契約条例
(782年8月4日制定※)
此れは、契約時その主と精に課されるものであり、万物の均衡を保つための条例である。この
条例に従い力を民へ使うことを誓い、恐怖や欠乏の排除や、平和のために、また崇高なる未来の
実現に向けることを此処に誓う。
※1543年一部改正
※1985年一部改正
第一章 依頼
第一条 命の危機以外に、依頼より自分の事を優先させてはならない。
One Story,wish
「残り1分3秒だよー」
少し生意気な響きの少年の声、ヒカリのものが響く。
が、言われている少女、ソラのほうはもうその声への反応も出来ないようだ。
「・・・ハア・・・もっ、絶対っ・・・間に合わっ、ないって・・・ハア、ハア」
寮からすぐの急な坂道の途中、まだまだ坂の果てには及ばない。
いくら体力のあるソラでも、朝食抜きのダッシュは辛い。もう足はフラフラだ。
「まったくー。寝坊なんてするのが悪いんだよ。
あーあ、1学期の成績昨日付けるからもう遅刻するなって勧告されてたのに」
うるさい、と途切れ途切れに言ったソラ。
そんな二人の会話を終わらせるように無情にもチャイムの音が響きだした。
「あーあ」
それとともに、ソラの足もスピードを落としていき、最終的にはトロトロと亀のように歩く。
いや、まだ亀のほうが早いのかもしれない。
「ソーラー、せめて走ろうよ。5分くらい先生も目、瞑ってくれるって」
ヒカリの必死な提案にも答えずノロノロ歩く。そこで漸く終わった坂道。
すこしはペースを上げ、8時35分過ぎに職員室到達。しっかり注意を受け、教室へと向かった。
「馬鹿だなー、ソラは。」
「馬鹿じゃないし。」
「阿呆だなー、ソラは。」
「阿呆じゃないし。」
「・・・ドジだなー、ソ」
「少し黙ってろ、ドジヒカリが」
そう言いつつ着いた教室。が、いつもと違う盛り上がりがあった。
第一に廊下にまで他クラスの姿が多くある。第二に中から歓声や叫び声、多くの声が飛び交っていた。
これだけで通常の人なら何事かと思うはずだ。
その答えは、教室に一歩足を踏み入れた瞬間に分かった。