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葉っぱ天国 > 変人・中二病 > スレ一覧
333:◆.s:2022/03/21(月) 01:33

>>332



 女神の微笑みに全てを賭けた男。

元は野球選手、豪速のストレートで唸らせた"右腕のジョー"
父親は日系、母親はアメリカン 当時留学生だった母親は
薬物でトリップを起こした浮日系人浮浪者による暴行に遭い
その結果として城野を身籠る事となった。更にこの事態から
悪評を恐れた留学先の学校側により大部分が隠匿され
母親には中絶を薦められたが、命を無駄にしたくないと
強い抵抗のもと、秘密裏に出産が行われる事となった。

以上から父親と呼べるような人物はまともには存在せず
ごたごたの末アメリカに帰れなくなった母親の手ひとつで
貧しくも、愛情を受けて育てられた。だが、母親の言葉は
母国の英語であり、母子共々現地の人々と交流が出来ず
孤立すると同時に差別を受けた母親は心労で死んでしまい
当時6歳だった城野は少年院へ送られた。

以上の経歴から、荒んだ性格で少年院でもはみ出し者で
元から絶望的な将来が危ぶまれていたが、そこで出会った
"女神"とも呼べる女の子との出会いが彼を変える事となる


◆.s:2022/03/21(月) 01:57 [返信]


少年院から脱走した城野は商店街の裏路地に隠れ
鼠や鳩にも劣るような生活を送っていた 其処には他にも
城野と同じような、訳ありの子供が何人か居たが
彼らは城野に心を向けるような事はなく、また城野も
独りに慣れ、何の感情も向けることは無かった

ある日、その裏路地に独りの女の子が迷い混んだ
不安げに辺りを見回すその子に対し、誰しもが
敵視を向け、身を隠していたが 彼らと同じ行動を
取れず、また取りたくなかった城野が其処に残り
恐ろしい風貌の城野に対して、女の子は怖がりつつも
出口への道を訪ねてきた。…この国の言葉に不自由だった
城野だったが、長く言葉に触れるうちに片言ながら
喋る事が出来るようになってはいたが …他ほどではなくとも
少女に対し、良い感情は抱けなかった城野は無視を決め込む
だが、唯一残っていた城野に対し 少女は諦めず、しかし
丁寧に、何度も 身振り手振りも交えて頼み込んだ。

女の子に何の非もないと認めていたのもあり、遂には
城野も折れ、片言混じりながら裏路地の出口へと
女の子を案内し始める …その道中では"会話"があった
当然、会話どころか挨拶にも疎い城野からではなく
何気なく女の子が振ってきたのだが、生まれて初めて
普通に言葉を交わし、言葉を優しく訂正し、話も
自分の体験談、夢、憧れ… 城野が体験し得ない
煌めくような話には 彼自身に何度も衝撃と、羨みと
沈んでいた感情が浮かび上がる感覚に、奇妙な心地好さ
…女の子への、"感謝"を覚え "心"は成長する

__彼女と別れる頃には、城野の心に複雑な感情が
  結びあってはほどけ 結果としては言葉に表せない
  だが、強く感謝と羨望が渦を巻いている

別れ際に、女の子は城野について尋ねてきた
__名前は 生まれは  "夢"は

名前もおぼつかず、生まれも ましてや、夢も
…答えに詰まる城野は分からないと返したが
それだけでも、女の子は道案内の恩も兼ねて

 「 ありがとう … 」

そう …言い残してその場を後にした 途中で、
何度も城野を振り返るその背中を城野は呼び戻したかったが
今の、自分の… 夢すらも言えぬ自分に対する失望を
…環境に対して当たり散らす事しか出来なかった自分に対し
真っ当な失望を覚え、…固く 此処から出ることを誓わせる


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