氷華
「……フフフ、あくまでも抵抗するつもりのようね?
無差別な殺戮は嫌いだけど……戦いは嫌いじゃないわ。」
このまま相手の頭上から攻撃してもいいのだが……それでは面白くない。
Firstの取引現場を潰すまでの前哨戦としてこの戦いを楽しむとしよう。
振り下ろされたバットをステップを踏むようにして巧みに避け、相手の手首やバットを掴み、そのまま相手の体を凍らせ、凍り付いた相手の腕に回し蹴りを放ち、相手の手首もろとも凍ったバットを中距離に控えている暴徒の胴体に激突させて肋を砕いて内臓に突き刺させる。
自分を拘束するために投げられた縄を視界の端で視認すると、その縄を逆に掴み、一瞬にして縄ごと投げてきた相手の体を凍り付かせて絶命させ、カッターを振り回しながら迫ってくる相手に凍った縄の一部を砕き取り、まるで槍のように尖鋭化した氷縄の先端で迫る暴徒の喉元を突き刺し、そのまま相手を蹴り飛ばして後ろにいた暴徒にも貫通した氷縄を突き刺していく。
背後からバットを大きく振り上げながら迫ってくる暴徒にその足音から気付くと、背を向けているにも関わらず、空気を切る音から攻撃の軌道を予知して体を逸らして殴打を避け、そこから流れるようにバットを振り下ろされたバットと襟を掴んで凍り付かせ、そこから背負い投げの原理で地面に叩き付けることで凍った相手の体を砕き絶命させる。
圧倒的なまでに数の差があるにも関わらず、氷華は涼しい顔をしたまま暴徒達を一方的に凍結させて絶命させていく中、相手の用意したバルーンに向けて右手を翳し、浮かびあげられたバルーンを瞬時に凍結させ、巨大な氷塊に変え、その下にいる不安を、彼の傍にいる部下もろとも押し潰そうとする。
こうして敵に包囲された状態での戦いや、多数の敵との戦いには慣れている事もあり、一切の無駄もなく、敵対者を確実に殺傷していく事で数的不利を覆していく。
「いーじゃん、YESじゃん...そいつら別にMY FRIENDじゃないからいいけどねっへぇ!!」
いつの間にか女性の後ろに回り、仲間だった氷の山々を蹴り上げて近づいてくる。
そして商店街に横たわっている巨大な風船を指さして言う。
「それ壊してみ、中から俺の刺客が隠れて「あぁーその前にぃいいい!!!」
「...名前。後『どこの機関所属か』言おうWOMAN、どうせ『大層な大将』...でしょう?」
そういって指さした手を下げる。
与作はさっき以上に落ち着いており、まるで重荷がやっと降ろせたと感じているかのような安心感を彷彿とさせるような肝の座り方であった。