>>734
「一任……ですか、こりゃ責任重大だなぁ」
とはいえ、こうなることは半ば予想できていた。
とすれば、地道な情報収集から始めようかと考えたがーー
「おや? お目覚めですかい、大将」
どうやら桜空が意識を取り戻し始めたようだ。
「ふむ、数日後ね……」
捕まっている間に情報を取ってきたのか、嘘や出任せではない声色に思える。
「OK、了解した」
他ならぬリーダーの言葉だ。軽々しく無碍には出来ない。
そして、あちらから来るというのなら好都合。わざわざ探し出す手間が省ける。
「ところで大将、能力の方はもう大丈夫ですかい? 問題なかったとしても、また対策される事態は十分あり得ますぜ」
Firstのリーダーだけあって彼の能力は強烈だ。これがあるとないとではパワーバランスや戦術の組み立てに大きく関わってくる。
そして、Firstのリーダーだけあって狙われやすい。なにしろ特定の施設内で彼の能力が使えないという事態が発生したのだ。これを応用した技術でこちら側の能力を封じてくる可能性は高い。
朱音
「何を言って……たった一人でどうにかなるような奴らじゃないって事は知ってるだろ?」
精神統一や一朝一夕の鍛練でどうにかなるものじゃない。
多少の力の差はあれど、あの難敵、蟲鴉や水鴉クラスの十二鴉が少なくともあと十羽(正確にはルインに粛清されたり、ファーストとの戦いを避けた素鴉を除いて七羽)いる上
たった一人で五十人以上いたファーストの攻撃部隊を一方的に壊滅した剱鴉に、一度桜空を圧倒した霞鴉に加え、その剱鴉と霞鴉と同格の存在がもう一人存在している上に、その三羽鴉をも超える金鵄もいる……
ファーストの全戦力をぶつけて漸く互角か、少し劣勢ぐらいの戦力差であるにも関わらず、それにたった独りで挑むなど無謀としか言いようがない。
朱音は少し呆れながら応える。