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素鴉
「……そうして理想を抱きながら、叶えることが出来ずに倒れた奴らを俺は何人も見てきた……」
素鴉は桜空に対してトドメを刺す前に、必死で立ち上がろうとする桜空を見て、自分が持つ理想を抱いたまま命を落とした者達について語る……桜空の倍を生きる素鴉だからこそ、数多の生死を見届けて来たのだろう……
素鴉
「知っているか?そう言って倒れ、理想を捨てた者が最期に何て言うか……"最初から夢なんか持つんじゃなかった"って言うんだよ……」
素鴉は悲しそうな、虚しそうな、複雑な表情をしながら、夢半ばに倒れた者達の呪詛について話す……その言葉に嘘や偽りは無く、純粋な戦闘能力だけでなく、桜空の理想と信念を真っ向から折ろうとしている……
薫
『ごめん……ね……?
貴方の事を……救えなかった……』
腹部に大穴を開けられ、口から血を流した薫が、ボロボロになった桜空の傍で倒れ、息絶えるその前に……薫は桜空の頬を優しく撫でながら、涙を流して桜空に謝っている……
これは少年院にいた中で一番辛く、悲しい記憶だろう……
神宮に復讐を遂げた桜空だったが……復讐を終えて戻ってきた桜空前に薫が無惨な姿にされてしまっていた……
全てを救おうとした氷華は歪み、悪に等しい存在となり……
全てを助けようとした薫は敗れ、命を落とした……
希望があるから絶望がある。
希望の中から絶望が生まれる。
それならば……絶望しか無い世界には希望は生まれないのだろうか?
桜空「・・・・・そう・・・・・かもな・・・・・夢なんて、所詮は夢だ・・・・・どんなに努力したって、し尽くしたって、叶わない夢はある・・・・・」
(過去のあの日の惨劇が、桜空の脳裏によぎる・・・・・
一度ならず二度までも・・・・・文字通りこの言葉のように、悪は自分の大切なモノを根こそぎ奪っていった・・・・・
桜空自身も悪なんて死ぬほど大嫌いだった、この世から消えてしまえ、跡形もなく、そう思っていた・・・・・
だが、そんな自分を救ってくれたのも、違う形の悪であり、違う角度から見た正義だった・・・・・
言わば、麻間桜空は悪人になったからこそ、今まで生きてこれたのだ・・・・・)
紀「なっ・・・・・!?」
ゴボボッ・・・・・
(紀は抵抗する間もなく、水鴉の思うがままに呑み込まれてしまう・・・・・
必死にもがくものの、もがけばもがくほど息が苦しくなるだけであり、ここから脱出するだなんて夢のまた夢である・・・・・
まさに、絶体絶命・・・・・)
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