>>16-17
「あれ?」
A級の勘だろうか。ここで何か掴めると確信したはずなのに、中に踏み入った途端気が抜けてしまって。可笑しいなと首を傾げたところでふと、店主しか見当たらないことに気付く。店の外…、窓越しに中を見た時は他に誰かいたはずだが…いない。不気味に艷めく赤、纏った白衣…、すれ違っていないし、幻覚ということもないだろう。現に、ほんのりと漂う甘い香りは鼻腔をくすぐる。席には座らず突っ立ったまま、考え込んでしまう。
どこかから逃げた?もしそうだとすればかなり怪しいわけだけど…。そういえば、吸血鬼の味方する人がいるって聞いたなぁ。
店主の声も無視して、自分なりの1つの答えに行きつけばニタリと笑みを浮かべる。カルミア、カルミア。花言葉のひとつは、裏切り者。
「ごめんねマスター!このお店ぜーんぶ、めるが抜き打ちチェックしちゃうよ!」
吸血鬼の味方は人間であろうと敵。脅されてたとしたら可哀想だけれど、関係がある以上優しくはできない。もしもの為に聖水を携えながら、機嫌良く踊るように手を出していく。お洒落な棚の裏、天井、そして最後に、カウンターの中のカーペットに手をかける。