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「………どうやら追っ手が来たみたいだね…」
ボソリと呟き、窓枠にひょいと飛び乗ってマーヴェリックを抱えなおす。
「………さっき言ったとう、僕は空の雲に隠れるよ………それと…これも」
小さな声で告げたあと、翼から一枚だけ赤黒い羽をむしり取って宙に放り投げる。
フワリ…フワリ……ヒラリ
少し宙に漂ったあと、瞬く間に形を変えて小さな一匹の蝶に成った。
「その子は、まぁ…通信機みたいなものだから、何かあった時はその子に話かけてね………じゃぁ…またね」
トッ、っと軽い音を立てて窓枠から飛び上がり、一度大きく羽ばたいて上昇を開始する。動体視力の優れた吸血鬼にも一瞬のつむじ風にしか感じないだろう。
……この部屋には彼のいた痕跡はほぼ残されていない。……そう、“ほぼ”だ。
この部屋を注意深く観察する者には窓枠に残る赤黒く禍々しい小さな羽に気づくだろう〰️
ユスタス《一応避難できたか・・・・・この状況下でバレたらどうするつもりだアイツ・・・・・》
(相手が蝶に変化して逃げたのに気づけば、もしバレた時はどうするつもりだったのかと肝を冷やす・・・・・
そして、吸血鬼狩りからの質問をされれば)
ユスタス「・・・・・何とも言えんな、一応手当てはしてある」
(助かるか助からないかは、あとは当人の生命力にかかっている、かなりの致命傷だからか助かるとは言い切れない・・・・・)
>>121、122