子供のように目を輝かせながら氷の鶴を受け取ると、そっとお見舞いの品である果物の横に置き、数秒眺めてから「氷華はさ、代わりにって言うけれど、私病気が治るのと・・・・・いや、それ以上に嬉しいかも♪こうしてお見舞いに来てくれるだけでも、病気なんかに負ける気しないもん!」と、氷華からのエールはしっかりと受け取っており、立場上いい病院を紹介したりできずに歯がゆい思いをしている氷華とは対称的に、かなり前向きである・・・・・)
>>203
氷華
「……………………。」
氷の鶴を受け取り、傍に置き、自分が見舞いに来てくれるだけでも嬉しいと言ってくれる夕渚からの言葉を聞いて、氷華は微笑んだまま、少しだけ黙り込む。
罵詈雑言でも恨み言でも無い、純粋な好意。
それが殺戮と闘争の世界で生き続けて来た氷華にはとても深く染み込む……
端から見ると何の事も無い、見舞いに来てくれた事へのお礼として見えるのだが、今の氷華にはそんな何気無い言葉の一つでさえ、かけがえの無い物になっている。
そう言えば昔……今となっては遠い昔の事になってしまったものの、生き別れた弟にもこうした言葉をかけてもらっていた事を思い出す……あの頃の自分が今の自分を見たらどう思うのだろうか?
氷華
「ええ、私も……こうしている間が一番落ち着くわ。」
此処でならば、金鵄である事や、正義のために現世を地獄にしようと考え、他者に弱みを見せずに強い自分だけを見せ続ける必要がなく、まるで普通の人間になれたかのように思える。
だが……自分は何時までも安寧の中にいる訳にはいかない。
自分は世界から悪を根絶するために戦い続けなければならない。
これは強い力を持った自分の宿命であり使命だ。悪がいる限りこの世界では終わり無き恐怖と悲しみに満たされたままであり、それに終止符を打つために自分は戦い続けなければならないからだ。