『きゃあああああぁぁぁっ!』
「⁉︎」「き、樹竜ぅ……⁉︎」
いきなり外から悲鳴が聞こえてきた。先ほどまで強気だった千菜もさすがに女の子だし、少し俺に近寄る。
「俺外見てくる。」
いつものやる気のない俺だとこんなことは言わないだろう。今の俺は好奇心で体が動いていた。
「ま、待ってよっ!置いていかないで……‼︎」
立ち上が俺の右手を千菜は掴んだ。
「あ、その……」
言葉には千菜が出せなかった言葉、だが、潤んだ千菜の瞳が俺に『一人にしないで。』と訴えてくる。
「仕方ねぇな、付いて来いよ。」
「ん……ありがと。」
俺たちは外へ出た。何があったのかは全くと言っていいほど把握できなかった。外は真っ赤だった……千年樹が燃えていたのだ。真っ赤に紅蓮の炎が樹を包み込んでゆく。千菜も俺と同じで把握できなかったらしい、だが一つだけ確実に分かること…俺たちみたいな子供でバカみたいなやつでも理解できる。
『早く火を消さないと。』隣の家のおばさんは水魔法を使い炎を消そうとしていた。だが一向に火は消えない…。俺は感じた。この炎は消せないと。
「千…年樹が……。」
なんて言って力が抜けるようにしてその場にしゃがみこむ千菜は震えていた。
「千菜!おい、大丈夫か?」
俺はできるだけ優しく出来るだけ安心できるような声のトーンで話しかける。千菜は涙を流しながら顔を上げてこう言ったんだ。
「樹竜ぅ……私…私…樹が燃えてるのに……何にもできないよっ…!」
千菜は水、風、炎、電気の魔法が使えない。魔法が限られているから。千菜の魔法は光。光魔法は使える人は少なく、使える人は重宝されてきた。だが、光魔法を使うものは闇魔法使いと直結している。光魔法使いが闇魔法使いに負けると光が抜け、闇を糧に動く闇人形になる。ある意味危険な存在ともされてきた。そんな中の一人が千菜。だが特定の魔法が使えないというデメリットもある。
「千菜……泣くなよ。俺……千年樹登ってくる。」
「何言ってるの!あんな炎の中どうやって……」
俺には大した才能も知識もない、もちろん信じられるものも。そんな俺に一つだけ浮かんだ俺なりの名案だ。
「千菜、お前の魔力貸せ。炎のまだきていないあそこまでお前と俺の魔力使って行くんだよ。俺なら風魔法使えるだろ?」
「俺才能も知識もないけど、信じられるものもないと思ってたけどな、今…千菜、お前なら信じてもいいと思った。」
千菜はおれの手を握り、
「私……頑張る!」
と笑顔で言った。