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氷華
「……………………。」
氷の鶴を受け取り、傍に置き、自分が見舞いに来てくれるだけでも嬉しいと言ってくれる夕渚からの言葉を聞いて、氷華は微笑んだまま、少しだけ黙り込む。
罵詈雑言でも恨み言でも無い、純粋な好意。
それが殺戮と闘争の世界で生き続けて来た氷華にはとても深く染み込む……
端から見ると何の事も無い、見舞いに来てくれた事へのお礼として見えるのだが、今の氷華にはそんな何気無い言葉の一つでさえ、かけがえの無い物になっている。
そう言えば昔……今となっては遠い昔の事になってしまったものの、生き別れた弟にもこうした言葉をかけてもらっていた事を思い出す……あの頃の自分が今の自分を見たらどう思うのだろうか?
氷華
「ええ、私も……こうしている間が一番落ち着くわ。」
此処でならば、金鵄である事や、正義のために現世を地獄にしようと考え、他者に弱みを見せずに強い自分だけを見せ続ける必要がなく、まるで普通の人間になれたかのように思える。
だが……自分は何時までも安寧の中にいる訳にはいかない。
自分は世界から悪を根絶するために戦い続けなければならない。
これは強い力を持った自分の宿命であり使命だ。悪がいる限りこの世界では終わり無き恐怖と悲しみに満たされたままであり、それに終止符を打つために自分は戦い続けなければならないからだ。
夕渚「・・・・・氷華、ちょっといい・・・・・?」
(上半身を起こして、相手の両頬に両手を添え、じっと目を見つめる・・・・・
それは、まるで子供がなにか悪いことをした時に親が嘘を見破るための行動、もしくは泣いている子供を落ち着かせるために親がする行動のどちらにも考えられ、夕渚の表情、雰囲気は普段の明るく子供っぽい無邪気な感じとは異なり、どこか大人びた印象を受ける・・・・・)
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