[ 赤の魔物達 ]
昔、魔人から送られた昔話 ....其れは本当に本物なのだろうか?
_______これは正しく綴るべき“赤の魔物達”の歴史だ。
ある所に“種族不明 年齢不明 性別不明” ...そんな謎の一人の魔王が居ました。その王は悪のカリスマ、悪の正義、悪の救世主と魔族に讃えられて憧れでした。しかし..... その魔王 赤子を殺したりする事など出来ない 精神はまだ魔王の器と呼ばれる者では有りませんでした。
それでもその優しさは“本物” 困り事があれば助けて 決して無益な殺生はせず その優しさは ....所謂“強者の余裕”と誤解を招き それが魔族に伝わり 推薦されて ...結果今の立場になりました。
クリムゾン
その王渾名は【 深紅の者 】
本名は「アリス・テレス」という者でありました。
そんな魔王は困っていました。人手が足りません。部下達はとても優秀なのですが 仲間割れを起こしたり 正義の者達の襲撃により数を減らすばかり ....それでも部下の力だけで彼等を蹴散らす事が出来ていて、魔王自体が手を出す事は無く その実力が露呈する事は有りませんでしたが....。
しかしこのままではいけないと悩んでいた矢先 とある噂が舞い込みました それは....巷で問題を起こしている魔物達です。
ある魔物は盗みや悪戯 機械の解体を起こす 【 赤手 】
ある魔物は人々を無理矢理笑わせたり泣かせたり 何人かは植物人間にする 【 赤面 】
ある魔物は子供達に手術という名の治癒をしたり、夜中に霊を引き連れて子供を追いかけ回す 【 赤霊 】
ある魔物は森や家を燃やし 囚われている動物を解放した 【 赤猫 】
ある魔物は街を氷で覆い尽くし 解除させる代わりに莫大な量の酒を貰った 【 赤鬼 】
そんな魔物達に困っていた所 魔王は彼らを ....仲間にしました。部下ではなく、対等な存在として迎え入れました。
欲しい物があるならば挙げて、不満が溜まっているのならば解消させて、決闘を望むなら此方から手出しはしない代わりに相手をしてあげ ....楽しませ、満足させる事が出来ました。
魔王は気付きました。彼等は一つを除き五感が弱いと。だから彼は ....しっかり生活出来る様に戻しました。
_____それが彼の立場を更に苦しめるなんて その時は全く思わず、ただの善意で。
[ 赤の魔物達 その2 ]
魔物達は次第に“魔物の姿から人の姿”へとなっていきました。そして精神は魔物に似つかわしくない 小さな光を持ち ....“魔王五位” と呼ばれた事もあったそうな...。
赤手は百足の様に手が無数に生えた魔物でしたが (魔物の姿については諸説有り)次第に“魔人” と呼ばれる様になり 物を持ち運びしたり 書物を纏めたり と魔王に一番近い側近でした。後の「ザレッド・イニール」である。
赤面は黒い球体に濁った色の面が多数張り付いた魔物でしたが ある仮面にその身体を取り憑かせ “付喪神”と言う存在になり 人々を喜ばせたり 何か不祥事が起きてないかと街中の監視などをしていました。後の「面皮赤仮」である。
赤霊は耳が蝙蝠の様に大きく長身で全身が白肌と恐怖の魔物で幽霊でしたが その存在が認められてからは逆に 子供達が夜更かししない様にと 少々行為が認められたり 真面目に魔人や魔王の手伝いをしたり 魔族の治療をしました。後の「ブレシュール・ルージュ」である。
赤猫は火炎が身を包みその炎の形相から百獣の王と勘違いされる程気高く そして強い魔物でしたが 実際は心が温まり癒される程可愛らしく 飯を上げれば一緒に遊んでくれる 優しい魔物であり また番犬としての役割も果たしました。後の「メラー・レギオン」である。
赤鬼は刺々しい氷の羽衣を纏い その氷は透明では無く血で濡れており とても怖いと噂されていましたが 実際には酒と強い奴が好きな鬼で 弱いもの虐めはせず 基本誰にでも均等に接しました。次第に血の氷も溶け 現在は幼い姿で 青の色にも通じる様になり 魔物達から頼られる存在になりました。後の「ヴェルメリオ」である。
そんなある日、一匹の魔物が言いました。
「 魔王って本当は何もしていない 俺達の上でただふんぞり返る “ 最低の偽物 ” なんじゃないか? 」
その噂は次々に広がり 魔王の側近にも嫌な噂は聞こえました。 そして魔人はこれに激怒し その噂を広めた張本人で有る魔物を 半殺しにしました。
しかし此れが魔王の耳に入ると、全ての魔物 そして敵対している人間達にも とある集会を開きました。
自分の弱さと言うモノを、嘘偽りなく ハッキリと伝えました そして最後に一言
「 人間達よ、我々と共存する道を歩まないか? さすれば未来は明るく そして平和な世へとなる 」
そのスピーチに 大ブーイングが巻き起こり ....その偽善者の様な発言に 魔王の思惑通り 人間と魔物は手を組みました。
_____________無能な魔王と 哀れな側近達の殺害を目的に。