>>603
「はい到着っと〜」
ドリルで掘り進み、その後ろを追いかけることで目的の部屋へと辿り着いた。
「!」
直後、隆次の顔から余裕の色が消えた。
「旦那! それに皆も!」
なんと狼谷は片腕を切断され、他の者達も血塗れで倒れ伏していた。
明らかにシャレにならない事態だ。急いで彼のもとに駆け寄る。
「しっかりしろ旦那。こんなところでくたばっちゃ、笑い話にもならねえぜ」
残った腕の先端部を、針金で縛り止血を試みる。何もしないよりはマシだろう。
「やったのは……アイツか。旦那、何か弱点とかねえかい? 他には攻撃の特徴とかよ」
視線を移せば、青髪の少女。規格外に長い太刀が嫌でも目を引く。
(成る程、あんなのブン回してりゃそりゃ傷だらけにもなるわな)
壁、床に切り傷が幾つも付いたことに合点する。
そして身に纏うただならぬ気迫。他とは別格の存在だ。ともすれば虫の男や水の男より上かもしれない。
狼谷
「悪りぃ……まさかこんなところに三羽鴉がいるだなんて思ってもいなかった……作戦は失敗だ……」
直前までは十二鴉が一人か二人いるだけで、三羽鴉など居る筈も無かった……まして剱鴉は遥か遠方の四国の暴力団の制圧のために遠征している筈であった。
嘘の情報を掴まされたか、或いは何らかの方法で先回りをされたのか……いずれにしても完全に予想外の出来事だ。桜空の救出には成功したが……生還することは絶望的であり、作戦は失敗したと悟る……
狼谷
「アイツは……剱鴉は他の異能力者とは桁が違う……
まともに戦っても勝ち目はない……せめてお前らだけでも逃げてくれ……」
弱点について聞いてくる中川に対し、狼谷は戦っても勝ち目はないと応える……
普通に考えれば三羽鴉が来襲した時点で全滅は免れないのだが……ここで自分が命をかけて足止めをすれば中川達が逃げるまでの時間なら稼げるかもしれない。
細身な少女の姿をしているものの、彼女の纏う雰囲気は見た目通りではない。眼帯を付けていない剱鴉の左目、青い瞳は刹那の瞬間すらも見逃さない、狩人の眼をしており、奇襲や不意討ちといった小細工も通用しないだろう……
剱鴉を一言で現すのなら"磨き上げられた剣"であり
その剣を手にし、振るうのは人の心を捨てた氷の化身、氷華。
この場から生還できる可能性は限り無く無に等しい……