少し人通りの少ない道に佇む、煤けた二軒の屋敷。
ひとつは小さな城のような西洋の屋敷、もうひとつは立派な木造日本家屋。
その二つの屋敷には、どうやらあやかしの類が出るとの噂があって ――
( 包まっていた生暖かい布団からもぞもぞと出て来、踏むと一々ぎぃと音の鳴る床を歩くのは御河童の少女。どうやらいつもは耳にしない声の音が気になるようで。夜は屋敷の誰かが起きていることなんてよくあるけれど、あの声は聞いたことがなく不審。物音の聞こえた部屋に、なるべく音を立てずにそろり、抜き足差し足忍び足で近づく。やや痛んで所々破れている襖を人差し指が入るくらいにそっと開け、片目を覗かせて中の様子を伺い。――誰も、いない。なーんだ、とよく分からない安心感を抱いて肩を下ろし、ふわりと振り返って布団に戻ろうとした、そのとき。振り向いたそこには、月明かりの逆光で、人と思われるシルエットが浮かび上がっており。ぼさぼさの髪。見覚えの無い。と、光の関係でその人物の瞳がきらりと光って。その様子にひっと小さな悲鳴を上げて後ずさり、ぺたりと尻餅をついてしまい、声と黒髪を震わせながら言葉を発して )
だ、だ ―― れ… ?
>>31 / エマ
そりゃあね、かっちゃんは泡だもん! 使ったらすぐ消えちゃうんだけど、
( 相手の言葉に思わずええー、と苦笑零し。 驚いた様子の彼ににししと得意気に笑み浮かべ、
( 包まっていた生暖かい布団からもぞもぞと出て来、踏むと一々ぎぃと音の鳴る床を歩くのは御河童の少女。どうやらいつもは耳にしない声の音が気になるようで。夜は屋敷の誰かが起きていることなんてよくあるけれど、あの声は聞いたことがなく不審。物音の聞こえた部屋に、なるべく音を立てずにそろり、抜き足差し足忍び足で近づく。やや痛んで所々破れている襖を人差し指が入るくらいにそっと開け、片目を覗かせて中の様子を伺い。――誰も、いない。なーんだ、とよく分からない安心感を抱いて肩を下ろし、ふわりと振り返って布団に戻ろうとした、そのとき。振り向いたそこには、月明かりの逆光で、人と思われるシルエットが浮かび上がっており。ぼさぼさの髪。見覚えの無い。と、光の関係でその人物の瞳がきらりと光って。その様子にひっと小さな悲鳴を上げて後ずさり、ぺたりと尻餅をついてしまい、声と黒髪を震わせながら言葉を発して )
だ、だ ―― ぁ れ… ?
>>31 / エマ
そりゃあね、かっちゃんは泡だもん! ―― 使ったらすぐ消えちゃうんだけど、そのうちうたの着てる これ から増えてくるから かっちゃんで壁綺麗にしよーよ!!
( 相手の言葉に思わずええー、と苦笑零し。 驚いた様子の彼ににししと得意気に笑み浮かべた後、だんだんと儚く消えていく壁の泡を愛おしそうに見詰め。科白に合わせて白い服の裾ちょこんと摘むと、意気込み熱く語りやる気満々の瞳で相手ににかり、 )
>>32 / ドラハ