「まぁ、お願いって言っても爵位持ちが二人いるからさほど大変じゃないだろうけど」
ひらりゆらり、大人の両の手のひらほどある血で形成された蝶が声に呼応して揺れる。
「さっき君は末端の吸血鬼でも軍人を屠れるって言ったよね?確かに、単純な力は人間よりも遥かに優れてる」
人が何かを考えながら話すようにくるくる廻る
「でも人間だって馬鹿じゃない。現にまだ敵対し続けてる。ではどうやってこの現状を突き崩す?僕はね、武力と緻密に練られた戦略が必要だと思ってるの」
少し休むように裏路地のとうの昔にきれたガス灯に止まる
「その戦略を練るためには常に新鮮な情報が必要なんだ。幸い僕はコンピューターが得意だし、異能だって情報収集に使える。……まぁ…やり過ぎて若干貧血気味だけど……」
ひらりと再び二人の前に飛んでくる。
「まぁ…ここまで長々としゃべったけど、要するに“今は情報収集に専念したいから、吸血鬼狩りの相手をして”ってこと。……あっ、反対意見は認めないよ?」
どう?わかった?と再度二人に呼び掛ける
【なんか分かりにくくなってしまいごめんなさい】
アラネア
「ンフフ……」
《メキメキメキ…》
《ドスッ》
自分は情報収集に専念するから、その間、吸血鬼狩りの相手をして欲しいとの依頼を聞くと、裂けた口を開け、その中から一本の巨大な蜘蛛の脚を伸ばし、脚の先端を槍のように鋭く尖らせ、二匹の爵位無しの吸血鬼達が殺害した女の骸に突き刺すと、その体を持ち上げ、そのまま蜘蛛の脚ごと自分の口の中へと引き寄せて
《バキバキバキバキバキ…》
アラネア
「吸血鬼狩りの相手をする事は言われずともやりますとも、それが我々の召集された理由なのですからネ?
しかシ……貴方様も傍観を決め込めば夜王様の命令に反する事になり、惨めに粛清されてしまう事になるでしょウ……あの方々に実績や爵位など関係ないのですかラ……」
口元へ運んだ骸を、歯の全てが鋭い犬歯となった口を大きく開き、そのまま骸を血だけでなく肉や骨、衣服まで含めて音を立てて貪る
夜王は誰も信頼していない。吸血鬼とは自分の思い通りに動くのが当たり前であり、それに従わなければ屍鬼に変えて無理矢理操るなり、遠隔で自壊させるなりをして抹消するだけ。
情報収集に専念するのは構わないが、夜王の望む通りに動かなければ、無惨に粛清されてしまうぞと警告して