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レントゲンの言葉に、パイチェが微かに反応した。粒子のブレが残像となってその場に残る。前面から斬り掛かる個体に潜んだ、今にもこぼれ落ちそうな激情の一滴すらも汲み取らず、空間ごと別次元だと主張せんとばかりに笑う。反応したのはたった一言だけ。その一言へのアンサーを、淡々と紡ぐ。
『君は優しいね。でも、片腕なら切り落としてもかまわない』
レントゲンの半ば賭けのような思いとは裏腹に、女には恐怖心などというものが、いいや、感情らしきものが備わっていなかった。けれど、薄く一筋覗かせたものは、
『その片腕は僕に寄贈してもらえると嬉しい』
執着、恍惚、興奮。その全てが、かつて抱いた愛の成れの果て。