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「……わかりました。貴方の覚悟と配慮、確かに聞きました」
桜空の悲痛な叫びを聞き、自身も改めて気を張り直す。
狼谷の旦那に報いる為にも、つまらない失敗はできない。
「ああ、それと……」
「言葉一つでいちいちヒスってるようじゃ、返り討ちで犬死にだ。小僧」
血も凍るような声色で釘を刺す。
「……けど、そうならないように俺達も死力を尽くしますよ。まあ大船に乗ったつもりでいて下さいな」
しかしまたすぐにいつもの軽薄男に戻り、人懐っこい笑顔で締めた。
「姐さんもそれでいいですね? なーに心配はいらないっすよ、終わったら俺が一杯くらい奢ります」
朱音の不安を拭うように明るい口調で説得を試みる。また、封筒の中身が金銭でなかったことに対するフォローも入れておく。
朱音
「……アタシはもう知らん。」
桜空の渡そうとした遺書を受け取らずに近くのテーブルの上に置くと、両腕を組んで壁に背を預け、自分はもう止めもしないと言う。
先程までの自分は必ず生きて帰る、必ず勝利する。
始めから勝率の無い戦いだ、虚飾とは言えど、それを掲げられるだけの勇気と意思を感じたから警察官と言う立場と肩書きを捨ててまでこの組織に来た。
政府の上層部にいる者達は己の利権と利益のために腐敗を容認し、自らの意思や信念も無く、己の手が届く範囲しか干渉しなかった……
そんな連中では決して持ち得ない強い信念を感じており、それがあれば世界をも変えられると信じていたからだ……
だが、先程の桜空の言動は明らかにそれを反語にするものだった。
自分は叶わないかもしれない、力及ばず命尽きるかもしれない、自分が命を落としたら……と言ったように臆病風に吹かれたような、半ば自暴自棄なものであったからだ。
だからこそ、朱音は失望と落胆を隠すことなくそう応える……
桜空「・・・・・あぁ、任せた・・・・・」
(今まで聞いたことのない中川の声色に少し驚くも、すぐさま任せたと一言だけ呟く・・・・・
ヒスっている、か・・・・・と内心思うも、かなり精神的に追い詰められている今の自分は、この言葉には流石に逆らえなかった、これは紛れもなく事実でしかないからだ・・・・・)
桜空「お前に何がわかる!政府の闇がどうたらこうたらなんてちょっと知ったくらいでこの組織に入ったような奴がわかったようなことを言うな・・・・・!!!!!」
(桜空自身、この組織のリーダーになってからは、メンバーのことをいつでも思って生きてきた・・・・・
メンバーの過去も全て受け入れ、前に進んできた・・・・・
だが、今この瞬間、ついカッとなって突発的に心にもないことを朱音に言ってしまう・・・・・)
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