桜空「がっ・・・・・ぁ・・・・・!あ・・・・・」
(覚悟はしていたが、やはり想像を絶するほどの激痛に、呻き声が漏れる・・・・
全身を無数の針で同時に突き刺されるような激しさと、体中が焼かれているような熱さ、これが生き地獄というものなのかと思えてくる・・・・・
が、これで八咫烏の主力の一角を削ることができたのだから、まだいい方だろう・・・・・
しばらく電流を受けた後、二人して地面へと落ちてゆく・・・・・)
ドサッ・・・・・
桜空「・・・・・あ・・・・・りが、と・・・・・な・・・・・狼、谷・・・・・」
(風が吹き荒れたあの場所、狼谷と初めて出会ったあの小屋があった場所に転送したのは、本能がそうさせたのか、それとも狼谷が導いてくれたのかは定かではない・・・・・
だが、あの時確かに見えた狼谷の姿に、桜空は感謝の言葉を述べると、そのまま意識が落ちた・・・・・)
>>853
霞鴉
「……ぐ……うぅぅ………」
高所から地面に激突した痛みなど気にもならない程の激痛が電線から離れた今でも尚、全身を駆け巡っており、"無敵の鴉"と呼ばれた彼女の姿は何処にも無く、哀れなほどにボロボロになった霞鴉の姿だけがそこにある。
氷華
『貴方のその力は臆病者の力なんかじゃない、貴方の力は弱い者を悪人から隠し、守れる力。私は貴方を信じるわ。』
霞鴉の脳内で孤児院で出会った氷華の姿と言葉が蘇る。
幼い頃は霧になれると言う異能であった事であらぬ疑いをかけられたり、誰からも信頼されず孤立していた事から、
もし、氷華と出会っていなければ、自分は何者にもなれない、空っぽで空虚な存在で終わっていただろう。
そんな自分を認め、信じてくれた氷華がいたからこそ、自分は前任の三羽鴉を倒してその座を得る事で氷華に近付いた。
霞鴉
「はぁ……はぁ………
……ボクは……まだ倒れる訳にはいかない……こんなボクを……信じてくれた氷華を……失望させる訳にはいかないんだ……!!!」
霞鴉は全身を走る激痛に加え、落下の衝撃で体の至るところの骨が折れ、痛みと肉体の過度なダメージによって上手く異能が使えない状態になっているにも関わらず、立ち上がり、おぼつかない足取りだが桜空に近付き、右腕を大きく振り上げ、桜空の心臓目掛けてナイフの刃を突き刺そうとする。
その姿は、最初の頃のような不敵な雰囲気は無く、譲れないものをそれこそ命を賭けてでも必死で守ろうとしているように見える。