ミント味.  

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4:  ちあき  ◆iI:2016/04/01(金) 17:16 ID:Jaw




「 先輩、そこ強火じゃなくて弱火ですよ。 」

少し夕日が差し込む部屋の中、私は
まるで子供に言うように優しく注意してあげました。ですが、私の声は、オレンジ色の空に吸い込まれてしまったようです。

すっかり部活のことなんて忘れて、
愛用の黒い眼鏡を拭きまくる先輩。きっと火を使ってたから、眼鏡が曇ったのでしょう。
だからって無視するのは、と
私は少しカチンとしました。

しかも、私が座っている席から
いつも見えるその横顔が、今日も無駄に整ってて、
私はさらにカチンとします。
きっといつもよりかっこよく見えるのは、
優しい逆光のせいです。


・・・って。


「 先輩っ、ハチミツ入れてないじゃないですか・・ええぇぇ、待って、焦げてるよ、先輩!混ぜて!混ぜて!てか火弱めてよ!? 」


「 えっ、うわぁ!ごめんごめん、うっ、あっつ!! 」 


「 ちょ、なにして・・馬鹿なんですか!?もういい私が火止めます! 」


私は先輩の代わりに、
夕日と同じ色の火を止めました。

まったく、ハチミツは入れ忘れるし、 
鍋の中は完全に焦げそうです。
見た目だけでも分かるほど、
キャラメルは堅くなっていて、
鍋に近い側なんか、もう焦げ始めています。

先輩は慌てた勢いで、熱してる真っ最中の
鍋に触ってしまったらしく、
ほんのり赤く腫れた指を、水で一生懸命冷やしました。

この人はかなりの馬鹿だと思います。
1年と少し、先輩と過ごしてきて、
一体、彼は家庭科部において何を学んだのだろうと、
つくづく感じるのです。

 


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