>>565
蟲鴉
「餌……餌……餌……!!!」
蟲鴉は口を大きく開けて更に新しい巨蟲を吐き出そうとしている上に、蟲鴉の放った四枚羽根の蜻蛉は再び中川に向かって高速で飛行し、彼の右肩を喰い千切ろうと迫る……
《ゴゴゴゴゴゴゴ……》
蟲鴉
「…………!!?」
幾つもの爆発音と共に地響きが鳴り始め、パラパラと天井から小さな土埃が落ちて来ると蟲鴉は巨蟲の生成を中断する。
満を持して狼谷が率いる地上の攻撃部隊が総攻撃を開始したのだが、その事を知らず、中川と紀が最後の攻撃部隊だと思っていた蟲鴉は驚き、周囲を見渡し、中川への追撃が出来なくなっており、
高速で迫る蜻蛉の一撃を凌げば、発電室に入るまでのチャンスが生まれるだろう。
「あ〜っ、痛ぅ〜」
傷口を押さえながら走る。さほど深くはないが、やはり痛いものは痛い。
「けど、まだまだやれるぜ……ぐうぅうおおぉおお!!」
能力で針金を作り、傷口を縫い付けていく。その際の痛みは全て気迫で堪えた。
「!」
またも差し向けられる羽虫の鋭牙。しかし隆次の目に恐れの色はない。
もう動きは見切った。銃弾クラスの速度でないなら一度見れば十分だ。そして、この揺れは恐らく狼谷の総攻撃が始まった合図だろう。
蜻蛉に対し向き直るようなことはせず視線だけを注ぐ。
「同じ手を、食うかよ……!」
並足を揃えて膝で軽くしゃがみ、背中での強烈な体当たりを繰り出す。
鉄山靠(テツザンコウ)
八極拳の技の一つ。正式名称は貼山靠(テンザンコウ)
本来の使い方とは違うが、広く応用を利かせられるのが武術の利点だ。
再びかぶりつこうと考えていたであろう蜻蛉に、痛烈なカウンターが迫る。