11.意外な繋がり
「ののちゃんって、向かいの家なのにたくさん知ってるんだね。」
若武が桃山ののちゃんに声をかける。
桃山ののちゃんは、嬉しそうに笑って言った。
「真理子は、よく遊びに来たの。それから、秘密も打ち明けてくれて。幼馴染みの緑橋さんより知ってるのよ。」
へ〜。
佐田さんが、幼馴染みより信頼している子、ってことか。
「次、緑橋冬実ちゃん、いける?」
若武が緑橋冬実ちゃんに視線を配ると、戸惑いながら前に出た。
もしかしたら、前に出るの苦手かな。
「私は、真理子の幼馴染みだけど、真理子のことより、景子ちゃんのことを話します。」
緑橋冬実ちゃんは、佐田さんの幼馴染みでしょ?
なのに、景子さんのことを話すの?
これ、きっと、何かあるっ!
喧嘩でもしたか、あるいは…。
「水原景子ちゃんは、にじいろクローバーZのリーダー、水原沙也花。景子ちゃんと私の関係は、学校での親友。一応言っとくけど、私中3だからね。で、景子ちゃんからよく聞くの。」
ええ!
中3だったの!?
雰囲気が、同い年かと…。
「真理子の将来の夢は、可愛い妹と、ふたりで仲良くすることだったの。きっと、にじクロで景子ちゃんがいて、真奈子ちゃんと出会うから、交渉したんだと思う。景子ちゃんの家は、真理子みたいにお金持ちじゃないから、お嬢様じゃないの。だから、真理子と出掛けるときは、いろいろ指示を聞いてるらしいの。」
景子さんは景子さんで、大変。
きっと家庭環境も、いろいろあるんだよね。
この事件、多分だけど、危険がいっぱいな気がするっ!
ゾクゾクっ!
「真奈子ちゃんの家に行ったのも、景子ちゃん。真理子の指示でね。真奈子ちゃんのお母さんに、叩かれたところも何ヵ所かあるのよ。」
ママっ!
何してんのよっ!
怒って叱って…もう!
「景子は、お父さんが刑務所にいるから、ずっとからかわれてるの。どうして刑務所にいるかと言うと。」
そこで止まって、一気に言う。
「3年前の、高畑グループ殺害事件の犯人だからよ。」
殺害事件の犯人っ?
>>30の続き
12.驚きの理由
「高畑衣織、当時13歳。にじクロの元リーダー、高畑美織が殺されたの。にじクロは6人グループだったのに。水原信吾は、高畑衣織を殺した。娘の景子は、からかわれている。と。」
やっぱり、景子さんも大変なんだね。
でも、どうして水原信吾は、高畑衣織を殺したんだろう。
「これくらいしか言えないわ。」
う〜ん。
かなり分かるようになってきたけど、これ、本当に大きくなってるよ。
奈子を文房具屋で見付けたことから、こんなに大きくなるなんて…。
「今日は、もう解散にするか。百合奈ちゃん、ののちゃん、冬実ちゃん、来てくれてありがとう。解散っ!」
* * *
ドアを開けると、いつもの席にみんなが座っていた。
私もそこに座る。
若武は自分の指を絡め、身を乗り出して言った。
「諸君、昨日は集まってくれてありがとう。特別に、上杉と黒木が、自らの調査を試みた。手を拝借。」
みんなが手を叩く。
若武は気分良さそうに笑い、続けた。
「上杉、黒木の順に報告を頼む。」
上杉君に報告のバトンが来て、上杉君が前のめりになる。
すると、みんなも前のめりになる。
「俺は、高畑衣織殺害事件のことを調べた。水原信吾が殺したのは間違いない。だが、驚くことが分かった。」
何それ、ゾクゾクっ!
「水原信吾が殺した理由は、娘の景子のためと言うことだ。高畑衣織は、秀才だった。水原景子と同じ中学校で、水原景子は毎回総合順位が2位だったんだ。それに怒った母親は、水原景子を虐待する。それに怒った水原信吾は、高畑衣織を殺害した。ということだそうだ。以上。」
へえ。
なんか、上杉君っぽい。
っていうか、どうやって一晩で調べたのっ?