>>19
見返した薄っぺらな資料を机に放り
ずっと世話になってる椅子へ今度は背を預ける
……傾く視線、見えるのは小さな金庫の錆びた扉__
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僕が物心付いた時から 親父は良い親父とは思えなかった
誰の生き方にも踏み込んで口出ししては煙たがれ
仕事帰りにはひとりで酒もよく飲んでいた
それに 夜な夜な死んだ母さんを泣きながら呼ぶのだから
僕は眠れない夜を何度も過ごした事もあった。
けど 良い親ではなくても酷い親でもなかった
飯は食わせてくれる 学費も払ってくれる 家事だって…
でも 僕の事に良いことも悪いことも口出しをしなかった
朝の挨拶だって欠けてもお互いに何も言えないほどだ
そんなだから 僕は親父を誰とも思えなかった
同じ家に住んでいても 血の繋がりを感じたことさえも…
僕が高校に通って暫く経ったある日 親父は重い病気に掛かった。
医者は 末期のガンだと言う 親父は病院に通わなかった
親父は自分で立ち上がれなくなり 僕はバイトをする事にした
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高校を中退してから数ヶ月 もう 録に親父は起きていない
何故か 僕は恨んでいるかもしれない親父を憎めなかった
血の繋がっていて 悪いこともされていない
それだけで 親父を憎めるもんかと 僕は1人決め付ける
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高校を卒業したみんなが 思い思いの道を進むなか…
親父は 死んだ。 ……朝の よく晴れた日の事だった