>>吸血鬼ALL
【???/夜王の御前】
《コオォォォォォォォォォォ…》
果てしなく広がる巨大な空間でありながら、コンクリートで出来た窓一つ無い、青白い蛍光灯の光が点在し、広間の半分以上に及ぶ漆黒の大穴があり、空間
覗こうとすれば魂さえ引きずり込まれてしまいそうな感覚に襲われる大穴、その底に吸血鬼達の主であり、有史以来生命のある全てのモノを脅かして来た生ける災い、七体いる公爵が一人であり『奈落の夜王』と呼ばれる存在が蠢いている
大穴の底は深闇しか見えないものの、幼子ですら明確に感じられる、本能的に身震いしたくなるような悪意と全身の細胞一つ一つを突き刺すような殺意がある事からそこに『見てはならないモノ』が鎮座している事がわかる
そんな夜王の御前にて、吸血鬼達の体に流れる公爵の血を介して一部の吸血鬼達へ召集命令が下されている……
__カツ、
仄暗く温度を感じさせない、閉鎖的なその空間。無数の蝙蝠と共に、突如姿を現した彼女はパンプスの音を響かせる。青白い光に照らされ、ただでさえ白い肌はより不健康そうに、そして幾分か機嫌が悪そうに見えた。召集命令により、心安らぐ場所での憩いのひと時に水を差されたのだから仕方ない。ただ、先の召集命令を受け嫌悪感を覚えながらも、この足は忠実に、そして迅速にこの地へ向かっていた。
「…………」
徐々に集まる他の吸血鬼の気配を感じながら、やや離れた位置でその大穴をただ静かに見つめる。他の吸血鬼と交流しようなんて気は無いし、夜王の御前、下手に言葉を漏らせば機嫌を損ねて命を取られる可能性もある。まあ黙っていたとしても、この場に対して自分が嫌悪感を抱いていることは、既に伝わっているだろうが。
おぞましい空気が身を包んでもなお、その涼し気な面持ちは崩されず凛としている。目前の大穴、その底に鎮座する『奈落の夜王』の次の指示を待ち。