四月一日くんが正太くんとキスしたがる短編書きたかったのに突然2年生が争い始めた 何故? 私じゃ書けない…誰か…
>>83に捧げたかった(謝罪)
「正太君」
そう呼ぶと、なに? と正太君は振り返った。少しだけ首を傾げて。
「いや、なんでも? 呼んでみただけだよぉ?」
喉の奥に本心はつかえて、よく回る口が勝手に嘘を紡ぐ。なんだ、と言って笑う正太君は、僕の嘘を露ほども疑っていないらしい。
嘘で世の中なんてなんとかなると思っていた。けれど現実は違うのだと、正太君に教えられた。ひとに知ってほしい気持ちが、伝えたい本心が、僕にもあるのだと知った。
……キスしたい、だなんて、嘘吐きの僕がどうして言えようか。
「四月一日君?」
その声に、はっと我に返る。こちらを見つめる濁りのない双眸が、いつも以上に近くにあって思わず飛び退いてしまった。
「わ、ごめん」
「いきなりどうしたんだい、正太君?」
速くなる鼓動を抑えて、目を細めて笑ってみせる。
「いや、だって、さっきの」
俯きがちに発せられた、歯切れの悪い言葉。さっき……僕は呼んでみただけだと言った。それの何がおかしいのか、分からない。
けれど正太君は、意を決したように顔をあげて。
……次の瞬間、温かくて柔らかい『なにか』が唇に触れた。
「……!?」
正太君の逸らした顔は耳まで赤くなっている。きっと僕もそうなのだろう。口が、回らない。
しばらくの沈黙。それを破って問うた。
「正太君、どうしたんだい?」
わずかに声が震えている。きっと気づかれないとは思いつつも、うまく嘘が吐けないことが恥ずかしい。
「……四月一日君が言ったんじゃないか」
「え?」
頓狂な声が出た。僕が何を言った?
「だから、その、キス……したい、って」
やっと冷えてきた頬が、ボッと音が立ちそうなほどの熱をもつ。まさか……声に出ていた? そんなわけがないと思いたいが、そういうことだろう。
「っ……馬鹿」
「嘘吐き。それに僕は嬉しかったよ」
さっきまでの赤面はどこへやら、微笑んで言う正太君。確かに悪くない……なんて、思ってしまったのも、きっと嘘だ。