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氷華
「……いいえ、決して感情が死んでなんかいないわ。
だって……本当に感情が死んでいたら……そう思う事すら無くなるのだから……」
氷華はゆっくりと夕渚の前にまで歩み寄ると、本当に感情が失われているのであれば、自分に感情がないと嘆くことも、他者に感情を見せることも、ましてや偽りの自分に気付く事すら無いと言うことも無くなるのだと言う。
だが、そう告げる氷華の笑みからは悲しみや後悔と言うものは無く、あるのは薄れた"喜"の感情だけであり、彼女自身は笑っているつもりなのだが、その笑みから感じられる感情は何処か稀薄なものになってしまっている。
夕渚はもう一人の氷華には惜しくもならないだろう……
何故なら、例え何度過去に戻り、自分で自分の選択肢を変えられるチャンスを得られたとしても……氷華はこの道を選び、現在に至っていたからだ……
氷華は普通の世界には生きられない。
自らが破滅の道に向かっているのだとわかっていても、自分では止められない……そう言う宿命の下にある。
夕渚「・・・・・」
(感情は死んでなんかいない、そう言われ相手の顔を見ると、相手の表情は笑顔だった・・・・・
だが、夕渚はすぐに感じる・・・・・この笑顔は、純粋な笑顔ではない、昔の自分がよくしていた表情と同じ、何かが欠けた不完全な笑顔だ・・・・・
そう思って夕渚は氷華へ近づくと、氷華の右頬に手を添えて「・・・・・とても無理をしている笑顔です」と言う)
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