真っ暗な部屋に、文字列が並んだ四角い光が浮かぶ。
青と赤の配線が絡む。それは長い長い導火線。
カタカタと叩きつけるような音が部屋に響く。
「ふぅー、今日もネット界は平和だなー」
enterキーを勢いよく押し、一息ついたところだった。
「ちょっとおお!また学校来てないわけ!?」
勢いよくドアが開いたと思うと、いきなり怒鳴り声が飛んできた。
「げっ、都亜!?何しに来たんだよ!?学校は!?」
ドアの前には仁王立ちして怒りの表情を見せる少女が一人。
時計の短針はまだ12を指している。まだ学校のはずだ。
「今日はテストだから午前中で終わり!皆心配してるわよ。特に女子が」
都亜はなぜか、最後の方を強調して言った。
「もう一年も登校してない不登校児ってさぁ、存在忘れられるだろ、普通」
俺はとっとと忘れてくれと言わんばかりにため息をついた。
「イケメンで成績よければ、女子が放っておく訳無いでしょう?」
「めんどくせー!何がイケメンだよ、どーでもいいー」
俺は嘆きながら配線を整え、USBメモリを差し込んだ。
「今日も事件解決したわけ?」
「あぁ。炎上52件、乗っ取り12件、ハッキングの依頼13件な。少ない方だ」
「私が学校行っている間にそんなに!?本当、こーゆーのは天才的ね」
フロッピーディスクを取り出した手を俺は止めた。
本当、別に役に立たないことに関しては天才的だな、俺。
「……なんで引きこもってんの?」
「引きこもってねーよ、普通に外出歩くぜ」
キーボードを片手で操作しながらタブレットも片手で操作した。
「もう、学校行きなって。皆心配してるし」
「余計なお世話。心配しないでくれって言っといて」
俺は二度目のため息をつきながらパソコンを閉じた。