やっほ〜♪
やった!宿題なしだ!!
真っ白な過去は知っている 《観客side》
街が静かな闇におおわれるころ、2人の少年の間
で話し合いが行われていたことは、ご存じだろうか。
「なぁ、ほんとに来るのか?」
「うん、当たり前でしょ?
ずっと、会えるのを楽しみにしてたんだから。」
漆黒の髪の少年の言葉に、窓の外を眺めていた
チョコレート色の髪はくるっと振り返ると、
にっこりと可愛らしい笑みを浮かべた。
「おまえのこと、覚えてないんだぞ?」
「わかってるよ、そんなこと。
何回も聞いて、聞き飽きちゃった。」
「あいつは、すべての記憶を失っている。
俺らのことはもちろん、家のこと、自分の地位の
ことも____…………」
「わかってる!ちゃんとわかってるから!」
先程まで可愛らしく微笑んでいた少年は、急に、
それ以上は聞きたくない!
とでもいうように、耳を塞いでしゃがみこんだ。
そこまできてやっと、漆黒の髪の少年は口を閉じた。
「ごめん…………、言い過ぎた。」
そのとき、2人の顔には、“苦痛”が浮かんでいた。
しばらくして落ち着くと、しゃがみこんでいた
少年はすっと立ち上がり、さっきとは比べ物に
ならない、はっと驚くほど大人っぽい表情を
浮かべて、自らの意思を口にした。
「2年かけて目覚めたと思ったら、大事な
幼なじみがいなくなってたんだよ?しかも、記憶
までも失っている。それはすべて、僕のせい。
誰が何を言おうと、ね?」
そこで1度切って溢れそうになる感情を抑え、
静かな口調で続ける。
「だからこそ、僕は彩を守りたい。
近くにいて、今度こそは何があっても傷付ける
ことなく守れるように。
僕のことは忘れててもいい。
ただの塾のメンバーってだけの関係でもいい。
あいつを守れたら、僕は、それでいいんだよ。」
「そっ……か…………。」
再び、彼等の間に沈黙が訪れた。
トントン、と扉を叩く音がした。
「どうぞ。」
漆黒の髪の少年が返事をすると、扉がゆっくりと
開いた。
扉から、40代らしき男性が現れ、慣れた仕草で
お辞儀をした。
「未來様、お迎えに伺いました。」
男性の言葉で、緊張に包まれていた空気がふっと
緩んだ。
さぁ、少年たちよ
少女の失われし記憶の本は
取り戻すことができるかな_____?
初回 前回>>22
真っ白な過去は知っている 小塚side
「これからおまえらのメンバーになる、
神宮 未來だ。今日は自習。ってことで、
自己紹介は自分たちでよろしく!」
言いたいことだけ言って、先生は出ていく。
けど、さ、先生は、この状況に気付いてる?
ノートに物凄いスピードで何かを
書き込んでいる上杉に、机をどかして
ボールを蹴っている若武でしょ。
美門は居眠り中のアーヤの
ほっぺたをつんつんつついてて…………。
しかも、ここに黒木はいない。
黒木ぃ、早く来てっ!!
「あ、あの…………____」
「あ、おまえ新入りか?自己紹介しろ!」
若武…………やっと気付いたの?それとさ、
今、神宮くんがなにか言おうとしたじゃんか。
ちゃんと聞こうよぉ。
「はーい、もちろんするよ?
それと、君、おもしろいね。
っと、話ズレちゃったね。ごめん。
僕は神宮 未來。さっきの先生は
“みらい”って言ってたけど、本当は“みら”
だから、そこんとこ、間違えないでね?」
神宮 未來…………?
なんか聞いたことあるような気がする。
「あ、君たちのことは知ってるから、
紹介しなくても大丈夫だよ。」
その言葉でようやく上杉と美門は顔をあげた。
残るはアーヤ。だけど、ぐっすり夢の中。
そこへ、
「よっ!
って、ミラ、もう来てたんだ。」
「あ、貴和、久しぶり!」
「あぁ、昨日会ったんだけどな。」
パッと顔を明るくする神宮くんと、
苦笑いをする黒木。
2人は…………、知り合い?
仲良さそうだけど。
そういえば、神宮くんがさっき言ってた
『君たちのことは知ってるから』
って、どういう意味なんだろう…………?