>>21 華
ゆっくりと、だが着実に、霞のネットの形成は止まらない。
あと10秒もあれば完全に覆い尽くされるだろう。
「これでチェックメイトです、さぁ貴女はどんな奇跡でこの状況を切り抜けますか?」
姿を隠したままの灯莉は華に問い掛けるように、まるでこれから起こる奇跡を期待するかのように優しげな口調で呟いて。
(大量の粉を袋から出して、舞い上がらせる。まるで霧のように。
慌てたらタイムロスで、それこそ一瞬でやられる)
「……多分、これで……うまくいく」
(タバコを学校に持ってきていた生徒から没収したライターで、未だ漂ったままの粉に火をつけて
爆発した。
自分自身も吹っ飛ばされるが――それよりも風圧が速い。
霞は風に押されて後退していく。
大量の擦り傷を負いながら、それでも立ち上がって)
「……どこかな……まだあっちは霞が濃いから……」
(……霞を吹き飛ばしたとはいえ、多少時間を稼いだ程度)