15.殺す?
「真理子って?」
問いただすと、ママはもっと暗い顔になって言った。
「佐田真理子ちゃん。奈子は、佐田真奈子になるの。明後日からね。」
今日と明日は立花奈子。
明後日からは佐田真理子の妹、佐田真奈子。
うーん、微妙なとこ、あるよね。
「水原景子ちゃんが来て、奈子をあげなくちゃいけなかったのよ。奈子をあげないと、立花彩、アーヤを殺すって言われたから。奈子が生きてて、奈子は幸せで、アーヤもしっかり生きてるなら、それがいいでしょ?奈子が、家の子じゃなくなる変わりに、アーヤは生きれるってわけ。」
何そのストーリー。
私を殺すって、水原景子が?
水原信吾と同じ目に合うってわけ?
意味分からんっ!
ここは、若武に電話しよう。
事件ノートを見て、若武の電話番号を打ち込む。
「はい、俺。」
あ、すぐ出た。
遅いと思ってたものだから、内心焦ってしまった。
何から話し出すか、決めてなかったんだもの。
でも、私から電話を掛けたんだから、きちんと話すことにした。
「報告。ママに聞いてみたら、奈子を渡さないと私を殺すって脅したって。だから、ママは奈子を渡したんだって言ってたよ。叩いたのは、怒れてしまったって。パンチって言ってたから、肩のパンチはママかも知れない。だけど、そこまでやらないから。絶対に。これは、信じて!」
うん、ママは、そんなにやらない。
パンチしてしまったとしても、そこまでやらないはず。
うん。
>>42の続き
16.水原景子がいる!
「あれ、水原景子じゃない?にじクロの、水原沙也花だよ!」
小塚君が小さな声で言う。
みんなが小塚君の視線の先、秀明生が入ってきたカフェテリアのドアに視線を流す。
すると、カフェテリアのドアの向こう、つまり、廊下を水原沙也花ーーー水原景子が歩いていた。
「俺、水原景子を追跡する。お前らは帰れ。補助で、黒木。来い。上杉は、アーヤを送れ。以上。黒木、行くぞ。じゃあな。」
…。
えっ!?
水原景子を追うの!?
どうしよう。
行きたいけど、行きたくない。
だって、怒られたくないし、明日は学校でテストがあるんだもの。
学力が低下するのは、早く寝ないからっていうのと、勉強不足。
部屋には問題集が散らかってたけど、もう全部埋めたもの。
あとは早く寝るだけ。
だけど…。
「面白くなってきたな。若武と黒木を追うぞ。」
翼が鼻で笑って言い、みんなの目が活気づいた瞳になった。
みんなキラキラしてて、素敵。
きっと、私も。
「アーヤ、早くいくよ。水原景子を追おうよ。あ、難しい?」
小塚君が心配してくれたけど、大丈夫だよね。
口実は、勉強を余分に塾でやったからって言う。
心には、社会のためって言おう。
そしたら、東大が目前かもっ!
東大のため、社会のため、みんなのために、頑張るぞっ!