「じゃあお母さん、入学式先に行ってるね」
新品の制服に身を包み、麻希は外に出た。
心地よい風に、二つに結んだ髪が揺れる。
「えっと……、電車これでいいんだよね?」
何度もメモ帳を確認し、恐る恐る電車に乗った。
麻希は田舎の方に住んでいるため、あまり交通機関を利用する事がないのだ。
「ふぅ」
ため息をつき、座席に座る。そして、ハンカチを手に取ってみる。
”レイ
と刺繍されたハンカチ。きっと持ち主の名前は”レイさんなのだろう。
……ここの学校入ろうと思ったのも、レイさんの影響なんだよな。
あの時のレイさんの服装は制服だった。
紺色のセーラー服に、チェックのミニスカート、目を引く胸元の大きなリボン。
当時九歳だった私は、当然、制服だけで学校が特定出来るわけがない。
しかし、努力して調べた。その結果、この優心女子学院だったのだ。
また、中貫一校だったため、会えるリスクも高いと思ったのだ。
「次は△△駅〜 △△駅〜」
学校付近の駅だ。荷物をまとめ、降りる準備をする。
「ヤバイ、遅れそう……」
扉が開いた瞬間、麻希は走って、学校へ向かった。スクールバッグに付けている、お気に入りのストラップを落とした事も気づかずに。