ーみんなが連れて行かれる少し前ー
「起きなさい、すみれ。」
「んあ〜……?もぅあさ?」
「もう7時よ、朝ごはんできてるから、早く下に降りてきなさいよ……」
「へーい」
いつも通りの朝、いつも通りの生活。今まで普通に暮らしてきた。今の今まで。もう私達は普通の暮らしをすることができなくなることをこの時の私は知る由もなかった……。
「こッ困りますッ‼︎って言うか、私達は異質妖精族ではありません!」
突然聞こえてきたのは母の声だった……そしてその直後に私は今なにが起こっているのかをほぼ知ることになった。
『異質妖精族の隔離を命令したのだ、ネイビスト王自らがな。』
ネイビスト王。死の王とも呼ばれる恐ろしい王だ。今まで色々な国を転々と回っていろんな国の王を務めてきたらしいが、一度としてその王国が死の国にならなかったことは無いそうだ。この国も滅びるに違い無い、そう思ったのは今だった……。もう手遅れだったんだ。
「きゃぁッ‼︎や、やめって……すみれぇっ‼︎逃げて……いやアァァァああ‼︎」
パァぁぁぁ……ン……
鈍い銃声のようなものが家の中に響きわたる。
「お母さんッ‼︎⁉︎」
『上に誰かいるのか?』
「ひっ……」
誰かまではよくわからなかったが、母との話を聞く限り国王につかえる兵といったところだ。ごめん、本当にごめんなさい私がもっと強ければ、お母さんは、お父さんたちは連れて行かれたりしなかったのに……。無力な私はお母さんの言う通りに地下通路を通って、走って走って走って走って走って逃げた……。
意味がわから無い、ナンで私たちがこんな目に合わ無いといけないの……?ネイビスト王はなにを考えているの?私たちは何にもしていないのに。
「……すみ、れ?」
「ッ⁉︎……こぉ、こぉへぇー……」
そして今に至った……。健都はいないし、親はみんな捕まったか、殺されたか……この国、ううん、この世界は狂ってる。