>>746
朱音
「……アタシはもう知らん。」
桜空の渡そうとした遺書を受け取らずに近くのテーブルの上に置くと、両腕を組んで壁に背を預け、自分はもう止めもしないと言う。
先程までの自分は必ず生きて帰る、必ず勝利する。
始めから勝率の無い戦いだ、虚飾とは言えど、それを掲げられるだけの勇気と意思を感じたから警察官と言う立場と肩書きを捨ててまでこの組織に来た。
政府の上層部にいる者達は己の利権と利益のために腐敗を容認し、自らの意思や信念も無く、己の手が届く範囲しか干渉しなかった……
そんな連中では決して持ち得ない強い信念を感じており、それがあれば世界をも変えられると信じていたからだ……
だが、先程の桜空の言動は明らかにそれを反語にするものだった。
自分は叶わないかもしれない、力及ばず命尽きるかもしれない、自分が命を落としたら……と言ったように臆病風に吹かれたような、半ば自暴自棄なものであったからだ。
だからこそ、朱音は失望と落胆を隠すことなくそう応える……